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ファッション衣料の原料と繊維/Fashion Creator note Magazine vol.4

<モデリスト コラム 2>
私の目指すモノ創りは、偏っていると思います。
一言で言えば、
お客さまの納得があり成立するモノ創りです。

昔のオーダーメイドの感覚と同じように
お客さまと繋がるモノ創りです。

それを次世代に伝えるには
いくつかの壁はありますが・・・
何より大切なのは、若者の創造力を高めることです。 

ビジネスで、自然環境を残したいと言っても・・・
それで飯が食えるかと、返されます。
 
確かにお金は必要ですが・・・
 
私たちの行動の先にある
未来を想像することも必要です。
 
みんな、それぞれの価値観がありますから・・・
自分の生き方に納得すれば良いと思います。
 
私は、若者が1点1点・・・
モノを創り出す世界を想像します。
 
そんな想いから、モデリストの育成に挑みます。
デジタルを活用することで ・・・
知識は、短期間で習得できるかもしれませんが
 
モノを創り出す道のりは・・・
20年、30年、人生を歩むような覚悟が必要です。
 
私の考えは、古いと思いますが
モノ創りを通じ、どんな人生にするか・・
 
私が願うのは、
若者が、自分らしい道を創造することです。
 
日本にも素敵なモノ創りの未来が
訪れますよう ・・・ 挑み続けます。
 
それでは前回に続き、今回は原料と繊維について解説します。
読んで面白くなく、覚える資料ではありませんが、
現場作業の中で、情報に結びつくことがあり、
そこから技術・知識・発想が、一気に深まる時がございます。
それだけのことです ・・・ 何か参考になれば幸いです。

*モデリストマガジンでは、アパレル産業全体の情報を分類することが目的で、詳細な構図など記載しておりませんが、モデリストアプリでは目的に応じ有効な情報を選択できる設計にしております。

<以下、前回より続く>

今回ご案内するアパレル産業の情報は、No. 27 ~ 118となります。

<ファッション衣料の原料と繊維>

27. 繊維の組成・形態・性質
アパレル商品は不織布やフェルトを除き、糸の染色から織編され(または織編されてから染めた)生地に仕上がります。その生地をデザイン型紙に合わせ裁断し、縫製することで衣服になります。
いくつもの加工を経て服になりますが、その出発点は繊維になります。繊維は一般に、その組成によって天然繊維と化学繊維、形態によって短繊維と長繊維に分類されます。

28. 天然繊維
天然繊維には、セルロースを主成分とした綿や麻などの植物繊維と、たんぱく質を主成分とした羊毛や絹などの動物繊維があります。これらの繊維を糸にする工程を紡績と言い、絹糸の場合は製糸と呼びます。
 
29. 綿繊維
綿繊維の原料は、綿花から綿実(種子)を取り除いた原綿(実綿、リント)になります。原綿から綿糸を作り(紡績)、この綿糸を織り(織布)、生地(テキスタイル)ができます。
綿繊維の形状はリボン状で、長さ方向に対して天然の撚りを持っています。そのため、紡績しやすく、肌触りも良い感触となります。繊維断面はそら豆のような形が寄り集まっていて、中空道があり、ここに空気や水分が保たれるため、保湿性、保水性があります。

<綿繊維の種類> 

綿繊維は繊維長によって次の3タイプに分けられます。
 
30. 長繊維綿
繊維長は38〜60mm、海島綿は(シーアイランドコットン)、エジプト綿、スーダン綿、ペルー綿など、細くて光沢のある糸を作ることができます。ローン、ボイルなどの綿織物用になります。
 
31. 中繊維綿
繊維長は28mm位まで、アメリカ産出のアップランド綿、ブラジル綿、中国綿などがあり、世界の綿生産量の9割程度を占めます。用途は一般衣料の綿織物、肌着、シーツなどになります。
 
32. 短繊維綿
デシ綿とも言います。繊維長は21mm以下、太番手用糸(ネルや帆布などのほか、布団わた、中入れわた、衛生材料など)に使われます。
日本では17世紀以降に綿栽培が普及したましたが、明治以降は綿糸生産の原料(原綿)を輸入に移行し、そのため各種原綿を混ぜて綿糸を作る混綿の技術が発展しました。
原綿はまず開綿し付着している不純物などを取り除き、コストパフォーマンスの高い差別化された糸を作るため様々な種類の原綿をブレンド(混綿)しシート状にします。この工程を混打綿といいます。
シート状にした混綿(ラップ)をカード(梳綿)機でくしけずり、繊維を1本1本に分離して平行に引き揃え、細かなごみや短い繊維を取り除きます。残った長い繊維を集束して紐状(カードスライバー)にしていきます。さらに短繊維やごみを除去し、引き伸ばしを繰り返して太さを均一にします(練条)。この練条したスライバーを精紡機にかけられる太さにして(粗糸)、さらに精紡機で最終的な太さにしていきます。
 

