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次代へ伝えたい・ファッションと生地の知識 / Fashion Creator note magazine vol.5

いまの時代、無傷で生きることは
困難かもしれない・・・

そして、誰もが傷を背負い生きています。

そんな時代でも・・・
若者たちは、何度も立ち上がり
自分らしく生きようとしている。

そんな世の中を眺めていると
自分が、正いと想っている道に
・・・疑問を持つこともあります。

スピード感あるビジネスの変化に
・・・置き去りにされることもあります。

しかし 信念を持ち、自分を偽っていない
・・・私には、それがいちばん大切です。

みんな異なる価値観で生きていますが・・・
共存することの喜びは、やはり素晴らしいです。

いま、私が大切にしていることは
モノを買わない、ムダに捨てない、
・・・もう一度、活用を考える。

不景気だから・・・ではありません。

ASEANの生活で、身に付いた習慣ですね。

モノに愛着を持つことで
共に生き、末長く使う・・・
人間関係とまったく同じです。

無論、いろんな意見はあると思いますが
私は、その選択を大切にしています。

2004年・・・ケニア環境活動家
ワンガリ・マータイ氏は、MOTTAINAI から
ノーベル平和賞を受賞されました。

あの日から、環境問題に向き合うはずが・・・
私たち日本の消費文化は、変われなかった。

あれから、15年・・・
変わらないと想っていた日本でも
モノをムダに買わない、ムダに捨てない、
そんな若者が増えてきと感じます。

モノが豊富にあり、自由を求める時代に
彼らは、何に気づき変わり始めたのか・・・

その行動力は・・・
すごい、エネルギーであり
そんな若者が居ることに・・・感激します。

私たちのファッション産業も、
多くの課題があると言われます。

私の選択は、ムダなモノは創らない・・・

要するに・・・私たちは
流行を予測したモノ創りをしない
・・・という選択です。

無論、量産のモノ創りも必要ですが
消費の在り方も・・・変える時です。

自分だけ良いという発想は・・・
成立しない時代に入っています。

綺麗事を言っているわけではありません
なぜ、若者は次代を見据え行動できるのか

目先の利益に拘っているのは・・・
老いを間近にした私たち大人であり
相変わらず・・・
自分の利益を守ることに精を出しています。
この思考は、私の身勝手な人生観ですね。

私たちのファッション産業は・・・
原料から製品化まで、とっても長いフロセスがあり
各企業が成立するため、利益の構図がございます。

無論、競争社会ですから、企業の努力がございます。
しかし、正しい方向性を選ぶのは消費者です。

消費者が、次代の文化を創っていきます。
・・・ 政治家や経営者では、ありません。

いまの日本に必要なのは・・・
自分から変わる・・・勇気です。

いまの若者なら、次代を見据え
・・・日本を変えると、思えます。
2022.11.16.

ファッションと生地の基礎知識
Fashion Creator note magazine vol.5

今回ご案内するアパレル産業の情報は、No. 119 〜 303となります。

*モデリストマガジンでは、アパレル産業全体の情報を分類することが目的で、詳細な構図など記載しておりませんが、モデリストアプリでは目的に応じ有効な情報を選択できる設計にしております。

119. 織物
糸は織り、編み、あるいは組みを経て生地になります。生地はそれが作られる技法によって、織物、編物、組物、網物、不織布、レース、刺繍布に大別され、さらに生地を構成する組織によって多様に枝分かれしています。
このうち経糸と緯糸が上下(直角)に交差した生地のことを織物、このように織物を作ることを織布と言います。「整経→糊付→経通し」という経糸の準備工程を経て、その経糸を上下させながら緯糸を入れ、織っていきます。緯糸の送り込み方の違いによってエアジェット、ウォータージェット、レピアなどの織機があります。様々な技法による生地が多様に存在する中で、織物は編物と並んで最も衣料に使用されている生地となります。糸の交わり方=織(織物)組織は三原組織を基本として、その変化組織、さらに特殊な組織に分類されます。
 
120. 織組織
平織、綾織、朱子織の三原組織をはじめ、各織組織の構造を分かりやすくするため、組織図が用いられています。織物は同じパターンが繰り返し織られますが、その最小単位であることから完全組織図と言われます。経糸と緯糸が交差する状態を方眼紙上に示し、縦方向の方眼の列を経糸、横方向の方眼の行を緯糸とします。2本の糸が交差するときに、経糸が緯糸の上に出る(浮く)ところ(組織点)を黒、緯糸が上に出るところを白で表します。

<織物の三原組織>

121. 平織
平織は、経糸と緯糸が交互に1本ずつ交差した組織になります。最も単純な組織ですが、薄地でありながら最も丈夫な織物になり、金巾、ブロード、タフタ、モスリンなどになります。

122. 綾織(斜文織、ツイル)
綾織は、織物表面に斜めに畝のある織物で、斜文織、ツイルとも言います。この畝のことを綾線、斜文線、綾目、ツイルラインと呼びます。綾線をはっきり見せるには、経糸にS撚りの糸を使う場合は右上がり(右綾、正斜文)に、Z撚りの糸を使う場合は左上がり(左綾、逆斜文)になります。経糸と緯糸が3本の組み合わせで完全組織になる綾織を三つ綾と言い、経糸が緯糸の2本上と1本下で交差する場合は2/1斜文織または2/1綾と書きます。
糸が交わるところが平織より少ないため、生地は平織よりしなやかで光沢があり、しわになりにくいと言われます。綿織物ではジーンズやデニムなど、毛織物ではサージやギャバジン、タータンチェックなどがあります。
 
123. 朱子織
朱子織は、経糸か緯糸のいずれかが表面に多く浮き出た織組織になります。サテンとも言います。経緯5本ずつで完全組織になる5枚朱子、8本ずつの8枚朱子、12本ずつの12枚朱子が広く使われています。経緯糸のいずれかを浮かせて組織しているため、平織や綾織よりも柔らかく、表面の光沢に優れています。

<変化組織と特別組織>


124. 変化組織
変化組織は、三原組織のいずれかをベースに変化させた織組織になります。平織の変化組織には、経糸と緯糸が交わる点を縦または横方向に展開する経畝織、緯畝織があります。綾織の変化組織には、右上がりと左上がりの綾線を組み合わせた杉織、綾線を一定間隔ごとに反対方向にした破れ斜文など様々あります。朱子織の変化組織には、経朱子と緯朱子を市松模様に組み合わせて1つの組織にした昼夜織、組織点の上下または左右に新たに組織点を加えた重ね朱子などがあります。
 
125. 特別組織
一重組織で三原組織と変化組織に含まれない組織のことを特別組織と呼びます。蜂巣織、浮き織、模斜織、梨地織などがあります。
 
126. 蜂巣織
経糸は浮き上がった部分と沈んだ部分を菱形または正方形で組織し、織物表面に凹凸を作ることで、蜂の巣状の外観を表します。
 
127. 浮き織
浮き織は、平織の部分と経糸の大きく浮いた部分を市松模様に組み合わせた組織になります。吸水性が良いため、タオルや敷布などに用いられます。または、経糸と緯糸に異なる色糸を使って模様を織るときに、緯糸を地組織と絡ませずに浮かしたままの織物のことを言い、唐織や読谷山花織があります。
 
128. 模紗織
模紗織りは、からみ織に似せた織組織で、経糸と緯糸を数本ずつ交互に浮き上がらせます。夏用服や和服地、カーテンなどに用いられます。
 
129. 梨地織
梨地織は、普通糸を使って組織の浮き沈みで梨の皮のような細かな凹凸を出し、ざらざらした手触り感を出します。綿や毛、フィラメントの加工糸織物に使われます。

<その他の組織>


130. 重ね組織
重ね組織は、表と裏がそれぞれ独自の構造を持つ織組織になります。重ね織、片二重組織、二重組織、三重組織、それ以上の多重組織などに分類されます。厚地織物としてコート地などの服地など、表裏両面織物としてリバーシブル服地や毛布、リボンなど、表裏異色模様織物として風通織や紋織など、立体織物として三次元織物やエアマットレスなどに用いられます。

131. パイル組織
パイル組織は、織物の片面または両面に毛羽(パイル)、輪奈(ループ)を持つ組織になります。経パイル組織と緯パイル組織があり、ともに経または緯二重織の応用で、地組織の経または緯糸の他にパイル糸を用います。経パイル組織はタオル織物(テリークロス)やビロードなど、緯パイル組織は別珍やコーデュロイなどに用いられます。

132. 搦み組織
搦み組織は、2本の経糸で1本~数本の緯糸を挟み込むように捻って交差させる(搦み合わせる、捩り合わせる)ことで、織目のずれ(スリップ)を防ぐ組織でレノとも呼ばれ、特殊な綜絖を使って織ります。緯糸1本ごとに搦み合ったものを紗、緯糸3本以上ごとに経糸が搦み合ったもの(平織と搦み織の組み合わせ)を絽、3本以上の奇数の経糸が搦み合ったものを羅と言います。夏用の着尺地、ワンピース、ブラウス地などに使われます。

133. 紋織物(ジャカード織物)
広義には各織組織の変化や組み合わせで模様を織り出した織物のことですが、精緻な模様を織り出せるジャカード織機の普及とともに、ジャカード織機を使って模様を表現した織物を指すようになりました。ブロケード、ダマスク、錦、金蘭などがあります。現在はコンピューター制御によるジャカード装置で、より複雑な織柄が容易に作れるようになりました。

