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造血幹細胞移植って結局何なのか① -子どもの血球貪食症候群-

化学療法でも症状の大きな改善が見られなかったことと、血球貪食症候群に加えて再生不良性貧血の症状が出ていること、輸血の累積が多くなってきたことで、次女が造血幹細胞移植を受けることが現実味を帯びてきた。言葉ではよく聞くが、結局何をやるのかがよく分かっていなかったため、担当医からの説明を仰ぎつつ自分でも調べてみた。
 
テーマの量が多いため、一つひとつのトピックをなるべくシンプルに記載しようと思う。どうせ丁寧に説明しようにも専門的なことは分からないし、そもそもこのnoteはあくまで同じ素人レベルの当事者・関係者の頭の中の「?」を少し減らすことに役立てばいいぐらいのものだし。


造血幹細胞と移植の必要性

造血幹細胞とは?

読み方は「ぞうけつかんさいぼう」。おそらく区切るところは「造血」と「幹細胞」。
幹細胞は、細胞を生み出す細胞。つまりは“細胞の幹”。
つまり、血(正確には血球)を造る幹となる細胞が、造血幹細胞。
一文字ずつ解析するとそのまんまである。

造血幹細胞移植の目的

次女はこれまで、つくられた血球が破壊されてしまう血球貪食症候群の治療として、ステロイドやエトポシドでマクロファージの貪食行為を抑えていた。
が、マクロファージの活動を抑えても血球が増えていないため、そもそも造血幹細胞が血球を造れていない再生不良性貧血も併発していることが確かになった。
そのため、体内の造血機能を回復するべく造血幹細胞移植が必要になっている。

なぜ血球が少ないとまずいのか

血球とは、おもに赤血球、白血球、血小板の3つ。

赤血球は体内に酸素を運ぶ。
白血球は細菌やウイルスなどの異物を攻撃して排除する。
血小板は止血をする。
 
つまり血球が減少すると、酸素がからだ中に運ばれずに酸素不足や貧血症状を起こし、細菌やウイルスから身体を守るすべを持たず、出血しても血が止まらない状態が続くことになる。 

なぜ輸血を続けるだけではダメなのか

輸血(赤血球)が増えると、そこに含まれている鉄が体内に蓄積される。
大量かつ長期間の輸血が続くと、その鉄の蓄積が膨大になり、肝臓や心臓などの臓器の障害が発生するリスクが高まる。
 
後述するが造血幹細胞移植は、体への負担が大きい。そのため、臓器障害が発生した状態での移植はよりリスクが大きくなる。そのため、いずれやらなければならないのなら早めに移植した方がいいという判断となっている。 

造血幹細胞移植について

移植“手術”ではない

前提として、臓器移植のような外科的な手術はしない。造血幹細胞が含まれる細胞液を点滴で注入するという方法が取られる。ちなみにドナーから骨髄を採取する際には、全身麻酔をして採取される。こっちが“手術”イメージを先行させている? 

造血幹細胞移植とは

あらかじめ採取していた自分の造血幹細胞や、HLAとよばれる白血球の型が合う他人(ドナー)から採取した造血幹細胞を、点滴で注入(移植)する処置。
移植された造血幹細胞が体内で細胞分裂を繰り返して増え、血球を造りはじめて、白血球の中にある好中球が回復すれば、ひとまず成功(生着)となる。 

移植の流れ

移植方法によって期間などの変動があるが、大きく「移植前措置」「移植」「生着」の3フェーズに分かれる。 

移植前措置

大量の抗がん剤や放射線治療などで、一時的に自分の細胞を根絶させる処置。脱毛、皮膚の変色、口内炎などを引き起こす。自分がやるわけじゃないのだが、正直想像するだけでしんどい。
 
この措置の理由は2つあり、1つは病気の原因となっているもの(白血病ならガン細胞、血球貪食症候群なら血球を貪食するマクロファージ、再生不良性貧血なら造血幹細胞を攻撃しているリンパ球など)を極力破壊しておくことと、ドナーの細胞という患者の体内にとっての“異物”への拒絶反応を減らすために白血球(好中球)の活動を抑えること。新しい造血幹細胞を受け入れるための地ならしのイメージに近いかもしれない。 