<麻繊維の種類>

33. 麻繊維麻とはセルロースを主成分とする植物繊維の総称です。綿と同じく中空道を持っていますが、天然の撚りはありません。麻は茎部の靭皮を使って作られる靭皮繊維と、葉や葉脈を利用する葉脈繊維に分類されます。靭皮繊維にはリネン(亜麻)、ラミー(苧麻)、ヘンプ(大麻)など、葉脈繊維にはジュート(黄麻)、マニラ麻(アバカ)、サイザル麻(ヘネケン)、ケナフ(洋麻)などがあります。様々な種類がありますが、日本では家庭用品品質管理法により「麻」と表記できるのは亜麻と苧麻のみで、他は「植物繊維」としています。
 
34. 麻繊維の特性と種類
丈夫で水に濡れると強くなり、吸湿・放湿・放熱性に優れ、清涼感があるため、夏の衣料に向いた素材です。その反面、しわになりやすく、綿と比べて繊維表面が硬い(ヤング率が大きい)ことなどから染めにくく、発色も悪いという短所があります。衣料には主に靭皮繊維が使われ、葉脈繊維は袋類や産業資材(ロープなど)に使われます。
 
35. 亜麻
人類最古の繊維と言われ、古代エジプトではミイラを包む布に使われました。その後、中世ヨーロッパに広まり、様々な生活用品に用いられるようになりました。主に西洋で親しまれ、日本には1874年にもたらされています。繊維が細く短くしなやかで、綿に近い性質を持ち、吸湿性や放湿性に優れています。ポリエステルやスフと混紡して糸を作ることも多く、夏用シャツ地(クレープ肌着)、夏用服地、テーブルクロス、ナプキン、ハンカチ、レース糸、芯地などに使われます。
 
36. 苧麻
東洋で使用されたのが苧麻であり、日本では「からむし」と呼ばれ古くから用いられましたが、栽培から織布までの手間ひまがかかり(生産性が低い)、通気性が良く肌に密着しないため冬場は寒いなどの性質から、江戸時代に綿花栽培が広まると綿に取って代わりました。苧麻の繊維は太く長く、シャリ感と腰があり、白く絹のような光沢があるのが特徴です。夏用座布団地や夏用シャツ地(クレープ肌着)などに使われ、とくに細く質の高い苧麻糸で織られた生地は上布と呼ばれ、夏物の高級和服地として用いられます。越後上布や能登上布、薩摩上布などがあります。

<動物繊維>


37. 動物繊維
その名が示す通り動物から採れる繊維で、たんぱく質を主成分としています。羊毛、獣毛、絹(繭)、羽毛に分類されます。自然環境の変化に対応しながら進化してきた動物の体毛は、弾力性があり、空気を多く含んでいるため保温性にも優れます。このような機能から、身体の保護や防寒などで古くから用いられてきました。油分や動物性たんぱく質を含むため虫に食われやすく、吸水性は低いが、撥水性に富みます。動物繊維は採取量が限られるため、牧羊や養蚕など人間が飼育することで採取量や品質をコントロールしているケースが多いですが、希少種や品質の高いものほど価格は高くなります。高価で売買される種は乱獲が横行し、絶滅に瀕するなど問題となっています。
 
38. 羊毛(ウール)
羊毛の採取は紀元前の中央アジアで始まったとされます。牧羊によって食用の肉、衣料・住居に使う毛を確保するその生活様式は、やがて東南アジアや西欧に広まり、羊の品種改良も進みました。日本には毛織物として安土桃山時代にもたらされ、武将の陣羽織などに用いられました。その後、明治期まで羊の飼育にも取り組まれたが、日本の気候や土地の狭さなどから十分な採取量を得られませんでした。以降、原毛は輸入に頼っています。主な生産国はオーストラリア、ニュージーランド、旧ソ連、トルコ、アルゼンチンなどになり、羊毛は現在、婦人服や紳士服、コートはもとより、ニット製品や毛布など幅広い用途に使われています。
 
39. 羊毛の特性
刈り取られた羊の毛は、毛皮のように1枚につながった状態(原毛)です。この原毛のことをフリースと言います。現在はペットボトルを再生したフリースが知られていますが、羊の原毛が元の意となり、1頭の羊から約3~3.5kg(ほぼスーツ1着分)の原毛が採れます。
羊毛は、表皮と皮質と毛髄で構成されています。このうち表皮と皮質が羊毛の大きな特徴であり、表皮はウロコ状のスケールでできていて、このスケールは毛先の方向へと筍の皮のように重なり合った状態になっています。表皮はキューティクルで覆われ、湿気を吸収するが水を弾く、つまり外部の湿度に応じて湿気を吸ったり放出したりします。撥水性と保水性という矛盾した性質を併せ持つため、汚れにくさや保温性を生み、服にすると冬は暖かく、夏は涼しく感じます。また、ウロコ状の重なりは繊維同士が絡み合いやすいため、糸に撚りやすく、フェルト(縮絨)した生地を作りやすくなります。
皮質の断面はほぼ円形で、性質の異なる2つの半円形の繊維が合わさった状態になっています。熱や水分などが加わると、それぞれの繊維が異なる収縮を示し、羊毛に特有のクリンプ(捲縮・縮れ)を生みます。クリンプは水中や蒸気で引き伸ばすと一時的に伸びますが、時間が経つと元に戻る性質を持っています。これが衣料や寝具に羊毛が用いられる理由でもあります。
細い羊毛ほどスケール数とクリンプ数が多く、高級とされます。衣類に最適とされるオーストラリア・メリノ種のクリンプ数は、1inch(2.54cm)当たり22~30個もあります。
ただし、これらの特徴を持つため、服にしたときの形態安定性が低い(プリーツ性が悪い)という短所があり、羊毛の強度は、繊維の中でアセテートと並んで最低となっています。その欠点を補うため、羊毛糸は他の繊維と撚り合わせて糸にすることが多く、服になってからのフェルト化の防止やプリーツ性の改良に向けては、シロセット加工(折り目の形状記憶加工)などが開発されました。