134. 主な織物
織物は素材(繊維)、糸、組織、加工方法など様々な観点で種別されますが、最も分かりやすいのは素材による分類です。 綿織物、麻織物、毛(ウール)織物、絹織物、長繊維(フィラメント)織物、絹化合繊スパン織物、混紡・交織・混撚織物があります。
 
135. 綿織物
経糸と緯糸に綿糸を用いた織物になります。糸は太番手から細番手まで幅広く使いますが、織りの密度と組織で厚地、中肉地、薄地など様々な生地を作ります。経糸には緯糸よりやや多めの撚りをかけた糸を用いるなど、また綿織物は糸使いによって、織物表目の表情と柄を変えます。

136. 天竺(天竺木綿)
天竺は、同じ綿織物の金巾よりやや厚めの平織綿織物で、Tクロスとも呼ばれます。経20番手51本/2.54cm、緯22番手49本/2.54cmの100本天竺が代表的となります。天竺木綿よりやや薄い綿織物に細布(シーティング)があります。天竺木綿は細布より細糸使いの未晒し糊付け布(グレイシーティング)で、後染めして風呂敷や幟などに使用されます。
 
137. 金巾
金巾は、経糸と緯糸に綿30~40番手単糸を用いた薄地平織物の総称です。経緯糸密度は合計90~140本/2.54cmのもので、織物幅は92cmまたは112cmが一般的です。シャーティングとも言います。白地はシーツ、テーブルクロス、エプロン、ドロンワーク手芸品基布など、無地染は婦人服、裏地などに用いられます。捺染下地(プリント下地、ピー下)としても使われ、更紗などになります。
経緯糸密度130本/2.54cm以上の金巾を精練漂白して糊付けしたものはキャラコと呼ばれます。濃い裏糊を施し、カレンダーと呼ばれる金属製のローラーで織目をつぶして光沢をつけます。
 
138. モスリン
経緯糸に紡績単糸を使用した平または斜文織の柔軟な織物(JIS L 0206)です。綿織物としては、上質な綿単糸を薄地に織り上げた目の粗い平織綿布のことです。下着やエプロン、芯地、シャツ地、服地、シーツなど幅広く用いられ、メリンス、モスとも呼ばれます。
羊毛でも作られるモスリンは梳毛単糸使いの薄地平織物で、晒した無地染、捺染などを施し、柔らかな風合いに仕上げ、着尺やドレス、ブラウスに用いられます。2/2の斜文組織にした綾モスリンもあります。また、スフ糸30番手単糸で織ってモスリン調の規格にしたものは、スフモスリンと呼ばれます。
 
139. ローン
ローンは、麻(リネン)織物を起源とする綿織物です。経緯糸に綿コーマ50~80番手単糸を使って平織にし、麻調の感触になるよう加工されます。ハンカチやブラウス、刺繍基布に用いられます。
 
140. ガーゼ
ガーゼは、甘撚り糸を粗く平織にした柔らかな薄地の綿織物です。晒した後に無糊で仕上げ、肌着やハンカチーフ、各種衛生材料などに使われます。
 
141. オーガンジー
本来は細番手のコーマ糸を使った綿の薄地平織物に透明感のある加工を施したもので、目の透いた硬い手触りが特徴です。近年は絹やポリエステルなど長繊維で同様の風合いに仕上げたものが主流になっています。
 
142. オックスフォード
オックスフォードは、経緯糸を2本ずつ引き揃えて平織にする斜子組織による綿織物です。しなやかでふっくらとし、しわが寄りづらく、通気性、光沢があります。ボタンダウンシャツの定番的生地で、ワイシャツや婦人服などに用いられます。平織と斜子組織を不規則に組み合わせた織物(不規則斜子織)はブッチャーと言い、綿のほか、羊毛やポリエステル加工糸を用いたものも多く、夏の婦人用タウンウェアなどに使われます。
 
143. ブロード
ブロードは、経糸密度を緯糸密度の1.5~2倍程度にして横方向に細かい畝を表した綿の薄地平織物を言います。加工によって絹のような光沢やしなやかさを持たせます。似た綿織物のポプリンがコーマ糸30~50番手の単糸を使った単糸織物であるのに対して、ブロードは同60番手以上を使った双糸織物である点が異なると言われます。
 
144. ポプリン
もともとは経糸に絹紡糸、緯糸に梳毛糸を使った交織織物として法衣に用いられていましたが、現在は綿の平織物が多く、精練漂白、マーセライズ加工によって絹のような光沢になります。経糸密度が緯糸密度の1.5~2倍と高いため緯糸方向に小さな畝が現れるのが特徴です。畝が強く現れたものはタッサーと言います。
 
145. シャンブレー
シャンブレーは、経糸に先染糸、緯糸に同程度の太さの晒糸または異なる色糸を使い、外観が霜降り調の綿平織物で、絹や合繊長繊維糸を使ったものもあります。外光の角度や見る方向によって色が微妙に変わって見える様(シャンブレー効果)が玉虫の羽に似ていることから玉虫効果とも言います。イリディセント、シャンジャンなどと同義語です。婦人・子供服、ブラウス、シャツなどに使われます。
 
146. ギンガム
ギンガムは、綿の先染糸または先晒糸を使った格子柄または縦縞柄の平織物です。縦縞のギンガムはストライプギンガムと呼び分けることがあります。綿20番手以上を20ギンガム、30番手以上を30ギンガム、40番手以上を使った高級品はゼファーと呼びます。カジュアルシャツ、ブラウス、子供服、パジャマなどに用いられ、兵庫県の西脇地区が産地となります。
 
147. シアーサッカー
シアーサッカーは、収縮率の異なる経糸を交互に配列することで、平らな部分とたるんだ分が凹凸になり、線状に交互に配置された布面にします。平織と緯畝織をストライプ状に組み合わせた変化組織で凹凸を生むこともあります。この効果をしじらと言うことから、しじら織とも呼ばれます。しわになりにくいため、夏用のカジュアルウェアや子供服、パジャマなどに使われます。
 
148. 綿クレープ
綿クレープは、表面にさざ波のような凹凸=しぼを出した薄手の平織物です。撚りの強い糸が解ける性質を利用してしぼを生みます。生地はシャリ感があり、肌に密着しないためさらさらとした触感になります。日本ではクレープの一種として縮緬、縮とも呼ばれます。広幅生地としては夏肌着、スリップ、ブラウス、ワンピースなど、小幅生地は着尺や兵児帯などに使われます。
 
149. ボイル
ボイルは、経糸、緯糸に強撚糸を使った透かし目のある薄地平織物です。様々な繊維の糸で作られますが、通常は綿織物のことを指します。経糸と緯糸に双糸を使ったものを双糸ボイルまたは本ボイル、経糸に双糸、緯糸に単糸を使ったものを半ボイル、経糸と緯糸に単糸を使ったものを単糸ボイルと言います。通気性が良く、腰があってさらっとした感触があり、夏向きの婦人・子供服、シャツ、ブラウスなどに用います。
 
150. ネル
ネルは、毛織物のフランネルを略してネルと言います。綿織物の場合は綿平織、または1/2、2/2斜文組織の起毛織物を指します。製織後に精練漂白し、片面または両面に起毛し、主に中着や下着に使われます。
 
151. ジーンズ
現在はデニム織物を使ったカジュアルウェアや作業着のことをジーンズと言いますが、本来は2/1斜文組織の細綾織物のことで、フランス語のセルジュ・ドゥ・ニーム(ニーム地方の綾織)に由来し、これがデ・ニームと略され、やがてデニムとなりました。イタリアのジェノバ港からデニムが輸出される際、Genovaがフランス語でGenesと記され、これがアメリカでJeansと呼ばれ作業着として普及しました。日本では仁と呼ばれました。
 
152. ドリル
ドリルは、経緯糸に綿20番手以下の太い単糸を使った三つ綾か四つ綾の中厚地の斜文織物の総称です。日本では太綾と言い、三つ綾の白地または無地染を雲斎と呼び、足袋の底地などに使われています。杢糸を使った雲斎は、小倉と言います。四つ綾は葛城と呼ばれ、雲斎よりも経密度が高く、斜文線が急になっています。葛城の双糸使いは、米軍の軍服地に使われているウェストポイントであり、チノとも呼ばれます。
 
153. デニム
色糸を使ったドリルをデニムと言います。経糸にインディゴ(天然藍、現在は合成染料がほとんど)による先染の綿単糸、緯糸に先晒綿単糸を用いた三つ綾か四つ綾の厚地織物です。経糸は染料が糸の内部にまで浸透しないように染められ、経年変化により染まっていない白い部分が現れる縦落ちが持ち味になります。1平方ヤード(約0.84㎡)当たりの重さ=オンスで生地の厚みが示され、例えば14オンスだと重めで厚手、7オンスだと軽めで薄手になる。使い古し感を出すためストーンウォッシュやブリーチなど様々な加工が施されるほか、ストレッチデニムなど履きやすい生地も作られています。
 
154. ギャバジン
ギャバジンは、綿またはウールで作られた、角度が急な綾線のある緻密で丈夫な斜文織物です。綿ギャバジンは経緯糸に綿30~40番手双糸、または綿20番手単糸を用い、経糸の密度は緯糸の2倍以上あるため綾線が急角度になり、コートやスーツ、ズボンなどに使われます。「バーバリー」はバーバリー社の綿ギャバジンの登録商標で、防水通気性の高いトレンチコートで有名です。
 
