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250.20220818:ハイドの回:方言

ハイド

フレドの買ってきてくれた生薬のお蔭で
一時間ほどでストンと寝落ちて、
久しぶりに早朝と呼べる時間にスッキリ目覚めると、
ダイニングから夕静ゆうせい竹晴ちはる君の会話が聞こえた。
三十五年前、
家出して降り立った港で
後ろから夕静に麻袋を頭に被せられて拉致られた時、
抵抗する気が失せた理由を思い出した。
この温かいワケイザ訛りの所為だった。
生家では毎年一月七月になると
親父の部下や戦友が訪ねてきて、
その中で二番目に多かったのがワケイザ出身者で、
例外無く彼等は誰に対しても親切だったから、
条件反射で骨抜きにされたんだった。

フレドがバリバリの標準語だったから、
コイツと出会って暫くは
夕静は標準語になってたよなぁ。
慣れて方言で話せるようになるまで
どれだけ掛かったんだっけ……四日か。
なら直ぐだな。
ん? オレ?
オレは標準語だよ。
帝国タングール王は標準語で話せないと
舐められると思ってるから
軍人の家系は特に標準語で育てられるって訳だ。
フレドの標準語は、
金持ち相手の商売なのと、
採石で世界中を飛び回るからなんだそうだ。
石が採れる地域の方言は話せるが、
夕静と竹晴の地元サウゼテスは詳しくない、と。
フレドがちょっと慌ててみせりゃあ、
二人の緊張なんざ一瞬で解けそうだけどなぁ。

マリエラセス暦4044年9月3日青曜日23:31。


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