40. 羊毛の種類
羊は世界で約3000種も存在し、毛質によって細毛種、中毛種、長毛種、交雑種に大別されます。このうち、新毛で繊維長が長く良質な羊毛は比較的細い梳毛糸(ウーステッドヤーン)、繊維長が短い繊維は再生毛などと混合して比較的太い紡毛糸(ウーレンヤーン)にします。梳毛糸は紳士・婦人服や礼服、コート、薄手のニット製品、靴下、手袋、毛糸など、紡毛糸はジャケットやホームスパン、パジャマ、オーバー、厚手のニット製品、毛布、絨毯などに用いられます。
 
41. 細毛種
羊毛の最良品種です。代表種のメリノ種はスペインの原産ですが、現在は世界各地に分布しています。とくに品質が高いのがオーストラリア・メリノ、羊毛の中で最も色が白く、細く、クリンプが多く、生産量も世界最多で、全羊毛の45%程度を占めます。フランスで改良されたランブイエ・メリノも細毛種に分類されます。
 
42. 中毛種
英国原産の種を改良したチェビオット種やシュロップシャー種などがあり、チェビオット種は毛脂が少なく、ツイードの原料として用いられています。
 
43. 長毛種
英国南東部ロムニーマーシュ地方の原産種を改良したロムニー種、同東部のリンカーン州の原産種を改良したリンカーン種などがあります。ロムニー種はニュージーランドが主産地で、その羊毛は主にカーペットなどに使用されています。羊の中で最も長い毛を持つリンカーン種は、ドレスやカーペットに使われています。
 
44. 交雑種
より良質な毛を採取するために交配した種で、コリデール種は代表的です。メリノ種にリンカーン種やロムニー種などの長毛種を交配させ、50~60番手の羊毛糸が採れ、クリンプ、フリースの均一性が高く、手編み毛糸などに使用されます。
 
45. 獣毛
獣毛とは羊から採れる毛以外の動物繊維のことで、主な獣毛は次の通りになります。
 
46. カシミヤ
北インドのカシミール地方に産するカシミヤ山羊の毛であり、長い棒状の粗毛の下に、秋から冬にかけて防寒のために生える産毛がカシミヤ毛となります。1頭当たりの平均産毛量は200g程度と羊毛の約20分の1、繊維の太さは約15μmと羊毛より細くて柔らかく、絹のような光沢があます。高級素材としてコートやセーター、マフラーに使用され、主な産地はインド、内モンゴル、モンゴルになります。
 
47. モヘア
アンゴラ山羊から採れる粗毛繊維で、長毛で光沢があります。トルコのアンゴラ地方が原産で、ほかにアメリカや南アフリカ共和国などで育てられています。しわが寄りにくく弾力性があるため、夏用のスーツ地などに用いられます。
 
48. キャメル
中央アジアの砂漠に棲息するフタコブラクダの産毛で、毎春に抜ける毛を採集し、繊維原料にしています。繊維長は25~125mm、繊維の太さは10~30μm。オーバーや毛布などに使われています。
 
49. アルパカ
主にアンデス山脈の海抜4000m以上の湿潤で寒暖の差が大きい高地で放牧されているラマから採れます。その毛は細かな穴が開いた構造になっているため軽く、しかも穴は気温に応じて開閉し温度を調整する機能を備えています。軽く、温かく、柔らかく、自然の毛色のバリエーションも豊富、毛玉ができにくいのも特徴です。セーターやオーバー、マフラーなどに使用されます。
 
50. アンゴラ
アンゴラ兎から採取される高級獣毛で、繊維断面は中心が空洞になっており、そこに空気を含むため保温性に優れます。色は純白で肌触りが良く、セーターやカーディガンなどのニット製品、帽子やショールなどにも使われます。
 
51. ビキューナ
南米のペルーなど標高の高い地域に棲息するラクダ科の動物で、原毛の長さは30~40mm、直径は11~14μmと、カシミヤよりも細い繊維です。コートやブランケット、スーツ、マフラー、ショールなどに使われていますが、乱獲により希少種となり、ワシントン条約で取引が制限されています。