155. チノ
チノは、厚地の綿斜文織物の1つです。第一次大戦時にフィリピン駐留米軍が中国(China)から購入したことからChinoと呼ばれるようになりました。経緯糸にコーマ糸の20~24番手双糸を使って2/1、3/1の斜文組織にし、カーキ色やベージュ色に染めます。寸法安定性が高く、絹風合いで強靭な生地で、作業服やユニフォーム、カジュアルウェアなどに使われます。チノ製品はチノパンツ、チノーズ、チノクロスなどと言われます。
 
156. コーデュロイ
コーデュロイは、毛羽が縦方向の畝状になっている緯パイル綿織物で、コール天とも言います。製織後に緯糸の間に打ち込んだパイル緯糸(毛緯)の浮いた部分(輪奈)を切ると、その部分がパイル(毛羽)の畝になります。この畝をウェールと言い、ウェール幅は2.54cm間の畝数で表します。4畝以下を鬼コール、5~6畝を太コール、8~10畝を中コール、14~18畝を細コール、20畝以上を極細コールまたはピンコール、微塵コールと言います。幅の異なるウェールを組み合わせた親子コールもあり、遠州の天竜社が産地となります。
 
157. 別珍
別珍は、緯糸でパイル(毛羽)を作る綿のカットパイル織物ですが、コーデュロイと違って生地全面に均一にパイルがあります。ヴェルベッティーン、綿ビロード、唐天とも言います。地組織が平織で、カットパイルの毛足が一面に揃って地が厚い平別珍、地組織もパイル組織も斜文組織で毛羽が密な綾別珍などがあります。
 
158. ピケ
ピケは、経二重織で緯畝を表した織物です。細い糸の表地を太い糸の裏地が引っ張ることで、表地が浮き上がって横方向に畝ができます。緯芯糸を入れて畝の高さを変えられます。一方、緯二重織で縦方向の畝を作るのがベッドフォードコード織になります。緯二重織のほうが作りやすいため、近年はこちらがピケと呼ばれています。コードレーンはベッドフォードコードの商標で、経糸に細い先染糸と太い先晒糸を交互に配置し、緯糸に先晒糸を使って平織にした縦方向に畝がある織物のことを指します。
 
159. ウール織物
ウール織物は、梳毛織物(ウーステッド織物)と紡毛織物(ウーレン織物)に大別されます。梳毛は紡毛よりも長く細く滑らかなことから、スーツ地によく用いられ、紡毛は梳毛よりも短く太く温かいことから、ツイードやコート地に用いられます。
 
160. サージ
サージは、梳毛織物の代名詞的な生地で、綾目が45度の角度で現れる2/2の斜文組織が象徴的です。表面の毛羽をなくしたクリア仕上げの生地で、スーツやコート、学生服などに使われます。
 
161. ギャバジン
サージよりも緻密に織られているため、滑らかで光沢があり、綾目の角度が急勾配なのが特徴です。コートやスーツ、ズボン、ユニフォームなどに使われます。
 
162. ヘリンボーン
ヘリンボーンは、サージの変化組織になります。右上がりの右綾と左上がりの左綾を交互に組み合わせたV字型の綾目が特徴です。左右綾の組み合わせにより、変形しづらく、着るほどに身体に馴染むと言われます。天然繊維でも合成繊維でも織られていますが、梳毛、紡毛織物が多く、紳士・婦人のジャケットやコートなどに使われています。ヘリンボーンは「ニシンの骨」の意で、日本では杉綾とも言います。
 
163. トロピカル
トロピカルは、経緯糸に梳毛糸を使い、密度をやや粗くした薄地の平織物です。製織後に反染めし、クリア仕上げで毛羽を取理、布面は平らでさらっとした手触り、通気性が良いと言われます。細番手糸を用いた薄地を細トロ、比較的太番手を使ったやや厚地を太トロと言います。近年は混紡や交織生地も多く、夏の紳士服、学生服など幅広く使われています。
 
164. ポーラ
ポーラは、強撚の細い糸と太い飾り糸、細い押さえ糸の3本からなるポーラ糸を経緯糸に使った平織の梳毛織物です。英国ではフレスコと呼ばれ、経糸に順撚りと逆撚りのポーラ糸、緯糸にも順撚りと逆撚りのポーラ糸を用います。さらっとした手触りで通気性が良く、縮のような風合いを持ちます。杢糸を使った霜降りタイプも多く、夏向けの紳士服、婦人服などに使われます。
 
165. ドスキン
ドスキンは、5枚または8枚朱子組織の高級厚地梳毛織物です。緻密な織目により柔らかな手触りと穏やかな光沢があり、牡鹿(ドウ、doe)の毛皮(skin)に似た外観を持つことからドスキン(doeskin)と呼ばれます。製織後に縮絨して起毛した後、剪毛しプレス仕上げします。フォーマルウェアやコート、スーツなどに使われます。
 
166. モスリン
綿織物のモスリン(137)に併記。
 
167. バラシア
バラシアは、畝織、斜文織、斜子織などの変化組織で細かな菱形の模様を浮き出させた梳毛織物です。右綾と左綾の2つの綾目になっているのが特徴です。経糸に絹糸、緯糸に梳毛糸を使った交織も行われています。礼服や高級スーツなどに使われ、中肉地はズボンなどに用いられます。
 
168. シャークスキン
シャークスキンは、コントラストの強い2種類以上の色糸でジグザグ状の斜め縞を表現した梳毛織物です。経緯糸ともに濃色と白色を撚り合わせた杢糸と濃色の無地糸を交互に配列して2/2斜文組織にし、布面を剪毛します。現れた左上がりの模様が鮫肌に似ていることから、シャークスキンと呼ばれ、紳士・婦人のスーツやドレスなどに使われます。紡毛織物も作られ、婦人コートやジャケットなどに用いられています。
 
169. カルゼ
カルゼは、経糸に霜降りの双糸、緯糸に単糸を使った、くっきりとした急斜文線が特徴の厚手の紡毛織物です。縮絨を十分にしてビーバー仕上げすることで、光沢のある丈夫な生地になります。カルゼの名は、英国の毛織物産地カージー(Kersey)に由来し、英国の軍服に使われるほか、一般にはコートやジャケット、ユニフォームなどに用いられます。
 
170. アムンゼン
アムンゼンは、細かいしぼを梨地組織で表現した薄地の高級梳毛織物です。表面はざらざらした凹凸がありますが、毛織物としては地合いが密で、捺染しやすく、婦人コート地、ドレス、服地、着尺地などに使われます。綿や化学繊維、混紡による製品もあります。
 
171. フランス綾
フランス綾は、かなり急角度な右上がりの幅広い斜文線がはっきりと現れた織物です。ウールの他、綿やポリエステル、ナイロンなど様々な素材で織られ、ファンシーツイルとも言います。ドレスやスーツなどに用いられます。
 
172. ブッチャー
ブッチャーは、平組織と斜子組織を経緯不規則に組み合わせた織物です。布面は凹凸の立体感があり、さらっとした感触で通気性が良く、本来は綿織物で使われていた組織を毛織物に転用し、夏用の婦人タウンウェアや子供服、和服に用いられます。
 
173. フラノ
フラノは、服地を目的として作られたフランネルのことをフラノと言います。経緯糸に紡毛単糸を使い平織または斜文織した後、縮絨、起毛、剪毛してミルド仕上げにします。英ネル、本ネルとも言います。用途は主としてズボン、スポーツウェア、ブレザーなどになります。
 
174. ツイード
ツィードは、太い雑種の羊毛を使った紡毛織物です。本来はスコットランドのツイード川近辺でチェビオット種の羊毛を用いて作られた2/2斜文組織の生地を指します。ほとんどが斜文織または綾織で、製織後に縮絨や起毛をせず、厚地で野趣に富み丈夫と言われます。ハリスツイード、ドニゴールツイード、シェットランドツイードは世界三大ツイードをされ、ジャケット、コート、スカートなどに用いられます。
 
175. ホームスパン
ホームスパンは、太い紡毛糸を使った平織または斜文組織の織物です。Home(家)、Spun(紡ぐ)の名にあるように、もともとは羊毛農家が自家用に紡ぎ、織っていました。カジュアルウェアやスポーツウェア、ジャケット、コートなどに使われます。手紡ぎ・手織りが純正品ですが、機械を使った模倣品も多いと言われます。
 
176. サキソニー
サキソニーは、もともとはドイツのザクセン(英名サキソニー)産のメリノ羊毛を使った紡毛織物です。現在はオーストラリアメリノ羊毛による2/2斜文組織の紡毛織物をメルトン仕上げ(縮絨し、織目を詰めて毛羽で覆う)したものや、類似の梳毛織物も含み、コートやスーツなどに用いられます。
 
177. カシミヤ
カシミヤは、カシミヤ山羊の柔毛によるカシミヤ100%以外に、経糸に梳毛糸双糸、緯糸にカシミヤの紡毛単糸を使った2/2斜文組織の毛織物や、経緯糸に細番手メリノの梳毛双糸を使い3/2緯変化斜文組織にしたカシミヤに似せたものもカシミヤと呼んでいます。後者はカシドスとも言います。
 
178. マットウーステッド
マットウーステッドは、斜子組織の梳毛織物で、マットウースとも言います。無地染が多く、クリア仕上げした柔らかい風合いが特徴で、紳士服などに使われます。
 
179. ベネシアン
ベネシアンは、経糸を緯糸の2倍ぐらい密に織った変化斜文組織の毛織物です。急角度の斜文線を表し、経朱子織物のような光沢があります。スーツ、コート、婦人服などに用いられます。
 
