610.20230811：ランの回：華代の始祖

2023年8月12日 01:55

前話のご案内

話中の万禮一家は、メンバーシップ「夢了の皿」会員の万禮様のオリジナル・キャラクターで設定その他は会員様御本人と話し合っております。
７１１号室出演者≒メンバーシップ会員様は常時募集中です♡
万禮様の偶さか日記も併せてお読みいただくと解像度とエモさが跳満です。

そうだね。
本能は無理矢理抑えても
いずれ何処かに大きな皺寄せが出るからね。

今日は華代とランとで買い物して、
帰ってきたおちびも加わって三人で
具だくさんのバゲットサンドと
ポタージュスープを作ったよ。
朝からおちびは恵玄のきょうだいを作るべく
カーボナードの精霊と華代を面接した後は
泰市と一緒に
魔物のひとの処に加工を頼みに行ってたんだ。

煮た根菜を裏漉ししながら質問タイム。

ラン「ランは、
おちびも泰市もだと思うけど、
華代の事をいっぱい知りたいんだ。
触れられたくない事は何か
先に知っといた方が良いかな？」

華代「あの人・・・の事は……」

ラン「ラン達が親しい
最近バンパイアになった『凌司あの人』だけ？
育ての両親とか始祖とか友達とかの事は平気？」

華代「平気、です……うん。
ただ、始祖の事は私もよく知らないんです。
昏睡から醒めた後、
十日しか一緒に居なかったから」

おちび「始祖はどういう印象でした？」

華代「美人なオバサン……
つっけんどんな癖に世話焼きで……
低い声が凄く安心して……
精一杯愛してくれたと思う」

ラン「好きになってた？」

華代「少し」

ラン「そっか。一緒に暮らしたい？」

華代「百二十年後にまだ私の処に来たら」

おちび「百二十年後でなければ駄目なのですか？」

華代「だって刑期だもの」

ラン「始祖は何人死なせてしまったの？」

華代「担当者サクさんからは一人だって聞きました」

ラン「始祖はバンパイア歴短いの？」

華代「７８年だって言ってました、当人が」

おちび「７８年で直系係累は華代氏だけですか？」

華代「そう言ってました、サクさんが」

ラン「じゃ、何とかなりそうな気も
しないでもないよね」

華代「そうなの？」

ラン「悪い人じゃないんでしょ？」

華代「さあ？　
私に見せる顔だけが全てではないでしょう……誰だって」

最後の言葉を吐き捨てるように
華代がプイって顔をそむけたから、
嫌な人か嫌な出来事かを
思い出したんだろうなって思ったけど、
未だそこまでは突っ込んで訊けなかった。

ラン「あー、まー、そういう人は多いよね。
でもそれは間違ってないでしょ？
親しいのに何時でも何処でも
親しくない人と同じ扱いされたら寂しいじゃん」

華代「そうね。
うん、そう言われてみるとそうよね」

裏漉しが終わってからは華代からの質問タイム。
此処はどういう星なのかとか、
今はどういう時代なのかとか、
どういう生き物が
どういう暮らし方をしてるのかとか。
そりゃそうだよね、
知らない土地で見慣れない生き物と暮らすんだもん。
先ずは俯瞰だよね。

ランとおちびの耳とか尻尾が動く度に
華代はハッと見たけど、
育ちが良いんだろうね、
触らせてとは一度も言わなかった。
不躾なひとって親しくもない内から
自分の欲を満たそうとするから、
かなり安心した。

マリエラセス暦３９０４年９月１２日黄曜日２５時４０分
（この星の一日は２６時間）

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