<絹繊維> 


52. 絹繊維
絹は蚕が吐いて作る繭から採れる動物繊維で、古代中国を起源とする歴史ある繊維の1つです。絹織物は他の繊維では表現できない豊かな光沢や色彩、ドレープ感などを備え、古来から高級品として珍重され、「繊維の女王」とも呼ばれます。交易によって世界に広まりましたが、製法が長年にわたり明かされなかったため憧れが高まり、各国の上流階級が愛用しました。貴重な絹織物が伝播されたことから、その交易路はシルクロードと呼ばれるようになりました。
養蚕や製糸法などの製法が比較的早く伝わったのが日本であり、3世紀の卑弥呼の時代に絹織物の生産が始まったとされます。しかしその後も絹織物は中国からの輸入に頼る時代が続き、江戸末期にはあまりに膨らんだ輸入額を抑えるため幕府が養蚕や製糸を奨励、各地で生産された生糸が都に届けられるようになると、織物や染色の技術が発展し、西陣織や京友禅などが誕生しました。明治期に製糸の工業化を図って輸出を拡大し、第2次世界大戦に至るまで絹糸は日本の近代化を支える一大産業となりました。
戦後は産地がブラジルや中国など海外にシフトし、化学繊維の拡大もあって、国内の生糸生産は激減し、輸入が大部分を占めています。絹織物は和服や高級婦人服、ブラウス、ネクタイ、マフラー、スカーフなどに使われ、国内生糸消費量の8割以上が和装用となっています。
 
53. 絹繊維の構造
絹はアミノ酸が結合してできたたんぱく質を主成分とし、その末端にアミノ基などの親水基を持つため、吸湿性や染色性に富んでいます。一方、水に弱いため水染みや色落ち、強度低下が起こりやすく、黄変しやすく、日光や摩擦に弱く、虫に弱いなどの欠点があります。このような特性を持つ絹を生み出すのが蚕になります。
蚕は家蚕と野蚕に大別されます。
 
54. 家蚕
家蚕は人工的に屋内で飼育される蚕またはその方法であり、家蚕により繭を生産することを養蚕、家蚕の繭で作った糸を家蚕糸と言います。現在生産されている絹繊維はほとんどが家蚕となります。
 
55. 野蚕
野蚕は天然の蚕であり、蚕を放し飼いにし自然の中で作られた繭を収集して絹繊維を採り、この絹繊維から作られた糸を天蚕糸と呼びます。
蚕は蛹になる前、外界から身を守るために繭を作り、繭は長さ約30mm、直径約20~25mmになります。繭は1本の繊維でできていて、その長さは1000~1500mに及び、絹繊維は天然繊維で唯一の長繊維(フィラメント)になります。この繭から絹繊維を繰り取り(繰糸)生糸にしていきます。1個の繭から採れる1本の絹繊維の太さは約3デニールであり、デニールは長繊維の太さを表す単位で、長さ9000mで1gになる太さを1デニールとします。絹繊維は1本では織りや染めに耐えられる強度がないため、複数の繭から複数の絹繊維を繰り出しながら撚り合わせて糸にします。この糸のことを生糸、その製法のことを製糸と言います。
絹繊維の断面は、丸みを帯びた三角形の2本のフィブロイン(たんぱく質)が、固いセリシン(にかわ質のたんぱく質)に覆われた状態になっています。このセリシンを石鹸水や水酸化ナトリウム溶液で取り除き、フィブロインのみ(2本に分かれた状態)にします。この作業を練ると言うことから、工程としては練り、または精錬と呼び、2本に分離したフィブロイン1本の太さは、天然繊維では最も細い約1デニールとなります。

56. 精練
精練には2つの方法があります。
 
57. 先練り
生糸の段階で行う精練で、糸練りとも言います。先練りによって作った絹糸で織られた絹織物のことを先練り織物と呼び、練絹織物、練織物とも言われます。代表的なものに和服の御召や紬、銘仙などがあります。先練りによってフィブロインだけになると、その三角形の断面に光が乱反射して絹独特の光沢が生まれ、繊維自体が細くて長いため柔らかく優雅な感触が発現します。また絹の糸や生地を擦り合わせると、フィブロインの摩擦によってキュッキュッという音がし、この音は絹特有で、「絹鳴り」と言います。
 
58. 後練り
後練りは生糸の状態で製織した織物の段階で行う精練のことで、後練りした絹織物を後練り織物と言います。後練りする前の絹織物は生絹織物または生機と呼び分け、縮緬、羽二重、絽などがあます。後練りによってセリシンが取り除かれると、織物の中の繊維と繊維の間にすき間ができ、繊維が動きやすく柔らかくなります。これにより、後練り織物には美しいドレープが生まれます。
同じ長繊維織物でも、先練り織物と後練り織物では産地が異なり、これは湿度と関係しています。セリシンは乾燥すると硬直して折れやすくなり、湿度が高いほうが軟化して扱いやすいため、雪が多く湿度が高い北陸(福井や石川など)が後練り織物の産地になりました。またフィブロインは水に弱く、濡れると強度が低下して寸法変化を起こすため、乾燥した内陸の桐生や米沢などが先練り織物の産地となりました。

