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20220221:ランの回:犯罪者

ラン

料理しようという事になったから

ママに電話して相談したら喜んだ。

台所の棚に入ってる

米とか粉とかの頂き物の説明書と

セトフォルドの役所でもらった案内を

読み直すように言われた。


全然読んでなかった分厚い案内書、

厚みを見ただけで疲れたって言ったら

おちびが読んでくれた。

「玄米と全粒粉と蕎麦粉そばこを、

二足歩行種族の住民と滞在者全てへ、

加護者の申告した年齢と身長体重に応じた

栄養士の算出した最適量を、

女性体への生理用品と共に、

毎月一日に国から滞在場所にてて支給しますって!

知らなかったです……。

ワタシが役所を避けて生きてきたのは

間違いだったですねー……」


主食をもらえるって事にはもちろん驚いたけど、

それより

おちびが役所嫌いの理由の方が気になったから訊いた。


「なんで? 役所嫌いなの?」


「嫌いになるほど知らないけど、

ワタシはこのヒト型になってから

戸籍登録なんてした覚えがないし、

当然のように、

ワタシはワタシを良くない密入国者だと思ってたし、

だから小人仲間ともお話しした事なかったし、

だから……だから……」


おちびの口がへの字になって、

見る見る内に目尻にじわぁって溢れた

涙のつぶが大きくなったから

ランは慌てておちびの小さな頭を撫でたよ。


「そっか、そっか。

今までよくがんばってきたね!

まじ尊敬するわ。

でもね、国境とかって、

ラン達の目に見えない聖霊役人が見てて

把握はしてるらしいよ。

あとね、そもそも、

生まれた瞬間に記憶と記録を司る神マリエラセス神様が、

書記聖霊を寄越してくださってて、

名前とか(自認)性別は

更新しなきゃならないらしいけど、

戸籍は届け出なくっても作られてるらしいよ」


話しながら棚の米とか粉とかをよく見たら、

全部二袋ずつ有ったから

思わず叫んじゃった。


「あーッ!! 有るよ!!

ランのと比べたらものすごく少ないけど

ちゃんと二人分置いてあるよ。

前の家にも届いてたんじゃないの?」


「え……あ!

確かにもらってたです!!

ずぅっと小人仲間が恵んでくれてたのかと思ってました」


だって。

良かった良かった。


おちびなのに苦労してきたんだなぁって思ったら、

犯罪者扱いなんか誰にもされてなかった事に気付いて

すっかり笑顔になってるおちびと交代みたいに、

ランの目がじわぁって熱くなったから

ランは慌てて厠に駆け込んだよ。


うん、確認とか相談って、

本当に大事だね。


マリエラセス暦3903年2月21日こく曜日22時14分。


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