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時めくお菓子

ちょっと、いやかなり前の話にはなる(2023年夏から秋くらいのこと)が、新旧和菓子を併せて味わってきての感想。
特設の「和菓子屋とき」と「とらや」のこと。

まず「和菓子屋とき」だが、GrandSEIKOが
実施しているプロモーションとなっていて、毎年シェフを変えて開催されるもの。

時計も和菓子も、時を大切にしている点で共通していて、今年でまだ2回目のイベントだという。実際に参加してみて、予約をするのはかなりハードだったし、店内はプロジェクトに共感したファンですごく盛況だった。

イベントスペースは"arrive in TIME"というタイトルだった。平野紗希子さんが鮮やかに実る果物や花をイメージし、空間作りをプロデュースしたと聞いた。
また今回はFARO×ASAKO IWAYANAGIでお菓子が考案されており、合計4つのお菓子が並んでいた。
私が買ったのはそのうちの2つ。見た目も味も繊細な雰囲気で面白かった。

1つ目は薄明。マスカットとライム、レモングラスで爽やかな朝の感じがした。
2つ目は小夜中。烏龍茶とエルダーフラワーで何故か正統派なのに妖艶な感じがした。まるで香水を食べているようだった。

今年もやるなら是非行きたい。

一方、とらやではいつものミュージアムに行った。赤坂の本店にあって、その時はちょうど色食五人切(五人斬西瓜割売)のお菓子を擬人化したものが展示されていた。普段、書物は早稲田図書館に保管されているよう。

展示を通じて、初めて知った情報を少し共有してみようと思う。

まずはきんつばのこと。もちろん漢字では金鍔と書くのだが、銀鍔もあるらしい。違いは金鍔が江戸生まれで小麦で作られていて、銀鍔が京都生まれで米粉で作られていること。なんと元祖は銀鍔らしい。食べてみたい。

お次は祇園祭で供される、柏屋光貞の行者餅のこと。文化3年の疫病が大流行した時代に作られたものであることから、無病息災の和菓子である。実は食べたことがないから食べてみたい。ただし2023年は作り手がコロナに罹ってしまって発売中止に追い込まれたという(京都新聞)。再び疫病の影響とは辛いなぁと驚いた。

最後に会場に置かれていた来場者の記名ノート?(書き置きのようだった)が面白かったので記しておく。

ノートにはまず、とらや側から来場者に対して印象深い和菓子について質問のスペースがあり、各々が思い出を書き残す形で記名帳の役割を果たしていた。

例えば、祖母の手作りおはぎ、パイロットの父によるお土産だった郷土菓子、結婚式の引き出物で選んだ和菓子など。
和菓子が姑と仲良くなるきっかけになった和菓子を選んだ人もいれば、季節を感じることができるものがやはり好きという人もいた。

殆どが日本人の書き込みだが、中には外国人もいた。例えばLondonから来た鑑賞者がichigo daifukuと書いていた。苺大福が好きな理由はbeautifulだからだという。

私もイギリスに留学した際に、現地で苺大福作りに挑戦しており、この記帳を見てその時のことを思い出した。ヨーロッパの苺は酸っぱいので大福向きだった。

フラットメイトに大福を分けてあげたら喜ばれたので、是非機会があったら苺大福を海外の方にシェアしてみて欲しい。

番外編:買った和菓子

①色木の実
尾形光琳が重箱でとらやに和菓子を頼んだ履歴があるらしく、その時に注文されたものの復刻版として販売されていた。
本当は葉と実でセットにして頂いていたと聞き、お洒落さにびっくりした。
当時は豆を散らした四角い羊羹と合わせ、お客様に出されたようで、秋の鳥の群れを表しているのでいい雰囲気になるのだとか。雰囲気があるなぁ。

②りんご
買わずにはいられないTHEリンゴの見た目。前から気になっていたので今回やっと購入した。
半分にすると、中もきちんとりんごの断面になってて感動した。りんごは入ってないのにりんご食べている気分になった。

会場では和菓子の落語の一部が放映されていて、全部のストーリーを知りたかったので図書館で借りてきた。

いろいろとお菓子に纏わるイベントに足を運ぶ際には、移動中の本も合わせたくなる。携える本として"言葉の園のお菓子番"を選んだ。

勤務先が潰れてしまい失職した書店員が、亡くなった祖母が通っていた連歌サークルにひょんなことから参加し、出会いから新たな自分を発見し歩み出していくストーリーなのだが、和菓子を中心に美味しそうな手土産がたくさん出てきて楽しい本だった。

また連歌は詠み手全員でストーリーを紡ぐところが面白いと分かった。ルールは難しいがそれも皆で詠むので試行錯誤しつつ、互いに学びつつ進められるのが魅力かも。

自分の良さも自分1人ではなく、周りの力でより輝かせることができるのだと気がつくことができる一冊だった。

連歌のルールにはやはりちょっと戸惑いそうだし、私自身実際に連歌に加わったり、経験をしたことがないが、偶然にもNHKで「ことばのバトン」という、連歌の番組があったのを知ってちょっと見てみた。

やり取りではそれぞれが意図した意味とは違う意味合いで歌が伝わっていくが、それがまた深みを増させていた。参加者の1人も言っていたがまるで生き物のようだった。それに人の一生のような味わいもあると思った。
読み手の年齢、性別、職業が皆違うことでいろいろな見方が出来るところが面白いかもしれない。

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