<化学繊維>

 
59. 化学繊維
化学繊維とは、人間が作った繊維の総称であり、天然素材しかなかった時代には、最高峰の繊維とされる絹を人工的に作るため様々な研究がなさました。大きな変化があったのは19世紀、木材の主成分がセルロースであることが解明され、1883年に初めて木材を溶かして作られるニトロセルロース繊維(人造絹糸)が試作されました。この製造を工業化したのがフランスのシャルドンネ伯であり、1891年に人造絹糸の工業生産が始まり、以降、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどセルロースを主成分とした人造繊維(再生繊維)が続々と開発されました。その一方、1936年にデュポン社がナイロンを発明し、1950年にはアクリル、1953年にはポリエステルなども工業生産が始まり、合成繊維の時代が到来。自然由来の高分子物質と化学的物質を融合した半合成繊維も開発され、多種多様な繊維を享受できるようになりました。
 
60. 再生繊維
天然繊維はセルロースやたんぱく質などの分子が連なった高分子(ポリマー)で組成されています。この天然の高分子を利用し、化学的に合成して作り出されたのが化学繊維であり、その最初の事例が再生繊維です。この合成方法として、先に述べました湿式、乾式、溶融の3つの紡糸方法があります。
再生繊維はセルロースなどを原料とし、これに薬剤を加えて溶解し、ノズルから押し出して繊維状に固め、紡糸したものです。原料の溶解法の違いにより、レーヨン、キュプラ、リヨセルに分類されています。
 
61. レーヨン繊維
レーヨンは、英語の「ray=光る」と「yarn=糸」の造語になります。1891年に英国でレーヨン長繊維(人絹繊維)として発明され、1900年代に西欧各国で工業生産されるようになりました。日本では1916年に国産の技術で生産が始まり、1937年には生産・輸出量で世界トップになり、改良を重ねながら戦後の1955~70年頃に最盛期を迎えました。
木材パルプのセルロースを苛性ソーダで処理後、二硫化炭素と反応させ、これをさらに苛性ソーダに溶解させてビスコースと言われる原液を作り、ノズルから酸性浴中に紡糸します。これによりセルロースが繊維として再生され、巻き取ればレーヨン長繊維(人絹繊維)になり、必要な長さに切断するとレーヨン短繊維(スフ)になります。この製法をビスコース法と言い、ビスコースをフィルム上に押し出すとセロファンになります。
一世を風靡したレーヨンでしたが合繊との競合激化し、製造時に使用する二硫化炭素の毒性や森林の伐採などの環境問題も浮上し、現在は短繊維を中心に生産されています。日本では2000年にレーヨン長繊維の生産を中止しました。
レーヨンは絹のような高級感があり、絹よりも安価となります。吸湿性に優れ染色性も良く、短繊維は、衣料ではシャツやブラウス、ワンピース、ジャケットなどに使用されるほか、カーテンやいす張り地、ガムテープ生地、ふきんなど用途は幅広く使用されます。他の繊維と混紡しやすいことも利点であり、ポリエステルをはじめ、綿やアクリル、羊毛などと混紡されます。しかし強力が弱く、濡れると強度が低下し、洗濯すると縮みやすく、腰が弱いため寸法安定性が悪く、しわになりやすく回復性が悪いとされます。これら欠点を補完するため、綿と同じく樹脂加工などが行われています。綿とレーヨンの中間的な性質を備えたポリノジックも開発されています。

62. キュプラ繊維
この再生繊維の始まりはレーヨンの発明以前にさかのぼります。1857年にドイツのシュバイツァーがセルロースは酸化銅アンモニア溶液に溶けることを発見し、1890年頃に銅アンモニア法による繊維としてキュプラ(銅の意)の製造が工業化されました。しかし製造コストが高いため、後発のビスコース法が普及することになり、その後アンモニア合成法の進化により製造が再開され、ドイツのベンベルグ社が1918年に良質なキュプラの開発に成功し、ベンベルグの製品名で普及しました。現在は日本の旭化成せんいが引き継ぎ、製造しています。
キュプラもレーヨンもセルロースを主成分とした再生繊維ですが、大きな違いは原料となります。キュプラは綿の種子に生えている産毛「コットンリンター」を原料としています。コットンリンターは非常に細い繊維で、綿糸には使えませんが、キュプラの製造に回すことで資源の有効活用にも役立っています。
キュプラの正式名称はcuprammoium rayonですが、その名が示すように特徴も用途もレーヨンと似ています。ただ、レーヨンよりも細く、レーヨンは繊維断面に凹凸がありますが、キュプラは丸いためしなやかで肌触りが良く、絹のようなドレープ感がある。またレーヨンよりも強度があり、濡れても強度の低下が少ない。吸湿性と放湿性を兼ね備えているため清涼感があり、着心地が良いとされます。静電気が起きないのもメリットになります。
このような特徴を生かし、主にスーツやコート、ジャケットの裏地に使われるほか、とろみのあるシャツなどにも用いられます。デメリットとしては、摩擦に弱く、毛羽立ちやすいこともあり、そのため洗濯機にかけるとしわになりやすいと言われます。