180. オットマン
オットマンは、経畝織で広幅の横畝を表した織物です。本来は経緯糸に絹糸を使った畝織と平織を組み合わせた絹織物でしたが、現在は経糸が絹糸、緯糸が梳毛糸の交織織物や、経緯糸ともに梳毛糸の梳毛織物もあります。用途は婦人服、コート、縁飾りなどに用いられます。
 
181. プラッシュ
プラッシュは、経パイル織物、ビロードの一種です。パイルをカットして長く柔らかい毛羽を表面に出した織物のことで、フラシ天も言います。膝掛け、室内装飾、クッション、椅子張り、ショール、婦人・子供用コート、ケープなどに使われます。
 
182. モケット
モケットは、生地全面に毛羽の立った経二重織物です。経緯糸に綿糸や麻糸を使い、ウールなどの糸をパイル糸として織り込みます。製織後にパイル糸のループをカットして毛羽立てたものを毛切りモケット、ループを残したままのものを輪奈モケット、毛羽とループで模様を表したものを金華山モケットと言います。車両などの座席シート地、ソファやいすの張り地に多く使われます。
 
183. クレバネット
クレバネットは、本来は先染毛織物に防水加工を施したもののことで、英国のクレバネット社の商標になります。急角度の綾目を特徴とし、雨に濡れても水切りが良く、コートなどに用いられます。
 
184. 長繊維織物
長繊維織物は、絹や化合繊繊維からできた長繊維の糸を織ったものを、長繊維(フィラメント)織物と言い、長繊維糸を精練してから織り上げた先練織物と、精練せずに織り上げ、織物になってからセリシンや糊を落とす後練織物に分類されます。取り除かれるセリシンの分量によって生地の触感や外観が変わるため、本練り、7分練り、5分練りなどにより調整します。先練織物も後練織物も糸の段階で撚りをかけられますが、無撚のまま織った後練織物に羽二重や塩瀬、綸子があります。
 
185. タフタ
タフタは、経糸に諸撚りの本練糸、緯糸に片撚りの本練糸を使った高密度な絹の平織物です。ごく細い横畝があり、化学繊維の長繊維糸を使ったものも多く、婦人服、イブニングドレス、ブラウス、裏地などに使われます。
 
186. 羽二重
羽二重は、後練りの薄地絹織物です。経緯糸ともに無撚の生糸を用い、数本を引き揃え、緯糸は湿らせた状態の湿し緯にして平織します。製織後に精練してセリシンを20~30%溶かして減量します。これを平羽二重と言い、斜文組織にしたものは綾羽二重と言います。主な用途は、平羽二重は着尺、裏地、襦袢、ドレス、ブラウス、スカーフ、綾羽二重はブラウス、スカーフ、婦人・子供服などに用いられます。
 
187. デシン
デシンは、クレープデシンを略してデシンと言うことが多く、経糸に無撚糸、緯糸には経糸と同じかやや太めのS撚り、Z撚りの強撚糸を2本交互に打ち込んだ絹平織物です。精練のときにしぼ立てで発現させた細かなしぼが特徴です。現在は化学繊維の長繊維糸で作られたものが多く、ワンピースやブラウスなどに用いられます。
 
188. シャー
シャーは、地薄で軽め、通気性の良い透ける生地です。平織変化組織の斜子織で経緯密度を粗めにして作られ、夏服地や子供服などに使われます。
 
189. ジョーゼット
ジョーゼットは、経緯縮緬と同義となり、経緯糸ともにS撚り、Z撚りの強撚糸を2本ずつ交互に配列し、粗めに織った平織物です。製織後の精練し、しぼ立てを行い、夏用の婦人服、スカーフなどに用いられます。
 
190. ファイユ
ファイユは、細かな横畝のある先染織物です。経糸に無撚糸または甘撚り糸、緯糸に太い中強撚糸を使い、平織で密に織ります。厚手で腰がありますが、しなやかで、婦人コート、ドレス、ブラウス、ストール、帽子などに使われます。
 
191. オーガンジー
オーガンジーは本来、綿を使った織物ですが、絹やポリエステル、レーヨンなどの長繊維織物が増えています。シルクオーガンジーは細い諸撚り糸(オーガンジー織)を経緯に使って粗く織ります。セリシンを一部残して精練し、風合いを与えます。化学繊維のオーガンジーは、経糸が20dtex、緯糸が40dtexのポリエステル長繊維糸を使ったものが一般的となります。合成樹脂で硬さと風合いを整えます。硬さや風合いなどにより、用途は夏用の衣服やフォーマルドレス、カーテン、コサージュなど幅広く使われます。
 
192. シャンタン
シャンタンは、絹紬の1つで、経糸に柞蚕糸(生糸)、緯糸に節のある柞蚕紬糸や玉糸を使い、平織で織った先練織物です。布面に不均整な部分が生まれ、野趣に富む織物になります。現在は合成繊維の糸を使ったものが多く、経糸にポリエステル長繊維糸やその加工糸、緯糸に同スラブ糸を使ったものがあり、ドレスやブラウスなどに用いられます。
 
193. グログラン
グログランは、経糸に細い生糸、緯糸に太い生糸を使った平織物で、横畝が特徴です。畝の幅は、ポプリンやタッサー、ファイユより太く、オットマンや塩瀬より細く、用途は婦人用ドレスやコートなどに使用されます。もともとは絹織物ですが、現在は緯畝組織の綿織物を言うことが多いと言われます。
 
194. ベルベット
ビロードとも言います。布面の全面に短いカットパイル(毛羽)のある経パイル織物です。毛羽はプラッシュよりも短く、1mm以下で、パイル用経糸(毛経糸)でループを作り、ナイフでループを切ってカットパイル(毛羽)にする方法と、経二重織物組織にして、2枚の織物の間を毛経糸がつなぐ形に織り、この中央を切り離して2枚のビロードにする方法があります。本来は地糸、毛経糸ともに絹を用いますが、通常は毛経糸と地組織の経糸のみに絹、緯糸にはレーヨンなどを使います。
 
195. ラメクロス
ラメクロスは、金銀糸を使った織物の総称です。装飾効果を狙ったもので、イブニングドレスやドレッシーな婦人服、ブラウス、縁飾り、カーテンなどに使われます。
 
196. 縮緬
縮緬は、経糸に無撚の生糸、緯糸に経糸と同じか、やや太めのS撚り、Z撚りの強撚糸を基本的には2本ずつ交互に打ち込み、しぼをはっきりと出した平織物になります。強撚糸を1本ずつ打ち込んだものは一越縮緬、4~6本ずつにしたものは鬼縮緬(鶉縮緬)と言います。緯糸にS撚りかZ撚りのどちらかを使ったものは楊柳(楊柳縮緬、片縮緬)になり、経緯糸ともに強撚糸を使ったものは経緯縮緬(ジョーゼット)、強撚糸の代わりに壁糸を使ったものは壁縮緬と言います。現在は各種繊維の長繊維糸を使った縮緬も多く、一般に、和装用を縮緬、洋装用をクレープと呼んでいます。
 
197. シフォン
シフォンは、経緯糸に片撚りの生糸を使い、密度を粗めに織った平織物で、地の透いたしぼ織物になります。シフォンクレープとも言い、精練しないものをシフォンとし、精練したものはニノンと呼ばれます。イブニングドレス、ブラウス、スカーフ、フリル、ベールなどに用いられます。
 
198. 塩瀬
塩瀬は、経糸を密にして太い緯糸を打ち込んだ絹羽二重の1つで、細い横畝を表します。主な用途は羽織、袱紗、染帯地、襟地、ワイシャツ、婦人服、肌着などになります。
 
199. 富士絹
富士絹は、経緯糸に絹紡糸を使った平織物です。無地染や捺染を施されたものや、絹特有の淡黄色を生かしたものもあります。和装の裾回しや襦袢、風呂敷、シャツ、ドレス、子供服などに用いられます。

200. ダマスク
ダマスクは、ジャカード織機で経朱子組織の地に緯朱子組織を加え、生地全面に金銀糸使いで花柄や動物などの紋様を表します。中国から中近東に伝わった錦などがシリアのダマスカスで簡略化され、織られるようになりました。これが中国に逆輸入され、緞子になり、テーブルクロスや室内装飾、カーテンなどに使われています。
 
201. 銘仙
銘仙は、平織による先染めの絹織物ですが、素材は時代とともに多様化しました。縞柄が多かったですが、大正時代に解し織が開発されると様々な絣柄が表現され流行しました。足利、伊勢崎、秩父などが産地となります。
 
202. お召
お召は、お召縮緬とも言われます。縮緬が生糸を織ってから精練するのに対して、お召は生糸を精練し先染めしてから織る先練り・先染めの緻密な平織物です。一般的な縮緬は経糸に撚りをかけませんが、お召は経糸に撚りの強い八丁撚糸、緯糸に縮緬よりも強撚のお召緯を使うことで、縮緬よりしぼを大きくはっきりと表します。適度な腰があり、身体に添うドレープ性も特徴です。織物の最高級品として、きものに用いられています。
 
203. 紬
紬は、真綿から手で紡いだ糸を経緯糸に使い、織り上げた先練織物です。現在は他の繊維を用いたものも作られています。紬糸は節や斑があり、綿織物のような素朴な風合いと絹特有の光沢を生みます。主な用途はきもの、羽織、帯などで、全国の絹織物産地で作られています。

