253.20220821☆彡：シャウの回：自己紹介
何で俺が……と言っても仕方無い。
兄貴に抵抗するのは時間と気力の無駄だ。
芳名帳みてぇなもんだと思うしかねぇな。
俺はコンリウドンに所用のついでで差し入れを持参した、
ハイドの双子の弟だ。
奴はお袋似、俺は親父似。
シャウ・ワイズ・リヴィール、１１月１３日生まれ５１歳。
深夜を跨いだから奴とは誕生日が違う。
タングール帝国のヒュウグス大陸領にある
コウドュク王国・ヒュウグス帝国・マリエラセス連邦との
辺境の地リヴィールを預かる第九代ワイズ家当主だ。
加護は勿論「第九代ワイズ・リヴィールとなる者」。
真名は忘れた。
男性体男性自認、
性的指向は女性自認者、
既婚、五人の養子の父。
ひぇ……他の世界線では結婚もせず
一生兄貴にこき使われるのか。
心！ 底！ 此処の今の俺で良かったぜ。
でも珍しいよな。
世界線ごとの差異ってのは、
もっと小さい事が殆どらしいじゃねぇか。
世界線で加護が違うなんてのはなかなか無いらしいぜ。
俺は超レア。
ワイズ家取り潰しの世界線では「風無く運ぶ者」だってよ。
輸送を生業とする加護だ。
最後になるだろう実子が産まれてるのに
ワイズ・リヴィールとなる者の加護精霊が現れなかったなんて、
肝冷えたろうな、他の世界線の親父とお袋。
大体、跡目系の加護は出渋らない。
若い夫婦ならまだしも
歳いった夫婦なら孕んだ頃には
何処かに加護精霊が現れてるもんだ。
因みに「第十代ワイズ・リヴィールとなる者」は、
俺がカミさんに惚れて間もなくに、
親しい領民の夫婦の許に宿った。
カミさんは女性体じゃねぇから、
「この恋は叶うな」と思った事を良く覚えてるよ。
さぁて、今夜は酒盛りだ。
リヴィール領で造った薔薇酒と薔薇の実酒も一箱づつ届いた事だし、
遠慮なく挑ませてもらうぜぇ。
三十四年前にフレデリック君に呑み負けてるから
里英、元い、竹晴君とタッグを組んでリベンジだ。
フレ君は浄化槽でも身体に仕込んでんじゃねぇかってくらい強いんだよな。
兄貴は大人しく夕静君とじゃれてろよ。
あんた等二人は直ぐ笑いだすから
話が進まなくなんだよ。
ミュツールの事で訊きたい話があるからよぅ。
マリエラセス暦４０４４年９月６日黄曜日２２：２２。
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