◤人生◢「いいね」ボタンを押すことは、背中を押すこと。 【#58】

退職を伝えた時に訊かれることは、たいてい「次は“どこで”働くんですか?」。

「何をするか」ではなく「どこで」働くかを訊かれるのは、医療系独特?資格を持っているから?

いろいろな方に訊かれて、「他にやりたいことがあるので、もうOT(作業療法士)は、しないつもりです」と答えるのが面倒になってきた時期があった。

作業療法士として働いていたんだから、次も作業療法士でしょ

そんな風に決めつけられているようだった。
私はもっと自由になりたかった。

***

そんなやりとりの後は、「『やりたいこと』って何ですか?」とさらに訊いてくる方、「そうなんですね〜」と会話が終わっていく方、「勿体ない」と言う方、「頑張ってください」と応援してくれる方、と様々。

そのなかで、「やりたいことって?」と突っ込んで訊く人に対して適当に答えを濁す人と、「ライティングの仕事をしたいんです」と具体的に答える人を、わたしは明確な基準を設けて分けていた。
具体的に答える人は、

この人は否定したり心配しない

と、思えるかどうか。

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人は「知らない」「分からない」ということが怖い。
それは、動物が生まれながらにして備わっている本能である。
「知らない」ことや「分からない」ことに恐怖心を抱かなかったら、生命の危険がある。
だから、それらに恐怖心や疑問符を持つことは仕方ない。

でも「知らない」からと言って、人の夢を心配したり否定しないでほしい。

聞いたことがない職業に、「えぇ?!」とか「大丈夫なん?」とか「食べていけるんですか?」とか。
そんな“負”の反応を見せないでほしい。

それらは素直な反応なのかもしれないが、過敏になっている時期はその素直な反応さえも、夢を「否定」されているような気がした。

ただただ「賛成」してほしかった。
「いいじゃないですか!」「面白そう!」。
現実的な話は抜きにして、そんな“正”の反応がほしかった。

***

先ほど、基準を設けて分けていたと書いたが、この方は「どっち側」かの判断は一瞬だ。
それまでのやり取りや普段の雰囲気、患者様への態度など。
それらの総合的な評価を、瞬時に頭で計算した。

計算の結果「この人は大丈夫」と認定した方に具体的に答えると、やはり期待通りの反応を見せてくれた。
一人ひとりの反応は、わたしをご機嫌にし、次のステップを踏むために背中を押してくれた。

***

人生いつも前だけを見て進めたら良いけれど、時に立ち止まったり、後ろを振り返ったり、戻ったりすることがある。
自分だけではどうにもならない時、そんな時に必要なのは、誰かがポンっと背中を押してくれることかもしれない。

人の数だけ夢がある。目標がある。
それらに、純粋な気持ちで「いいね!」ボタンを押せる人になりたい。
その「いいね!」の数だけ人は前に進めると思うから。

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