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猛然と作る日

彼がいなかったことと、生理が終わったことと、短気な客と、冷食や菓子パン生活が祟ったのか、朝から視界に靄がかかっているようなどんよりとした苛立ちが、自分の中に立ち込めていた日。
左手の中指だけ爪が長いことが気になって、鋏で切ってしまうほど私の心は荒んでいた。

職場が自転車で30秒、家を出る20分前に起床する生活だからいいものの、これが満員電車で1時間半とかだったなら、意気地なしの私はめげていたと思う。

そうして、やっぱり、あとちょっとの所で喧嘩をする私たちがいて、どんどん口も悪くなって行き、それでも今日にちゃんと帰ってきた彼をやっぱり好きだと思う。今日の感情の動きというか、気持ちを忘れないでいたい。



仕込んでいたおでんも焦がし(食べれない事もなかったけれど)、チンしたご飯はあまり美味しくなくて、帰って来んな!って思いと、本当に帰って来なかったらどうしようという子供みたいな気持ちの中で、焦げたおでんを食べていたら、釣りの師匠から電話が来て、「イワシ持ってきたから降りて来れる?」とのこと。
いつも師匠は、下に来てから連絡をくれるので私はダッシュで下に降りて、袋に沢山のイワシを受け取った。何だか袋の中で満ち満ちとしているイワシを見たら、私の元気は戻ってきつつあった。

初めての生のイワシ。
缶詰でしか知らなかったイワシは鱗がほぼ剥がれていて楽!というのが第一印象。 
大ぶりなものを6尾、甘露煮に仕立てる。
釣りたてのイワシは身が全然違う!

 
甘露煮に煮ている間に、じゃがいもも頂いたのでじゃがいもとベーコンの食パンを作ることにした。
ホームベーカリーのメニュー本みたいなのがあって、そこで見たレシピを元にやってみる。

焼き上がりの匂いが、いい匂い過ぎて上出来。

食べる物を作るという行為がやっぱり好き。
精神統一。心の安定剤。
そして、お礼をするのも好き。

島暮らしをすると、パン作りと魚を捌くところから調理するまでが上達する。

埼玉にいた頃の、訳も分からず人波や社会に振り回されて心が死んでいくことは無くなっても、島に移住しても、心がどんよりする日は当たり前にある。ただ、その原因が分かるから対処しやすいし、自分で処方箋もある程度分かっているという安心はある。それだけでもお手柄である。


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