<編 物>


204. 編物
編物は、織物が経糸と緯糸を直角に交差させながら作られる生地であるのに対して、編物(ニットファブリック)は1本の糸で作るループ(編目)を絡ませてできる生地のことです。ニット、メリヤス(莫大小)、ジャージーなどとも呼ばれます。
糸でループを作り、そこに次のループを作って引っ掛け、またループを作ります。この繰り返しで布に仕上げていくことを、編立てと言います。編立てられた生地は織物と比べてゆるやかな組織のため、腰はないですが伸縮性に優れ、しわになりにくいなどの利点があります。
編物の歴史は古代エジプトに遡り、ヨーロッパに渡ってフランスを中心に世界各地に普及浸透しました。多様な編物が生まれましたが、編み方は緯編と経編に大別されます。さらに編機の違いにより、緯編は横編機、丸編機、靴下編機に、経編はトリコット機とラッシェル機に分けられます。

<編物の分類>

編物は編地の作り方によって次のように分類されます。
 
205. ジャージー
ジャージーは、織物のように一定の幅で長く編まれた反物状の編地をジャージー(流し編地)と言います。流し編地は、パーツに裁断(カット)し、縫製(ソーン)して服にします。この方法で作られた服がカットソー(カット・アンド・ソーン)と言います。
 
206. ガーメントレングス
ガーメントレングスとは着丈のことです。1着分を1単位として丸編機や自動横編機で連続的に編んだ生地を言います。各単位の間に捨て糸を入れ、これを抜くと1着分の編地に分離し、分離した編地からパーツを取り出してリンキング(かがり縫い)して1着の服にします。
 
207. 無縫製ニット
無縫製ニットは、ジャージーのように反物状にして裁断・縫製するのではなく、編糸から直接、立体(1着の服)に編立てたものです。島精機製作所の「ホールガーメント」®︎ などがあります。
 
208. 緯編物
緯編物は、編目が横方向に連続してできた生地を緯編地、緯編物と言います。セーターはほとんどがこの編み方で編まれています。棒針を使い、表目と裏目を編みながら生地に仕上げていきます。編幅の横方向の編目の列をコース、縦方向に出る畝状の列をウェールと呼びます。この組み合わせで編目を横方向に編む方法が緯編です。コースとウェールの組み合わせによって、3つの基本組織(平編、ゴム編、パール編の三原組織)があり、さらに変化組織が様々あります。

<基本組織>


209. 平編
平編は、緯編物(シングルニット)の最も基本的な組織で、天竺編、ジャージー編、メリヤス編とも言います。表裏で生地の表情が異なり、表側には縦方向にV字形の編目(表目)、裏側には横方向に畝状の編目(裏目)が現れます。薄手の生地になり、横方向の伸縮性があります。表側にカーリングしやすく、編目が切れると解けていく欠点があります。
 
210. ゴム編
ゴム編は、表目と裏目を交互に編みながら、縦方向に編目を作っていきます。表も裏も同じウェールを組み合わせた組織であり、ダブルニット(ダブルジャージー、両面編、インターロック)の基本組織です。リブ編、畦編とも言います。横方向の伸縮性が高く、Tシャツの襟やセーターの袖口や裾、肌着やタンクトップなどに使われます。裁断しやすく、編み終わりからのみ解けます。
 
211. パール編
パール編は、横方向に編目を連ねていく組織で、1段ごとに表目と裏目を交互に編みます。表も裏も同じコースを組み合わせた組織になり、平編やゴム織より厚みを出せ、縦方向の伸縮性が高いのが特徴です。前立てなどの付属やマフラーなどの小物、子供服やセーターなどに用いられます。ガーター編、両頭編(リンクス・アンド・リンクス)とも言われます。
 

<変化組織>


212. 両面編
両面編はゴム編の変化組織で、緯編の三原組織に加えて四原組織とすることもあります。ゴム編を重ね編みし、表も裏も同じ編目になり、主に肌着に用いられます。
 
213. タック編
タックとは未完成の編目を意味します。編目を編成するときに、前の編目を編針に掛けたまま保持し、次に作った編目と合わせて2本で新しい編目を形成します。編地の用途はセーター、腹巻、ネクタイ、靴下、肌着などです。
 
214. ウェルト編
ウェルト編は、ある部分で針に糸を掛けず、編地の裏に浮かせる編組織です。浮き編とも言います。2種以上の糸を使い、片方の糸で裏面に浮き糸を出すことを交互に行い、柄を表現します。 縦縞、格子柄、幾何学模様などを作ります。
 

<その他の組織>


 
215. 針抜き編
緯編では、編機の特定の針を抜く、または編目を編成できない針を入れて編むことを言います。緯編地は厚地で伸縮性が必要な袖口や裾口に使います。
 
216. 目移し編
目移し編は、針に掛かっている編目(ニードルループ)を隣接する針に移す編み方です。平編の一部のウェールを交互に移し替えて縄状に編んだ組織を縄目編、縄編と言います。
 
217. 添え糸編
添え糸編は、別色糸など異なる2本の糸を同時に編針に給糸して編んだ組織です。表目側に出る糸と裏目側に出る糸でリバーシブル効果などが得られ、プレーティングとも言います。
 
218. パイル編
パイル編は、片面または両面にパイル(毛羽)やループ(輪奈)を持つ編組織や編地の総称です。片面パイルは地糸とパイル糸を添え糸編にし、裏側にパイルを出します。両面パイルは、ループを表裏交互に引き出して両面にパイルを出します。パイルを短くカットしたものをベロア、長いものをボアなどと言います。
 
219. インレイ編
インレイとは、嵌め込み、象嵌などの意で、地糸の編成中に別糸を編地の裏目側に浮き上がらせて挿入します。
 
220. レース編 (アイレット編、バスケット編)
緯編では、タックや目移しなどによって透かし目を編成する編み方です。レース目編、透かし編、透孔編とも言います。アイレット編は、小さな穴状の透かし目を作ります。針と針の間のループを目移しで編成します。パール編の中に平編を籠目状に配置するバスケット編は、パール編の厚みと平編の滑らかな表面、横方向の伸縮性が組み合わさり、形崩れしにくいと言われます。
 
221. インターシャ(配色)
複数の色糸を使って、模様を嵌め込むような編み方です。目取図という設計図に基づいて、配色の切り替え時に地糸と別の色糸をからみ合わせて結合させ、柄を表現します。表と裏の配色が同じになるのが特徴です。幾何学柄が多く、セーター、カーディガン、プルオーバーなどに用いられます。
 

<主な緯編物>

 
222. 鹿の子編
鹿の子編は、平編とタック編の組み合わせで編んでいきます。この組み合わせによって、表鹿の子編、総鹿の子編、並鹿の子編、浮き鹿の子編などバリエーション豊かな編目を作ることができます。表面に凹凸があるので通気性が良く、春夏物の定番的生地としてポロシャツをはじめ、Tシャツやスポーツウェアなどに使われます。
 
223. 片畦編
片畦編は、ゴム編の片面だけにタック組織を編成したものです。表目の畦は膨らみのある玉目、裏目には縦長の畦が現れます。厚手で弾力性に富み、ハーフカーディガン、ロイヤルリブとも言います。
 
224. 両畦編
両畦編は、ゴム編の変化組織で、表裏が同じ編地になり、はっきとした畦が現れます。フルカーディガンとも言います。片畦編よりも厚手で弾力性に富みますが、伸縮性は少ないです。
 
225. ミラノリブ
ミラノリブは、ゴム編の変化組織で、編物としては伸縮性が弱く、布帛のようにしっかりとした編地が特徴です。ジャケットやカーディガンに使われることが多く、組織名はイタリアのミラノで初めて作られたことに由来します。
 
226. ダブルピケ
ダブルピケは、ゴム編に浮き編を組み合わせた変化組織で、ダブルジャージーの一種です。密度の高い編地になり、厚めで目付の大きいスイス式と、編地の幅が広く伸縮性の大きいフランス式があります。織物のピケと外観が似ていることからピケの名がついています。両面編にタック編を応用したものはシングルピケと言います。
 
227. ポンチローマ
ポンチローマは、両面編、平編、タック編を各2コース、計6コースで1完全組織の編地を作るダブルジャージーの一種です。横方向にはあまり伸びないですが、両面編の緻密さとミラノリブの弾力性を兼ね備え、スーツやジャケットなどアウターによく使われます。
 
228. 縄編
縄編は、ケーブル編、チェーン編とも言います。平編の一部のウェールを交互に移し替え(目移し)、縄状に編んだ組織です。セーターに多く使われ、アランセーターやチルデンセーターの縄模様は代表的です。
 
229. 経編物
編目を縦方向に連続して編み上げていくことを経編と言います。ほとんどが長繊維糸使いで、緯編に比べると薄地が多く、伸縮性は緯編と織物の中間ぐらいでしっかりとした生地になります。編目には、ループを交差させて作る目(閉じ目)と、交差させずに開いたままの目(開き目)の2種類があります。これら編目の組み合わせが経編組織であり、3つの基本組織(トリコット編、アトラス編、コード編)があります。
 

<基本組織>

 
230. シングルトリコット編
最も基本的な経編組織で、シングルデンビー編とも言います。1コースごとに経糸を隣の編針に給糸し、2本のウェールに交互に編目を作り、ジグザグに編み上げていきます。閉じ目を多く使い、通常は筬(ガイドバー)が前後左右に動くことで、固定された編針に給糸します。筬1枚で編む場合にシングルトリコット編または1×1トリコット編と言います。ただし、1枚筬で編んだ編地は薄く、伸縮性が大きく解れやすいため、他の筬による他の編み方と組み合わせてしっかりとした編地にします。
 
