見出し画像

歌集『世界で一番すばらしい俺』Kindle版が出ました!

歌集のKindle版が出ました。

工藤吉生歌集『世界で一番すばらしい俺』(短歌研究社)

よろしくお願いします!!


内容は紙の書籍とおなじです。紙の書籍も引き続き発売中!!



 20首抜粋です。



■■■


目を閉じて頭を下にして落ちた六十九キログラムの自分


傘を振り落ちないしずくと落ちるしずくどこが違っているのでしょうか


風景を見てるつもりの女生徒と風景であるオレの目が合う


何をしても落ちなさそうな黒ずみに両足で立ち〈1〉と〈閉〉押す


おそろしい形相をした歳月がうしろからくる 前からも来た


十七の春に自分の一生に嫌気がさして二十年経つ


問題に取り組むよりも問題を忘れることで生きのびてきた


ぼくは汽車、汽車なんだぞー! と駆けてきた子供がオレにぶつかって泣く


この当時オレが笑っていたなんて信じ難いが夏の一枚


電柱を登ってゆける足がかりとても届かぬ位置より生える


うしろまえ逆に着ていたTシャツがしばし生きづらかった原因


秋がくる 床屋の椅子に重大な秘密があって欲しいと思う


三人で歩いていれば前をゆく二人とうしろをゆくオレとなる


この人にひったくられればこの人を追うわけだよな 生活かけて


公園の禁止事項の九つにすべて納得して歩き出す


東京に行って頑張りたいなどと聞こえるベンチにまどろんでゆく


うっかりと入っていくと晩飯をふるまわれそうな灯りの家だ


オレ以外みんな真面目に生きていて取り残された気のする深夜


眠るため消した電気だ。悲しみを思い返して泣くためじゃない


膝蹴りを暗い野原で受けている世界で一番すばらしい俺



■■■




2018年短歌研究新人賞受賞の第一歌集。校舎から飛び降り、車にはねられながらも、ぬらっと生きながらえる。
第61回短歌研究新人賞受賞を受賞した工藤吉生の第一歌集。


「おかしないい方になるが、高度な無力感が表現されている。」──穂村弘

短歌研究新人賞 選考座談会より

「人間性が色濃く表れた作品です。黒ずみにちょっとかけてみましょうよ。」──加藤治郎

短歌研究新人賞 選考座談会より


ご注文はこちらから。


短歌研究社


Amazon(紙の書籍)


Kindle




著者について

1979年千葉県生まれ。宮城県黒川高等学校卒業。

2011年 枡野浩一編『ドラえもん短歌』(小学館)で短歌に興味を持ち、インターネットを中心に短歌を発表し始める。

短歌結社「塔」を経て、2015年より「未来」所属。

2017年「うしろまえ」(20 首)未来賞受賞。

2018年「校舎・飛び降り」(50 首)第8回中城ふみ子賞次席。5月17日、車にはねられる。この日に投函した「この人を追う」(30 首)が第61回短歌研究新人賞受賞。

宮城県在住。愛猫の名はアリス。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?