安生正 生存者ゼロ(宝島社文庫)を読んで

こんにちは!今回は安生正さんのデビュー作、生存者ゼロを読んでみたので、こちらで抽象的感覚派読書感想文を書いていきます。

こちらは安生さんがこのミス大賞を受賞してデビューした作品。感染症をテーマとして扱い、パニック小説としてかなり完成度の高い小説となっております。二人の主人公の葛藤などが分かりやすく伝わり、物語の進むテンポも良く、一気に引き込まれていつの間にか読み終わっていました。

物語は富樫という天才と称された感染症学者の家族の不本意の死や、陸上自衛官三等陸佐の廻田が北太平洋に浮かぶ石油掘削基地にて作業員全員の死によって始まります。石油掘削基地にて広がっていた光景は壊滅した戦場のように血だまりができ、悲惨な状況となってるのです。感染症によるものだと判断した政府は富樫と廻田に原因究明の任務を与えるも、家族の死や部下の死によって傷を負った二人は絶望の中にいながらも、それぞれの道で大量死に立ち向かっていきます。

北太平洋の石油掘削基地から北海道本土に感染症が上陸したり、感染症による大量死の全貌が明らかになるにつれて絶望感がどんどん増していき、エンターテインメント小説の理想形のように読者の興味を惹き付けて、ページをめくる手を止めさせない作りとなっております。500ページほどある作品なのですが読み進むにつれて面白くなっていき、あっという間に読み終えてしまったような気がします。

この作品は食べれば食べるほど癖になる肉厚で濃厚かつ、辛口な胡椒にまみれた大量のポテトチップスを食べているような気がしました。学術用語など難しい単語が出て来てとっつきにく印象を受けるのですが、いざ読み始めてしまうと辛さが後を引く役割も果たしていて結果として最高の旨味を堪能することができるのです。現実離れした発想がジャンキーな印象を強めており、最後の1ページまで面白く、読み終えた後も余韻に浸ることになるのです。

今回の抽象的感覚派読書感想文は以上になります!こういった医学用語など難しい知識を要する作品は中々自分では書けないタイプなので、未知の領域に触れることで余計に魅力的に感じてしまいました。いつかはこういったタイプのものも書けるようになりたいです、、頑張ります!

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僕の作品も追加で発表したものもありますので、ぜひ手に取ってみてください!タイトルは「きよ」です。平安時代の清姫伝説と現代をリンクさせて執着と運命を描いた作品となりますので、ぜひ!


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