231. シングルアトラス編
シングルバンダイク編とも言います。1列の経糸を隣の針に開き目でかけて閉じ目にした後、逆方向で同じ回数だけ同じ編み方をします。この繰り返しで表す千鳥状の経編組織をアトラス編と言い、1枚筬で作るものをシングルアトラス編、2枚筬の場合はダブルアトラス編と呼びます。
 
232. シングルコード編
1列の経糸を隣の針を越えて2本先の針にかけて浮き糸にし、最後に閉じ目を作ります。これを左右交互に行う編み方です。2本先にかけるものを1×2コード編、3本先を1×3コード編などと言います。1枚筬で編まれたものはシングルコード編またはプレーンコード編、2枚筬で二重に編まれたものはダブルコード編と呼びます。
 

<変化組織>


233. プレーントリコット編
プレーントリコット編は、2枚筬を使い、前筬と後筬ともにシングルトリコットを編む二重組織です。編目が安定し、表に縦縞、裏に横縞がはっきりと現れ、ダブルデンビー編とも言われます。布団カバーなどに使われます。
 
234. ダブルアトラス編
ダブルアトラス編は、2枚筬で表裏にシングルアトラス編を施した経編組織です。ダブルバンダイク編とも言います。色糸を使うことで菱形や斜め格子などのダイヤ柄を作れることから、ダイヤモンド編とも呼ばれます。
 
235. ハーフトリコット編
トリコットの代表的な編地であり、前筬(表)でトリコット編(デンビー編)、後筬(裏)で1×2コード編を編んだ二重組織になります。トリコット編を後筬で、コード編を前筬で編んだものは逆ハーフトリコット編と言い、織物のようなしっかりとした地合いになります。ハーフトリコット編の変化組織に、サテン編、シャークスキン編、クインズコード編があります。
 
236. 亀甲編
亀甲編は、表がシングルトリコット編、裏がシングルアトラス編の二重組織になります。六角形(亀甲目)のレース模様です。
 
237. チュール編(紗編)
六角の網目がつながっているネットで、チュールネットとも言われます。日本語では亀甲紗と言います。ラッシェル編機で経糸を絡ませて編み上げ、ウェディングドレスやベール、カーテンなどに使われます。
 
238. その他の生地
生地は織る、編む、組む、結ぶ、刺繍する、フェルト化するなど様々な方法で作られています。織物、編物以外の生地について解説します。
 
239. 組物
織物は経糸と緯糸を直角に交錯させますが、組物は糸を斜めに交錯させて生地にしていきます。糸を斜めに交錯させることを「打ち」と言い、組んで打つ作業を意味します。この方法で細長く紐状に組んだものが組紐、生地状に組んだものが狭義の組物です。いずれも組んで打つことで作られていることから、組物と総称され、洋装ではブレードとも呼びます。
組物は特に日本で発達した技術で、主に幅の狭いものや直径の小さなものが作られ、帯や帯締をはじめ、アクセサリーなどにも使われています。近年は炭素繊維を使った組物複合材料が先進材料として注目され、ゴルフのクラブやテニスのラケットなどにも用いられています。
組物に使われる糸は最少で3本となり、1本は他の1本の上に浮き、次の1本に沈むことを繰り返して布になります。平面の生地に組まれたものを平打ち組物、丸い紐状に組まれたものを丸打ち組物などと言います。最もプレーンな平打ち組物は、完全組織をなす組み本数により1本組、2本組などと分けられます。
 
240. 1本組組物
平織組織で作られ、1本組は1間飛び、内記目とも言われます。日本古来の組み方であり、糸がよく締まって硬い組物ができます。
 
241. 2本組組物
2/2斜文組織で作られ、2間飛び、朝鮮目とも言われ、最もポピュラーな組物です。
 
242. 3本組組物
3/3斜文組織で作られ、3間飛びとも言われ、装飾用に用いられます。
 
243. 網代組組物
斜子組織で、2本網代、3本網代などがあります。
 
244. 結合組物
平織組織で、種々の組物を結合した組物であり、組レース、トーションレースとも呼びます。テーブルクロスや衣服の飾りに使われます。
 
245. 網物
糸を結んで結び目を作る技法で作られた生地を網物(結び物)と総称します。船のロープや漁網、装飾用の紐や縄を結ぶ技法として多様に発展してきました。本来は魔除けのためのミサンガもこの結ぶ技法で作られ、現在はファッションアクセサリーとして使われています。
結び目のことをノットと言い、基本結びとしてシンプルノット、スリップノット、ラックスヘッドノット、スクエアノット(平結び)、クローブヒッチ(ねじれ平結び)、ウイーヴァズノット(機結び)、フィッシュネットノット(フィレ結び)、ダブルシンプルノットがあります。これら基本結びとねじれの組み合わせで、網物が作られています。
最も基本的な平結びでは七宝結び、しゃこ結び、ピコット結び、ねじれ平結びでは巻結び、チェーン結び、ラックスヘッド結びではタッチング結び、あわじ結び(花結び)、平結びとねじれ平結びの組み合わせではマクラメ(房結び)、フィレ結びでは漁網結びがあります。
 
246. レース
レースの起源は紀元前の狩猟時代に遡るとされます。14~16世紀に白地白糸刺繍が発展し、より透けたレースが追求され、今日のような装飾性の高いものになったのは1540年頃と言われます。以降、ヨーロッパを中心に各地の文化や流行とも呼応しながら様々なレースが生み出されてきました。
レースは日本産業規格に「糸をより合わせ、組み合わせ、結び、編み合わせ、又は生地にししゅうするなどして作った透孔のある布地及びこれに類する布地の総称」(JIS L0214-1983)と説明されています。つまり、よくレース編と言われますが、実際には他の生地の特徴を自在に取り込み、糸を駆使して作られる透かし目を持った生地になります。作る主体では手工レース(アンティークレース)と機械レースに大別され、加工方法では織り、編み、組み、結び、撚り(糸)、刺繍の各レースに分類されます。
 

<手工レース>


247. ニードルポイントレース
針と糸だけで刺繍を施す技法で、ニードルレースとも言います。もともとは基布を使わず糸だけで作るプント・イン・アリアのことでしたが、刺繍レースも含みます。オープンワークのカットワークやドロンワーク、刺繍の技法を使って透かし模様を作っていき、最後に布部分をカットして糸部分だけを残します。ベネチアが発祥とされ、日本には唐時代の中国から伝わりました。このレースは唐招提寺に所蔵され国宝に指定されており、世界最古のニードルレースと言われています。
ニードルポイントレースの基礎となったのがオープンワークです。カットワークは、生地に刺繍を施した後、刺繍の輪郭部分を残した中を切り抜いて透かし模様を作ります。あるいは切り抜いた柄の周辺を糸でかがる技法で、切り抜き刺繍とも言います。ドロンワークは、生地の経糸や緯糸を抜き取り、残った糸を束ねたり、かがったりして透かし模様を作る技法で、抜きかがり刺繍とも言います。
 
248. ボビンレース
ボビンレースは、織の技法を使ったレースです。織台(枕台)に固定した型紙の模様に沿ってピンを打ち、いくつものボビンに巻き付けた糸を経糸、緯糸としてピンに交差させながら、平織、綾織、重ね綾織で様々な模様を織っていきます。枕台を使うことからピローレースとも呼ばれます。職人の熟練と膨大な製作時間を要するレースであるため、中世ヨーロッパではニードルポイントレースと並んで「糸の宝石」とされ、富や権力の象徴となりました。
糸を切らずに作る連続糸レースと、糸を切りながら作る切断糸(不連続糸)レースがあります。前者にはトーション、チュール、ギュビール、ロシアンなど、後者にはブルージュ、デュシェス、ホニトンなどがあり、織られる地域によって模様や糸に特徴があります。現在は機械レースによる生産が主流になっています。
 

<機械レース>


249. エンブロイダリーレース
大型のエンブロイダリーレース機で刺繍加工を施したレースの総称で、刺繍レースのことも指します。編レースよりも様々なデザイン表現ができ、特殊加工も可能です。チュール生地に刺繍を施すチュールレース、水に溶ける性質の基布に刺繍した後に基布を溶かして刺繍糸のみを残すケミカルレース、生地全面に刺繍や透かしの連続模様を施すオールオーバーレースなどがあります。
 
250. リバーレース
細い糸を撚り合わせることで、複雑で緻密、優美なレースを作り出します。機械で作られる最高級レースで、「レースの王様」と称されています。その歴史は、熟練の技術と膨大な時間を要するボビンレースが機械化(1808年)されたことに始まります。このボビネット機をベースに、ジャカード装置を応用して複雑な模様を表現できるようにしたのが、1813年に発明されたリバーレース機になります。機械レースの中でも使用できる糸の種類や本数(約1万本)が非常に多く、職人の技術を要し、低速で編むため生産性が低いことから、最も高価なレースになっています。
 
251. ラッシェルレース
糸を編んで作るレースになります。リバーレースを安価に作ることを目的に開発された経編のラッシェル機で作られます。編地は他の編機よりも薄く平らに仕上がり、使う糸はリバーレースの半分ほどの約5000本ですが、エンブロイダリーレースやトーションレースよりも多くなります。高速で編め、大量生産できるため比較的安価に入手できます。ラッシェルレースは2タイプに大別されます。ジャカトロニックはハイゲージ、多枚筬のラッシェル機で繊細な模様を表現し、リバーレースに近い高級感を醸します。ラッシェルリバーとも呼ばれ、テキストロニックは柄糸を浮かせたラッシェルレースで、落下板ラッシェルレースとも言います。
 
