20220526：トゥの回：ナリスの誕生日
ランは家政師が来る前に訓練室に入ったけれど、
直ぐにベッドへ直帰した。
まだ立つと微妙に具合いが悪くなるそう。
でも今日は機嫌良く過ごした。
トゥの魔法道具カタログの未読部分が
まだあと300頁くらいあったから。
何と全部で500頁くらいあるのです。
近所の実店舗に連絡したら
分身おやつの在庫があったので
買ってきて遠征後になりちかクッションに持たせたら、
ナリスが目を腫らして御礼に来た。
どうしたのか訊いたら
誕生日プレゼントが嬉しかったと。
十輝氏が偶然一枚だけ見つけたから
持ってきたという
どこかの世界線の
ナリスの書記聖霊の記録を見せてくれた。
「マリエラセス暦四〇五六年五月二十六日。
ハリム大公国より武力侵攻を受けている
ハムクス公国の港町ミドバリの倒壊した家屋。
裕福なヒューマン、若しくは大型獣人が住んでいたと思われる。
朝ごはん時にきょうだい四人と続け様に我が愛し子誕生。
六体満足。
少し尻尾は短めだけれど、
その尻尾も白地に縞柄の斑模様の滑らかな短毛も、
走ったら速そうな高低差の小さな横顔も、
おかあさまに一番良く似た可愛い仔ちゃん。
今は未だ開いていない瞳もおかあさまと同じ老竹色。
わたくしの可愛い可愛い愛し子。
時期も場所もあまり恵まれてはいないけれど、
精一杯の祝福を授けましょう。
わたくしが授けられるのは五つまで……
たのしむ心と、
へこたれない心と、
やさしさをしんじる心、
そしてじょうぶな体、
あいしてくれる相手をあいせる運……
嗚呼、何と「五つ」の少ないこと！
しかし愛し子に降りかかる困難は
きっとこの五つがあれば乗り越えられることでしょう。」
こんなものが流出したのでは
書記聖霊の立場が
まずそうな気もしないでもないけれど
何しろナリスが嬉しそうだったから
黙っておいた。
ナリスには記憶の残っていない
猫のおかあさんの事、
産まれた場所の事、
祝福もたくさんしてもらってた事、
ちょっとずつではあるけれど知る事ができて
一人前になった気分だと
ぴかぴかの笑顔を見せてくれた。
マリエラセス暦3903年6月3日赤曜日23時55分。
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