63. リヨセル繊維
リヨセルの原料は木材パルプ(ユーカリ)、主成分はセルロースになります。溶解を意味するギリシャ語「lyo」とセルロースの英語を略した「cell」の造語です。この名称は製法からきており、有機溶剤で木材パルプを直接溶解してセルロースのまま原液とし、紡糸されます(直接溶解法)。そのため精製セルロース、繊維素繊維とも言われます。「テンセル」とも呼ばれますが、これはレンチング社のリヨセルの商標となります。ちなみに、原料を溶かす溶剤は使用後に回収され、再利用されます。廃液を出さない、環境に優しい製法が採られています。
1978年に開発されました基礎技術をもとに、1980年に英国(レンチング社)とオーストリア(コートルズ社)で生産が始まり比較的新しい繊維となります。日本では1992年に短繊維を輸入して研究が始まり、1994年頃から普及しました。現在も日本では原料からの一貫生産ではなく、短繊維を全量輸入して紡績、織布、染色、縫製などの加工を行っています。
リヨセルはレーヨンやキュプラよりも強度が低下しにくく、吸湿性が高いため、湿気を含んでも収縮が少ないと言われます。しかし、レーヨンよりも染色性が低く、濡れると硬化し、擦れると毛羽立ち(フィブリル化)して白くなるという性質があります。デニムやジーンズなどの綿製品に使われ、綿やポリエステル、アクリルなど他の繊維と混紡されることが多くございます。
 
64. 半合成繊維
半合成繊維とは、天然の原料を化学反応させて加工した繊維のことを言います。もとは天然の高分子物質ですが、その一部に化学的物質を結合させます。天然と化学の両方の性質を持つことから半合成繊維と呼ばれ、絹のような感触が特徴になります。衣料に用いられる半合成繊維は、セルロース系のアセテート繊維とたんぱく質系のプロミックス繊維に大別されます。
 
65. アセテート繊維
アセテート繊維とは、木材パルプに酢酸を結合させた酢酸セルロース(アセテートフレークス)を溶剤(アセトン)で溶解し、紡糸した繊維をさします。セルロースの親水性などの性質と、合成繊維の熱可塑性などの性質を併せ持ちます。絹のような感触と光沢があり、染色性が良く、適度な吸湿性も備えています。アセテートよりも多くの酢酸を結合させた繊維はトリアセテートと言います。より合成繊維に近い性質になり、アセテートと比べ張りや腰があります。
ただし、ともに強度は非常に低く、濡れるとさらに低下し、摩擦に弱く、しわになりやすいと言われます。溶剤にも溶けやすいので、マニキュアやシンナーを使うときには注意が必要です。
アセテートもトリアセテートも、衣料用には主に長繊維を用います。フォーマル系の婦人服の表地や裏地、ブラウス、スカーフ、和服、夜具などに使われています。ただし強度が低いため、ポリエステルなどの合繊長繊維との混繊糸に加工します。トリアセテートは黒の発色の良さを生かして礼服に使われることが多く、ブラウスやニットシャツなど薄地の商品にも用いられます。短繊維はたばこのフィルターに使われています。

66. プロミックス繊維
プロミックス繊維とは牛乳たんぱく質のカゼインを溶解し、アクリロニトルを結合させた原料を紡糸した繊維です。日本で開発された。JIS(日本産業規格、2019年に日本工業規格から変更)では「たんぱく質を重量割合で30%以上60%未満含む繊維」と定められています。もとが動物性たんぱく質のため、化学繊維では最も絹に近い光沢や、しなやかな風合いを持ちます。絹よりも軽く、適度な吸湿性も備えています。ただし熱や摩擦に弱いため、アイロン掛けには注意が必要です。和服や礼服、ブラウス、ネクタイ、スカーフなどに用いられていましたが、2004年に製造中止となりました。
 
67. 合成繊維
合成繊維とは、石油や天然ガス、石炭などから原料を化学的に合成して作った繊維の総称で、略して合繊と言います。人工的に作られた繊維であることから「人造繊維(man made fiber)」とも呼ばれます。衣料にはナイロン、アクリル、ポリエステルが最も多く使用され、日本ではこの3種類で合繊生産量の約85%を占めることから、三大合繊とされています。
 
