AWSの社内教育を開始 - 第1回:AWSで作業することのゴールとは
某月某日
弊社では、今週からIさんにAWSのトレーニングを始めた。
今まで、AWSに関わることは私が全部やっていたのだが、最近は”作る”こと意外にも作ったサービスを少し長期的に見守る仕事も弊社で出てきたため、弊社のメンバーにも徐々にAWSの知識を身につけていってほしいと思ったのである。
AWSというのは膨大な海のような場所なので、教科書の1ページ目から順番に勉強、という資格試験のようなアプローチはあまり向いていない。
自分に必要な箇所だけを効率的に調べて、実験し、身につけていくのが一番効率が良いのだが、この「必要な箇所だけを調べて、、」というステップができるようになるまでの道のりが長いのもAWS習得の難しい部分である。
そこで、どうやったら、そこまでの最初の道のりをうまく導けるか、を考えた。
ゴール
まず、AWSで作業することのゴールは何なのか、これを伝えることから始めようと思った。
弊社のメンバーは全員プログラマーなので、「アプリを作る」、「機能を作る」、「UI・UXを作る」というゴールに向かって作業することには慣れている。
だが、AWSのゴールは当然UIを作る、機能を作る、アプリを作る、というものではない。
そこでAWSで作業することのゴールを自分なりにわかりやすく伝えようと思った。
AWSで作業することのゴールは
「ちゃんとつながる」
を作ることと
「ちゃんとつながらない」
を作ること
だと伝えた。
権限を付与していないユーザーはS3にファイルを置けない
SSHでEC2サーバーにログインできた
EC2サーバーからRDSのデータベースに接続してデータを読み取れた
S3にあるファイルのURLを取得して、ファイルをダウンロードできた
SSL証明書を設定して、HTTPSでWebページを表示できた
などなど、涙ぐましいAWSの作業の終わりにはいつも「ちゃんとつながる」体験が待っている。(泣ける。。)
この「ちゃんとつながる」は紛れもなくAWS作業のゴールである。
ただ、ここで満足してはいけないのがインフラエンジニアなのである。
権限を付与していないユーザーはS3にファイルを置けない
プライベートサブネットにおいたデーターベースには外部からアクセスできない
インバウンドルールに設定していない場所からはSSHでサーバーにログインできない
などなど、こちらが意図してつながらないようにしているところから(ところへは)ちゃんとつながらないようにするのもAWSのもう1つのゴールである。
「ちゃんとつながる」
「ちゃんとつながらない」
これがAWSで仕事をすることのゴールだよ、ということをまず認識してもらった。
これをゴールだと認識して、ゴールしたら喜ばないと、AWSで作業していて辛くなってくる。
アプリやUIデザインというのは作ればゼロ → 1になったような「できた!」感があるが、AWSというのは、特にエンジニアではない人からはできて当たり前、動いて当たり前、つながって当たり前のような見られ方をされることもあり、1つ1つの「つながる」、「つながらない」を達成したときに、ゼロ → 1というよりは、-1 → ゼロ、になったような感覚に至ることがある。
僕は、そうではなく、「つながる」、「つながらない」は、ゼロ → 1を達成したんだと思うようにしている。大いに喜ぶようにしているし、これから教えるメンバーにも大に喜んでいいただきたいと思っている。
「ちゃんとつながる」、「ちゃんとつながらない」の体験を積み上げる
もともとはアプリエンジニアの僕がAWSの作業をしていて感じるのは、AWSに関しては必要な情報を見つけるのがとにかく難しい、ということである。
iOSやAndroidアプリの開発では、Stackoverflowに答えがすぐ見つかる。でも、AWSは自分が探している答えに行き着くのに手間がかかる。
それは、AWSではみんな目的が違うからであろう。
iOSやAndroidアプリでは世界中のアプリエンジニアの目的が同じであることが非常に多い。
「カメラで写真をとって保存するにはどうしたらいいかな」、
「ボタンを押したときに自分のカスタムサウンドをならしたい」、
「ナビゲーションボタンに戻るボタンが表示されないけどなぜ?」
のように同じ目的を持った人がたくさんいるので行き当たる問題も似ている、
一方、AWSの大海のなかでは、みんな目的が違っている。
サーバーの構成も、用途も、予算も、ネットワークの組み方も、それこそ千差万別であるため、自分と「全く同じことをやろうとしている人」をネット上で探すのが非常に難しいのである。
ただ全体の目的は違っていても、1つ1つ細かくブレークダウンされた「つなげる」、「つなげない」に関しては、同じことをやっている人を見つけやすい。
なので、1つ1つの「つなげる」、「つなげない」を先人の例を参考にしながら学習し、つながった体験、つながらないようにした体験を積み上げていくというのがAWSの上達の道なのである。
AWSの学習というのは、登山に似ているのかもしれない。
今週から始めたAWSの社内教育では、今日教えたゴール、「ちゃんとつながる」、「ちゃんとつながらない」の知識と体験を1つ1つ積み上げていけるような内容にしたいなぁと考えている。
つづく。
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