見出し画像

息子が選んだのはピンクのコップ

先日、保育園に通う次男が、コップを買ってくれと言った。
園で歯磨きをしているのだが、その時に使っているアンパンマンのコップを買い替えたいのだそうだ。
「え〜、まだ全然キレイだよ?もったいなくない?」と私が渋ると、
「アンパンマンだから嫌だ。みんなが笑うんだもん。」と言う。
年長組になって、もう大きくなったんだもんという意識が、みんなに芽生え、どうもアンパンマンのコップでは、格好がつかなくなってきているらしい。

子どもの言う「みんな」は周囲の二人くらいだったりもするので、しばらく放置していたのだが、その後も度々「コップ買って」と言うので、
そんなに気になるのであれば、買い替えてあげようかとお店に連れて行った。

「ほら、どれにする?好きなの選んでいいよ。」
キャラクターのコップがいくつも並んでいる棚で、息子が選ぶ、
『保育園で周りからからかわれることのない、ちょっとお兄さんなデザイン』
とは、一体どれなんだ?
「う〜ん、どうしようかな。これもいいけど・・・、あ、これにする!これがいい!」

息子が嬉しそうに手にしたのは、サンリオのすみっこぐらしというキャラクターの、かわいいピンクのコップだった。

「え?それ?・・・ピンクの?」

私は口を突いて出そうな「男の子なのにピンクでいいの?それこそからかわれるんじゃない?」という言葉を必死に飲み込んだ。
ジェンダーレスとか、それなりに自分でも意識して、男の子、女の子という区別なく子育てしていきたいとは思っているし、日頃から子どもへの声かけには気を配ってきた方だと思っていた・・・。今の今まで。
それがなんだ、今私は、ピンクのコップを欲しいと言う我が子に、
「男の子なのにピンク⁇」と、青色のコップを勧めたい衝動に狩られているじゃないか!
言い訳をするならば、現状、アンパンマンでからかってくる周りのお友達に対し、からかわれないコップを選びに来たのだ、だからピンクではダメなのではないかと思ったのだ!

「すみっこぐらし好きなんだよ。可愛いんだもん。」
とお気に入りを見つけウキウキ顔の息子に、
「・・・よし、じゃあそれにしようね。」
とそれまでの脳内の逡巡を、えいやっと追い払って、レジに向かった。

普段から、心配性で悲壮な想像ばかりしてしまう私は、そのコップを保育園に持っていった息子が
「え〜、おっかしい〜、男がピンクのコップ使ってる〜。」
と、アンパンマンの比ではないからかいを受けて、泣いて帰ってくる、という妄想を振り払いながら、「これも息子にとっていい経験になるんだ。」と気持ちを強く持ち、翌朝送り出した。

「コップ、どうだった?なんか言われた?」
気になって仕方ない私は、いたって普通に帰宅した息子にさりげなく聞いた。
「何にも。」
「え?何にも?」
「あ、かわいいって言われた。」
「あ・・・、そうなの?・・・、良かったねえ。」

もう世の保育園児は、すでにジェンダーレスなのか!
おばさんが間違っていたよ。ごめん、みんな。

まったくもって私の取り越し苦労に終わった、今回のコップの件。
もしあの時、息子の選んだピンクのコップを「それはやめなよ。」と否定していたとしたら・・・。
「なんで男の子がピンクはダメなの?」と聞かれたら、私はなんと答えたのか。
「ダメじゃない。何色が好きでも、何の問題もない。」
普段はそう思っているはずなのに、そういう風に育てたいと思っているはずなのに。
あの時、他の色のコップを勧めなくて、本当に良かった。

ジェンダーレス、私の意識もまだまだだ。子どもに教えられたな。
精進精進。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?