68. ナイロン繊維
ナイロンはポリアミド合成樹脂の一種で、人間が初めて作り出した合成繊維となります。高分子化合物を研究していたアメリカの化学者カローザスが1935年に発明し、デュポン社が製造を工業化しました。1938年の世界博覧会で「蜘蛛の糸のように細く、鋼鉄よりも強い繊維」として発表されると、絹に代わるストッキング素材として普及し、衣料や産業資材など幅広い用途に使われるようになりました。ナイロンの名称は「ほつれない」「伝線しない」を意味する「no run」が語源とされます。
ナイロンには大きく分けて2タイプがあり、デュポン社が開発したものは「ナイロン66」、もう1つは「ナイロン6」となります。ナイロン6は、もともとは日本の東レが繊維ブランド「アラミン」として自社技術で開発したものです。その後、繊維メーカー各社が西欧の技術を導入してナイロンを生産するようになり、ナイロン6の呼称に統一されました。
いずれも石油由来ですが原料が異なり、ナイロン66はアジピン酸とヘキサメチレンジアミンの重合、ナイロン6はカプロラクタムの重合で原料を合成し、溶融紡糸によって繊維化します。繊維としての強度は高いですが、伸びやすく柔らかく、しわになりにくいと言われます。また合成繊維の中では比較的吸湿性があり、染色性も良く、熱可塑性があるため、かさ高加工やプリーツ加工が可能となります。ナイロン繊維の生産量の90%超が長繊維で、短繊維は主にウールなど他の繊維の強度を出すために混紡用として使われています。
このような性質を生かし、衣料用ではパンティーストッキングを中心とする靴下類やスポーツウェア、インナーなどのニット製品が多く作られ、織物としては防寒衣料などがあります。
 
※重合:合成繊維の原料は合成高分子(ポリマー)でできており、このポリマーを構成する低分子化合物(モノマー)を多数結合させて高分子を作る化学反応のことを重合と言います。
 
69. アクリル繊維
アクリル繊維とは、原料は石油から採ったプロピレンとアンモニアを合成したアクリロニトリル、これに酢酸ビニルなどの化学物質を結合(共重合)させ、湿式か乾式で紡糸して繊維化します。共重合により、繊維にするための柔軟性や摩擦強度を持たせます。JISではアクリルニトリルの質量割合が85%以上のものをアクリル繊維、85%未満35%以上のものをアクリル系繊維と規定し区別しています。
アクリルは羊毛を目指し開発されました。軽く、ふっくらとして柔らかい、そのため保温性が高いとされます。日光などへの耐候性も強く、変退色もほとんどないと言われます。合成繊維なので虫害もなく、耐薬品性も備えています。このような性質を高めるため、衣料用には主に短繊維を使い、紡績糸に加工しています。捲縮加工を施したり、かさ高加工によってバルキー糸が作られています。収縮する繊維と収縮しない繊維を混紡し、収縮する繊維のほうを熱処理で収縮させることで糸の中に空気を含ませ、羊毛のような風合いを生みます。また、より羊毛に近づけるため、羊毛との混紡も多くなっています。吸湿性が悪いため染色が難しい繊維でしたが、カチオン染料の開発によって鮮明で堅牢な染色が可能になりました。
アクリルは羊毛よりも安価であることから、羊毛の代替として様々な製品に使われています。衣料用途ではセーターやカーディガン、靴下などのニット製品が多く、衣料以外ではカーテンやカーペット、テーブルクロス、国旗や幟、テントなどがあります。アクリル系繊維(短繊維)は難燃性を生かし、病院のカーテンや劇場の緞帳、人工毛皮などに使われています。
ただし、吸湿・吸水性が低く、汗をかくと服の内部がベタついて着心地が悪くなります。摩擦によって毛玉(ピリング)が起こりやすいという欠点もあり、熱に弱く、80度程度の低温でも軟化するので、アイロン掛けには注意が必要です。
 
※共重合:2種類以上のモノマーを使って重合することです。
※カチオン染料:アクリル繊維の染色用に開発された染料で、鮮やかな色に染まり、堅牢度に優れています。
 
70. ポリエステル繊維
合成繊維で最もポピュラーな繊維です。。天然繊維に近い風合いで、強度が高く、しなやかで張り、腰があります(ヤング率が高い)。特徴は湿潤時の縮みが少なく、しわになりにくい、速乾性が高いと言われます。ナイロンと比べ耐熱性が高く、かさ高加工などがしやすいく、他の繊維との馴染みも良く、混紡しやすいなどの長所があります。一方、長所ゆえの短所もあり、吸湿性が低いため難染性で、静電気を帯びやすく、油を吸収する性質があるため、洗濯時の逆汚染に注意を要します。
ポリエステル繊維の原料は、石油から作られたエチレングリコールとテレフタル酸(またはジメチルテレフタレート)を重合したポリエチレンテレフタレート(PET)になります。ペットボトルの原料としても知られるこの高分子を、衣料用では溶融紡糸して繊維化します。英国のキャリコ社が1940年頃に開発し、1950年代に欧米で工業化されました。日本では東レと帝人が共同で技術を導入し、1958年に「テトロン」のブランド名で生産を始めました。
日本でのポリエステル生産量は合繊全体の半分近くを占めます。このうち長繊維は約60%、短繊維は約40%。ナイロンが長繊維を、アクリルが短繊維を主体としているのに対して、ポリエステルは長短ともに使用割合が高いとされます。
 