252. トーションレース
機械レースのトーションレースは、糸を組んで作る細幅のレースになります。中世の王侯・貴族が襟や袖飾りに使い着飾ったボビンレースを、組レース機の一種であるトーションレース機で組み上げたもので、ボビンを回転させながらジャガード装置によって柄を出します。
 

<加工方法によるレースの分類>


 
253. 織レース
織レースは、オープンワーク、ブロケード、ゴーズに大別でき、ブロケードは色糸や金銀糸による豪華な紋織物になります。綾織や朱子織の地組織に別糸の緯糸でパターンを織り出していき、特殊組織の蜂巣織や浮き織、模紗織(モックレノ)で作ることができます。ゴーズは紗織、絽織、羅織のことで、織物の搦み組織の項を参照し、オープンワークはニードルポイントレースの項を参照してください。
 
254. 編レース
目移しによって透き間を作る緯編生地を編レース(透孔編)と言います。平編に目移しを加えたメッシュ柄、蜂巣状バスケット柄、アイレット柄などがあります。ゴム編に目移しを加えたリブアイレットなどもあり、クロッシェレースは、かぎ針(仏語でクロッシェ)を使って鎖編や縞編、長編によって糸を編み上げます。アイリッシュ・クロッシェレースは、ニードルポイントレースを模した高度な技術を用いたレースとして知られています。
 
255. 組レース
組レースは、トーションレース、ボビンレースなどがあります。
 
256. 結びレース
フィレレースは、漁網に使う結び方で四角い網(ネット)を作った生地で、網針と目板を使って糸を網状につなぎながら、糸を交差させて模様を埋めていきます。タティングレースは、シャトルと呼ばれる舟形の小さな糸巻きを使い、結び目を作って糸と生地を結び付ける技法で、そのように作られたレースのことで、タッチングレース、シャトルレースとも言います。マクラメレースは、糸や紐を房結びで結び合わせて作るレースで、房結びには巻き結びや七宝結びなどが用いられ、幾何学など装飾的な模様を表すことができます。
 
257. 撚りレース
リバーレース、チュールレース、ニードルポイントレース、エンブロイダリーレースの項を参照となります。
 
258. 不織布
不織布とは読んで字のごとく、織らない布になります。織ったり、編んだりして作られた布に対し、不織布は繊維の性質を利用して機械的、化学的に溶かして固めたり、絡ませたり、接着させるなどの方法で目的に応じて成形されます。素材には天然繊維も化合繊繊維も使われ、抗菌・防臭、吸水性など様々な機能も付与することができます。芯地やブラジャーカップ、肩パッド、マスク、ガーゼ、紙おむつなど用途は多様になります。
 
259. 不織布の製法
不織布はフェルトの代用品として1900年に開発され、第二次大戦後に量産できるようになりました。ウェブと呼ばれる繊維のシートを作り、これを様々な方法で接着し、成形していきます。不織布は長繊維不織布と短繊維不織布に大別され、それぞれに様々な製法があります。
 

<シートの形成方法>


260. 乾式法……短繊維をカード機ですいて、空気流で一定方向またはランダムに並べてシートを形成します。
261. 湿式法……短繊維を水中に分散し、ネット状にすき上げてシートを形成します。
262. スパンボンド法……原料樹脂を溶融紡糸した長繊維を集積してシートを形成します。
263. メルトブローン法……原料樹脂を溶融して紡糸ノズルの周囲から高温エアを噴射し、繊維を細くしてシートにします。
 

<シートの結合方法>


264. サーマルボンド法……シートの中に熱接着繊維を入れ、熱風などの方法で溶融して繊維間を接着させます。
265. ニードルパンチ……かぎ針を上下させて繊維同士を絡め、シートを形成します。
266. ケミカルボンド……シートに接着樹脂をスプレーや含浸などの方法で付着させ、乾燥させます。
267. スパンレース……シートに高圧の水流を噴射し、繊維間を交絡させてシートを形成します。
 
268. フェルト
不織布は天然・合繊の短繊維や長繊維から作られますが、フェルトは羊毛や獣毛繊維のスケールが引き起こす縮絨性を生かして作られます。縮絨性とは、羊毛繊維に水や洗剤、アルカリ、熱、圧力を与えることで繊維同士が絡まり合い、密度を増す一方、容積を減らして密な組織になる性質のことを指します。この製法で毛繊維を布状にしたものがフェルトで、不織布の原型となります。近年は紡毛織物で作られるフェルトもあるため、これを織フェルトとし、毛繊維によるものは圧縮フェルトとも呼んでいます。

269. 複合布
複合布とは、日本産業規格(JIS)では「接着芯地を織物、編物及び不織布に接着して作られた衣料用接着布」と定義しています。
 
270. 接着布
2枚またはそれ以上の生地を張り合わせて1枚にした複合布のことです。寸法安定性や保型性の改善、保温性の向上などの機能、リバーシブル効果や表裏の色のミックス効果などのデザインを重視して作られ、接着剤や加圧、融着によって張り合わせます。
 
271. キルティング
2枚の布の間に詰め綿を入れ、ステッチ(指縫い)で一体化させた複合布を指します。ステッチは詰め綿がずれるのを防ぎ、模様として生地を装飾することもあります。もともとはエジプトやロシア、中国で防寒用衣料や敷物として作られ、十字軍の遠征で西欧に伝わってから装飾用途で広まりキルトとも言います。
 
272. タフティング
パイル(輪奈)を基布に植え付けることを言います。タフティング機で生地に糸をミシン縫いの上糸のように縫い込んでいき、カーペットやブランケットなどに用いられます。
 
273. ラミネート
生地の表面に別素材を張り合わせた複合布で、接着剤で張り合わせる、合成樹脂で融着する、フィルムを加熱して接着するといった方法があります。防水性に優れ、汚れがつきにくく、しわになりにくいなどの利点があります。
 
274. 皮革
皮は皮革(レザー)と毛皮(ファー)に大別されます。皮革には、動物の皮を剥いでシート状にした天然皮革と、人間が化学的に作り出した人工皮革があります。
 
275. 天然皮革
動物の皮は表皮(表面層)と真皮(内面層)からなり、表皮を取り除いた後、真皮に腐敗を防止する処理を施し、製品に使用できるようにします。この工程をなめし(鞣し)と言います。なめしをする前を皮、なめしをした後を革と区別しています。
真皮は数ミクロンから数十ミクロンのコラーゲン繊維が緻密に絡み合った乳頭層と、より太く硬い繊維がゆるやかに絡み合った網状層からなり、乳頭層の表面を銀面と呼び、この光沢や硬軟などが革の価値に大きく影響します。網状層は床面(床皮)と呼ばれます。
天然皮革は動物の種類や仕上げなどによって分類されます。
 

<動物の種類による分類>


276. 牛革
牛革は、革製品に最も利用されている皮革であり、カーフは生後6カ月以内の仔牛の革で、毛穴が小さくきめ細かく柔らかく、高級革製品に使われます。キップは生後6カ月~2年の牛の革で、カーフより滑らかではないが厚く強度があり、汎用性の高い高級素材になります。ステアハイドは生後3カ月~6カ月で去勢され、生後2年以上が経過した牡牛の革で、最も多く流通しています。カウハイドは出産を経験した牝牛の革で、キップとステアハイドの中間的な性質を持ちます。
 
277. 豚革
ピッグスキンとも呼ばれ、飼育から製品化まで日本国内で一貫して行える唯一の皮革です。3つの連続した毛穴が特徴で、薄く、通気性が良く、摩擦に強いと言われます。
 
278. 馬革
馬革の総称としてホースレザーとも呼ばれ、牛革より薄く軽く柔らかく、手に馴染みやすい皮革です。臀部の皮のみを使ったコードバンは水も空気も通さないとされるほど繊維密度が高く、強度に優れ、光沢も美しいことから、高級素材として使われています。
 
279. 鹿革
牛革に比べ軽く、滑らかで、吸湿性と通気性に優れ、「レザーのカシミヤ」と言われますが、柔らかいため傷つきやすい側面もあり、牡鹿の革はバックスキン、牝鹿の革はディアスキンと言います。また、植物油でなめしたものはセーム革と呼ばれ、水洗いが可能となります。
 
280. 山羊革
表面に細かなしぼがあるのが特徴です。薄く柔らかいが、繊維密度が高いため強度があります。大人の山羊革をゴートスキンと言い、山羊革と言えば一般にこれを指します。子山羊の革をキッドスキンと呼び、ゴートスキンよりもきめが細かく柔らかで、高級素材とされています。
 
281. 羊革
他の皮革と比べ強度や対摩耗性は低いが、皮革の中で特にきめが細かく滑らかで、高級とされるものは、革とは思えないほどの柔らかさが絹にも例えられます。羊革の最高級品とされるのが生後半年未満の仔羊からとれたベビーラムスキンとなります。生後まもなく命を落とすケースが多いことから、その皮を使用します。生後1年未満の仔羊の革はラムスキンと言い、しっとりとした滑らかさが特徴です。生後1年を超えた大人の羊の革はシープスキンと呼ばれます。羊革は一般に、熱帯地域を原産とする直毛で毛足の短いヘアシープの皮を使い、寒冷地に棲息する巻毛の羊はウールシープと呼ばれ、主に羊毛をとるほか、羊毛を残したまま皮をなめし、毛皮としてムートンに使用されます。
 
