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何度でもあの頃を思い出せる、温かい青春小説

はい、また更新が途絶えました。生きています。
また少しづつnote頑張ります。
今日のnoteテーマは「おすすめしたい本」。

か「」く「」し「」ご「」と「 /住野よる著


大人になったあなたへおすすめしたい、共感度No.1青春小説

か「」く「」し「」ご「」と「

大人になり、青春時代を遠くに感じるようになってきた今日この頃。
自分の思春期に想いを馳せると、「あのとき、こうしておけば…」なんて後悔することもたくさんある。

過去には戻れないから、せめてこれから先の人生では「あのとき、こうしておけば…」という後悔を少なくして生きていきたい。

か「」く「」し「」ご「」と「 は、私にとって、読むたびにそういう想いを思い出させてくれる小説なのだ。

きっと誰もが持っている、自分だけの「かくしごと」

主人公の高校生5人(京、ミッキー、パラ、ヅカ、エル)には、それぞれ少し特別な力が備わっている。
そして、全員がその力を人には知られないように過ごしている。

自分が持つ力は、何のためにあるのか。どう使うべきか。
自問自答しながらも、直面する青春の悩みに立ち向かっていく5人。

さて、この物語のテーマとも言える「かくしごと=特別な力」とは何か。

それは、人の感情がマークとなって頭上に見えたり、人の心臓のリズムの速さがわかったり、他人の恋心が矢印で見えたり…。

使いどころは正直ないかもしれないけれど、そんな能力のない私としては羨ましい。
ちょっと借りてみたい、能力。

彼らは、この特別な力をときに疎ましく思ったり、逆に有難がったりして、思春期なら誰もが抱くような想いや悩みを何とかして解決しようと奮闘する。

悩みながら成長していくシーンではきっと、特別な力を持っていない読者である私たちにも心当たりがあるのではないだろうか。

この物語は、非現実な設定と現実的なエピソードが絶妙に混ざり合って、読者が置いてきぼりになることもなく、しっかりと共感もできる。
普通の青春小説とは一線を画したような新鮮味のある物語だと、個人的には思う。

初回でも、読み直しでも。何度も楽しめる仕掛け

各章ごとに5人が順番に語り部となり、物語は展開されていく。
読み進めるごとに、各々が悩んでいることや他のメンバーに対する想いが読者に伝わっていくように構成されている。

各章には、ぱっと読んだだけではわからない伏線や、勘違いしてしまうひっかけのような表現やエピソードが多く登場する。

「これ、どういうことだろう?」と疑問に思いながら読み進めていって、全部読んだところでやっと「あぁ、そういうことか!」「うわ、ひっかかったなぁ」と合点がいく。

そんな仕掛けが散りばめられていて、楽しめるからついつい読み返したくなる。

ちょっとした謎解き要素や、伏線回収の爽快感があるのも、心惹かれる理由なのだ。

大人になってから読んでも、刺さる物語

ただ青春の日々を切り取っただけではない!「共感度No.1」の理由を探る

この小説の帯には、「共感度No.1の青春小説」と書かれているが、これはどういう意味だろうか。

5人の主人公たちはそれぞれ違う性格や考え方を持っていて、彼らはその違いを知ることで新しい思想を学んだり、迷ったときに助け合ったりする。

そんな彼らの掛け合いや葛藤を読んだ私たちは、自分に似ているキャラクターに自分を投影させてみたり、または、自分とは違うタイプのキャラクターの言動に救われたりすることもあるかもしれない。

大人になってから読むと、過去を振り返って、当時の自分に似ているキャラクターを見つけることで、共感の念を抱いたり、愛しさを感じたりするのではないだろうか。

私自身、どことなく自分に似たキャラクターがいる。
「京くん」と「エル」だ。
京くんは、言いたいことを言い出せないこともある、大人しい男の子。
エルは、京くんよりさらに控えめでな女の子で、ある日突然不登校になる。

その2人の考え方や、行動が過去の自分と重なって、とても共感を覚えて、読む手が止まらなくなった。
主人公5人全員好きだけど、特にこの2人は格別に思った。

個性豊かな5人の中には、クラスの中心のような明るいキャラクターも登場する。
きっと1人くらいは「この子、似てるかも」というキャラクターが見つかるのではないかと思う。

現実世界のどこかにいそうなキャラクターたち、大人になってから読んでも考えさせられるセリフ、どこか懐かしいと感じる妙にリアルな描写。

それらが「共感度No.1」と謳われる理由だと思う。

大人にこそおすすめしたい理由

なぜ高校生が主人公の青春小説を、大人におすすめしたいのか。
大人になってからも、理想の自分とのギャップや、仕事・プライベートに悩んでいるという方は多いと思う。

この物語の主人公たちも、私たち読者と同じように自分自身のこと、他者との関係、進路などで悩み、周りと比べて落ち込むこともある。

そんな彼らの人間らしい姿を、作者はやわらかい表現で、優しく包むように描ききっている。

私自身は、作者の描く人間像や言動に共感し、読後に爽やかな気持ちで前を向く力をもらえた。
忘れかけた青春の痛みを紐解いて、少しは愛しく思えるようになった。

この優しい物語を、知ってほしい。
自分の道に迷ったとき、または、悩みがなくとも青春時代を思い出したくなったとき、ぜひこの本を開いてみてほしい。

そう、強く思う。

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