移植

上述している通り、移植は点滴で行う。 

生着までの期間

移植後、造血幹細胞が血球を造り出すまでには2-4週間程度かかる。この間、白血球(好中球)がほとんどないノーガード状態のため、感染症を防ぐためにクリーンルームでの生活をすることになる。 

生着

造血幹細胞が血球を造り出すことが確認された状態。一般的には好中球が3日連続で500個/μL(mm3)以上に増えることらしい。 

ドナーさん由来の造血幹細胞が、患者さんの骨髄の中で血液を作り始めることを「生着」といいます。一般的に、生着とは、白血球の一種である好中球が3日間連続して500個/μL(mm3)以上に増えることであり、その最初の日を生着日とします。

「一般社団法人 日本造血・免疫細胞療法学会」公式ホームページより

28日以上経っても生着が確認できない場合や、一度生着が確認された後に再びその機能が失われた場合は「生着不全」とされ、早急に再度の移植が必要となる。 

骨髄移植と造血幹細胞移植との違い

造血幹細胞移植のひとつの方法として骨髄移植がある、というのが正確な表現。残りは末梢血幹細胞移植と臍帯血移植。骨髄移植と末梢血幹細胞移植は日本骨髄バンクがドナーの登録・管理を行い、臍帯血移植は日本赤十字社などのいくつかの病院が、本人同意のもとで提供された妊婦の臍帯血を採取・保管している。

造血幹細胞=骨髄移植とイメージしがちな理由

ただの推測だが、造血幹細胞が骨髄の中にあるのと、移植に必要なドナー登録の名が「骨髄バンク」だからではないかと。


ここまでが、造血幹細胞移植に関する内容

年間約150程度しか確認できていないという子どもの血球貪食症候群や、同じく年間100程度しか確認できていない子どもの再生不良性貧血と比べて、その治療法である造血幹細胞移植は圧倒的に知名度が高い。
 
その理由のひとつは、年間15,000程度の発症者がいるとされる白血病の治療法として有名だから。有名ということは実例が多いということで、実例が多いということはその分情報量も多くなり、それは技術の進歩につながる。
 
もちろん、造血幹細胞移植は今でもリスクが低くない治療ではある。正直、親としてはその現実をまともに直視すると気持ちの置き方が難しい。だから、このように淡々と事実を整理したり、あるいは「医者も手探り状態の珍しい難病に向き合ってじわじわ弱っていくより、よっぽど事態が明確になった」とポジティブに考えたりすることで処理している感はある。
 
なにしろ、移植をするのは自分ではない。
子どもといえど、生物学的な視点=一生命体としては、あくまで他人である。
辛いのは本人であり、命の責任は医者が担っており、親は周辺のサポートとお金を出すことだけぐらいしかできない。
 
そういった意味では、手をこまねいている親戚と物理的な貢献度は大して変わらない。

結局、仕事をして着実に収入を家計に落とすことが、最も現実的なサポートだったりする。もちろん家計の余裕具合や家族の価値観・生き方による部分が大きいため、それが「正解」だとはまったく思わない。

ただ、少なくとも我が家にとっては「仕事を休んででも、長く子どもとの時間を」というのは、本質的には子どものためにはならない。というか、それをして家計が逼迫したら困るのは子どもなので、親としての優先順位が違う。

次回へ続く

とはいえ、造血幹細胞移植は医師や患者がやると決めたからといって、すぐにできるとは限らない。というか、やると決めてからが長い。
 
多くの人が知っての通り、ドナー適合者を見つけなくてはならない。
 
なんでドナー適合がこんなに難しいのか、適合者が現れなかったときの次善策とリスク、そしてそのリスク軽減に向けた近年の医療技術の発展について、次回もう1回調べてみたいと思う。

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