282. ダチョウ革
オーストリッチと呼ばれ、鳥類では唯一、量産可能な皮革で、ワニ革と並ぶ高級素材となります。最大の特徴はクイルマークと呼ばれる、羽根が生えていた毛穴の跡になります。ダチョウの身体の約40%の部位からしかとれなく、柔軟性に富み、皮革の中ではトップクラスの丈夫さを持ちます。
 
283. 爬虫類革
エキゾチックレザーとも言われ、クロコダイル(ワニ革)、パイソン(ヘビ革)、リザード(トカゲ革)などの爬虫類に加え、オーストリッチ(ダチョウ革)、シャーク(サメ革)、エレファント(ゾウ革)など希少性の高い模様の皮革を含めた総称となります。乱獲の防止や環境保護などの観点から、ワシントン条約のもと取引されています。
 

<仕上げによる分類>


284. 銀付革
銀面(表面)の表情を生かして染料仕上げをした革になります。
 
285. ガラス張り革
乾燥工程で革をガラス板に張り付けて乾燥させ、銀面をサンドペーパーで削り(バフィング)、合成樹脂を塗って仕上げた革になります。
 
286. スエード革
革の裏面をサンドペーパーで毛羽立てて仕上げた革のことで、主に豚皮が使われ、高級品はシルキースエードと呼ばれます。
 
287. バックスキン革
牡鹿の皮の銀面を取り除いて毛羽立てた革のことで、バックスキンのバックは裏側ではなく、牡鹿の意となり、スエードと混同しないよう要注意です。
 
288. ヌバック革
鹿の皮の銀面をサンドペーパーで毛羽立てた革のことで、現在は起毛した革全般を指し、牛皮が主に使われています。
 
289. エナメル革
表面にウレタンなどの合成樹脂でコーティング(エナメル加工)を施し、光沢や耐久性を持たせた革のことで、パテントレザーとも言われます。
 
290. 床革
革を用途に応じた厚みに漉かれた床面を素材として加工した革で、漉くとは、革を水平にスライスすることです。
 
291. 型押し革
表面に模様を型押しした革のことで、エンボスレザーとも言います。凹凸に模様などを刻印した金属板を使い、熱と圧力で革に模様をつけます。
 
292. ベロア革
大判の牛革の床面を起毛させた革のことで、スエードよりも毛足が長く、そのため光沢にも深みがあります。
 
293. ヌメ革
植物性タンニンでなめした、染色や塗装などの表面加工を施していない革のことで、牛革にすることが一般的ですが、それ以外の動物革にもヌメ革があります。
 
294. 防水革・撥水革
製造工程でフッ素系などの薬品を使って吸水防止や撥水の効果を付与した革のことです。
 
295. 人工皮革
人工皮革は天然皮革に似せて作られたものであり、しばしば合成皮革と同義で語られるが両者は生地作りのベースとなる素材が異なります。家庭用品品質表示法では、人工皮革は「基材に特殊不織布を用いたもの」、合成皮革は「基材に特殊不織布以外のものを用いたもの」とされています。合成皮革のほうが早く開発され、人工皮革はより天然皮革らしく、さらに天然皮革を超えるものを目指して呼び方も変えています。
具体的には、合成皮革は織物や編物の生地をベースに、樹脂をコーティングしたり張り合わせたりして、表面に天然皮革に似せたしわをつけるなどして作られます。一方、人工皮革は天然皮革のコラーゲン層に相当する部分に、超極細のナイロンやポリエステルの繊維を絡み合わせ、ポリウレタン樹脂を浸み込ませた不織布層を組成し、その表面を主にポリウレタン樹脂でコーティングし加工することで天然皮革を再現しています。
日本で初めて人工皮革を事業化したのはクラレで、1964年に「クラリーノ」を発売し、以降、東レの「エクセーヌ」、旭化成(現旭化成せんい)の「ラムース」、カネボウの「ベルセイム」などが開発されました。
 
296. 毛皮(ファー)
毛皮とはその名が表す通り、毛と皮からできており、毛が付いた状態でなめした動物の皮のことを言います。毛は刺し毛(ヘア)と綿毛(ウール)で構成されています。刺し毛は英語ではガードヘアと言われ、綿毛より長く、弾力性や耐水性などで身体を守り、様々な色彩や斑紋が動物ごとの特徴となっています。綿毛は刺し毛に沿って生えている短く柔らかい毛で、これが密生することで体温の発散を防ぎ、防寒の役割をしています。この綿毛が密で長いものは高級とされます。
 

<天然毛皮の種類>


世界三大毛皮とされるのが、セーブル、チンチラ、リンクスになります。
 
297. セーブル
ミンク類の動物で、黒貂とも呼ばれます。ロシア、中国北部、北海道などに生息し、一般的にはロシア産を指します。色は黒褐色から黄褐色まで様々あり、毛足はやや長くとても柔らかで、保温力に優れ、光沢があり、軽く、毛皮の最高級素材の1つになります。
 
298. チンチラ
刺し毛が退化し、とても滑らかで柔らかい綿毛のみで構成され、毛の密度も非常に高く、色は、背は濃青淡青、腹部は青灰になります。皮は軽いが極めて薄く、耐久性が低いため、取り扱いには注意が必要です。アンデス山脈に生息していましたが、現在、毛皮用はすべて養殖種になります。
 
299. リンクス
野生ネコの一種で、日本ではオオヤマネコと呼ばれます。北米、モンゴル、ロシアに生息し、毛は長く密で非常に柔らかく、背が淡い褐色に暗褐色の斑点模様があるのが特徴です。腹部は白く、暗褐色の斑点が鮮明にあり、とくに腹部が美しく、重用されています。
 
300. 毛の長さによって主な動物の毛皮の特徴
<長毛>
・ミンク……光沢、ブルー、茶
・フォックス(キツネ)……白、淡黄色
・ゴート(ヤギ)……白、淡黄色
<中毛>
・セーブル(テン)……しなやか
<短毛>
・アストラカン……巻き毛、黒、茶、グレー
・チンチラ……光沢、ブルー、グレー
・レオパード(ヒョウ)……絹光沢
・ビーバー……光沢ある刺し毛、柔らかい綿毛
・ファーシル(オットセイ)……銀、ネズミ色
 
これら毛皮を製品化する際には様々な加工が施されております。
染色、プリント、ブリーチ(脱色)、刈毛(シェアード)、抜毛(プラッキング:刺し毛のみを抜く)、型押し(皮面に)、パンチング(連続穴を空ける)、ツイスト(巻いて紐状にする)、ニッティング(毛皮とニットを編み込む)、皮面加工(ダブルフェース:皮面を加工して表面に使えるようにする)、グルービング(毛面に溝模様を作る)などがあります。
 
301. 人工毛皮(フェイクファー)
天然毛皮(リアルファー)を模して作られたものを人工毛皮(フェイクファー)と言います。近年は動物愛護や環境保護の観点から、フェイクファーをエコファーと呼び変えるようになってきています。
人工毛皮はパイル織やパイル編で作られ、ループパイルを切って起毛し、毛皮のように加工します。パイル糸はアクリル繊維で作られているため、発色性に優れ、染色やプリントで天然毛皮にはない色や柄を表現することができます。天然毛皮と比べ耐久性があり、お手入れも簡単ですが、ただし熱や湿気に弱いという欠点があります。
 
302. 羽毛
羽毛はグース(ガチョウ)やダック(アヒル)など水鳥の体毛のことです。胸部分の芯のない柔らかな羽毛をダウン、羽根からとれるものをフェザー、翼以外の体毛をスモールフェザーと言います。ダウンはボール状をしていることからダウンボールとも呼ばれ、ダウンを使った製品の価値はこの含有量で決まります。ダウンは絡み合わない性質を持つため、空気を多く含み、保温性に優れています。フェザーは軽く弾力性のあり、かさ高な羽毛で、通気性を持ちます。このような性質から防寒衣料や寝具などの中綿として多く使用されています。動物愛護や自然環境保全へ向け、羽毛のリサイクル活用や人工羽毛の開発も行われています。
 
303. 主な生地産地
ファッションには多様な生地が使用されていますが、その産地は各地に散在しています。アパレル生産は特に1980年代以降、海外生産が急拡大し、国内の産地は疲弊が進みました。しかし得意分野を磨き、世界のラグジュアリーブランドと取引をする企業も存在します。(産地は別途ご案内します)

以上、No.119 〜 303 生地素材の情報となります。

次回は、『生地の染色と仕上げ』について解説します。
2022.11.16.


noteで つながる 皆さまへ
いつもお付き合いをありがとうございます。

人間と同じように、生地にも特性があり
目的に適した仕様を選ぶことが
素材の特性を活かすことになります。

デザイナー、モデリスト、ソーイングプロ
それぞれの業務でも、それが基点となります。

お客さまへ、素材の特性をご案内する・・・
モノに愛着を抱くには、それが初めの一歩ですね。

モノを大切にする日本の文化が
・・・育まれますように願っております。

ファッションクリエイター株式会社  水谷勝範

Webからファッションを創る、それが私たちのプロジェクトです。服作りとはいえ、私たちが大切にしていることは、お互い共存し成長できる社会になることです。皆さまとの出会いを愉しみにしております。水谷勝範