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[理系による「アート」考察] 鑑賞者のために余白を残す日本画の進化

日本画は洋画のように画面いっぱいに描き込むのではなく、大胆に余白を設けることで有名です。下の風神雷神図屛風もかなり余白があります。

"余白"の理由は様々あると思いますが、その1つに、鑑賞者の想像で余白を埋めることで、より絵を楽しませる効果のためと考えています。つまり、鑑賞者の補間により鑑賞者独自の絵が完成するという、マス向けの絵を各個人向けに変換する高度な技術で、より絵を楽しませる目的です。

この余白を別の解釈で捉え、絵を作成する作家さんを見つけたので紹介しますね。その作家さんは、坂巻弓華さんです。

https://www.instagram.com/sakamakiyuka/?hl=ja

画風と構図はフリーダ・カーロの影響を強く受けられていると思われますが、ルオーのタッチに似た絵も描かれています。

特徴的なのは、無表情か少し憂鬱な表情の女性の頭の上に全く関係ない何か(猫・動物・食べ物、等)がのっていることです。

この絵を見た鑑賞者は、なんで頭の上に?、をまずは突っ込み、その後何か的を得たことを言いたくなります。つまり、この絵で大喜利をしたくなり、一本!が取れるフレーズを言いたくなります。また、そのフレーズで、周りをクスっとできたならば、非常にうれしくなる、そんな絵です。

で、余白の話に戻るのですが、坂巻弓華さんの絵は、描かない部分の"余白"ではなく、大喜利的なフレーズを言いたくなる言葉の"余白"が絵に設定されているのです。

この余白の効果は、上で述べた、鑑賞者の補間により鑑賞者独自の絵が完成するという、マス向けの絵を各個人向けに変換、と全く同じです。伺った展示会でも、絵の下にコメントがあり、それを込みで鑑賞する体をとっていました。

展示会にて

この辺の遊び心は日本人独自のモノかな、と思うのですが、描かれていない部分に絵を想像させるための余白、を、言語によるフレーズを想像させるための余白、に進化させた坂巻弓華さんに一本とられた~、で今回は終わろうと思います。




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