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工藤吉生の『未来』の短歌

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歌誌『未来』に掲載された短歌のまとめ。2016年1月号から。彗星集。 投げ銭方式なので、無料ですべて読めます。
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2016年7月の記事一覧

メン子ちゃんゼリー

啜り終え午後の五月のメン子ちゃん透ける容器の凹凸ころぶ

複雑な遊びらしくて遠ざかるオレにこどもの声のくどくど

本物の道草だった男の子ふたりが草をちぎり駆け出す

すごろくで一回休みになった子の不満をオレはもう感じない

歯の抜ける夢はよく見るけど今朝のやつは三位以内に入る

からだには傷がないけどこころにはあると笑っているいつまでも

マネキンに並んで立ってみたオレのどうせおんなじだろって顔だ

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体でふさぐ

体でふさぐ

カーテンをズシャッとひらくああ朝のさえない霧のかかる五丁目

やらないでいるとますます先鋭になってゆくギャグ胸中のギャグ

宣伝のためのうちわが置いてある四月のくさい部屋に肘つく

どうしても言われたくない欠点を見ない見せない体でふさぐ

順調にかわいがってたはずの手に噛みつく猫のキバの見事さ


そうならんようにしねェと成り立たん。金の話だ、なくなるカネの

母親に無理にやらせたファミコンを思

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