71. 短繊維の場合
他の繊維と紡績した混紡糸として使用されます。綿や羊毛、スフとの混紡が多く、不織布にして芯地や人工皮革などに使用されたり(長繊維を使う場合もある)、短繊維のまま衣服や布団の詰めわたなどに使われたりもしています。
 
72. 長繊維の場合
衣料用には数十本を撚り合わせた糸(マルチフィラメント糸)にします。紡糸に使うノズルの形状を変えることで様々な繊維の形状や太さ、天然繊維にある中空構造なども作ることができ、他の繊維と組み合わせた複合繊維を生み出すことも可能となります。婦人服の表地や洋服の裏地、肌着、ニット製品、和服地などに用いられています。熱可塑性を利用してかさ高加工糸にすることで、梳毛系の紳士服地の用途も開拓されました。
もともとは吸湿性が低いため染色に難がありましたが、染色法の開発やポリエステル自体の改良により、易染性も向上しています。長繊維も短繊維も用途に合わせた糸にできるため、衣料やインテリア、産業資材、医療分野など幅広く活用され、「万能繊維」と言われます。
 
※ヤング率:繊維を含む物体の硬さを表す尺度のことで、繊維を引っ張って測定します。もとに戻る最大限まで伸ばしたときの引っ張る力のことをさします。ヤング率の数値が大きいほど弾性(もとに戻ろうとする性質)が強く、繊維は硬い。ヤング率が高い繊維を用いた織物は張り、腰がある。ヤング率の低い繊維を用いた織物は張り、腰が弱いとされます。

73. その他の合成繊維
三大合繊以外にも様々な合成繊維があり、ポリウレタン、ポリエチレン、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ乳酸、アラミドなどになります。主に衣料で使われるものについて解説します。
 
74. ポリウレタン繊維
ポリウレタン繊維は、合成ゴムを原料とした、ゴムに似た合成繊維で、衣料用、コーティング用、接着用など幅広い用途があります。
ただし、衣料用はポリウレタン繊維のみで使用することはなく、他の繊維と組み合わせて長繊維にされます。ポリウレタンを芯にして絹やナイロンなど他の繊維で被覆したカバードヤーン、他の繊維にポリウレタンを混ぜたストレッチ織物素材などがあります。ゴムよりも伸縮性と耐久性に優れ、ゴムより軽く細い糸を作ることができます。その性質からスパンデックス(弾性繊維)とも言われ、スポーツウェアなどのストレッチ素材として支持されているほか、ファンデーションやスラックス、水着、タイツなどに使われています。
 
75. ビニロン繊維
ビニロン繊維は日本のクラレが1950年に開発した合成繊維です。水溶性のポリビニルアルコール(PVA)を原料とし、これを乾式または湿式で紡糸して繊維化します。水に溶けやすい性質を持つため、他の繊維と組み合わせて不溶性にします。原料名からPVA繊維とも言います。
摩擦に強く、合繊の中では最も吸湿性が高く、綿に近い風合いを持った繊維です。学生服や作業服など実用衣料に使われ、しかし弾力性や熱可塑性、染色時の鮮明性、湿熱安定性などに課題があったため、衣料用途は減り、産業資材用途に転換されました。海苔の養殖用の網や漁網、ロープ、ホース、ベルト、濾過布、帆布、テント、シート、コンクリート補強材、農業資材の寒冷紗や育苗用ポットなどに使われています。
 
76. ポリ乳酸繊維
ポリ乳酸繊維は、トウモロコシでんぷんを発酵させて乳酸を作り、これを重合させて得たポリ乳酸を紡糸します。合成繊維としてはポリエステルやナイロンと同等の強度、ナイロン以上の弾性があり耐熱性も高く、このような物性や加工性から、衣料用や産業資材用、さらに農・園芸用などに使用されています。
大きな特徴は、そのリサイクル性であり、廃棄されても、土中などの微生物が水と炭酸ガスに分解します。原料は石油系ではなく植物由来、環境を壊さない生分解性という、生産から廃棄までの新たなライフサイクルを作る繊維として注目されています。
 
77. 化学繊維の改良・改質
優れた性質・機能を備えた化学繊維ですが、人工の産物であるため欠点もあります。改良・改質が続けられ、新たな繊維が数多く生み出されてきました。その目標とされたのが天然繊維の構造や快適さでしたが、近年は天然繊維を超えた性質や機能も生み出されています。
 
78. 異形断面繊維
化学繊維は円形の紡糸ノズルから紡出され、繊維の断面は円形になります。これを天然繊維のように円形以外の形状にしたのが異形断面繊維です。
最初に取り組まれたのが絹の異形断面繊維でしたが、絹の光沢を得ることを目的に、絹と同じ三角形の断面形状を持つ繊維が開発されました。現在は五角形や星形、Y字形、W字形、凸形など多様な非円形のノズルの形状があり、様々な感触、風合い、光沢が生み出されています。異形断面繊維はナイロンやポリエステルの長繊維で多く生産され、ポリエステルやアクリルの短繊維にもあります。

79. 中空繊維
中空繊維は断面に中空部(空洞)を持つ繊維です。綿の中空道(ルーメン)を模して開発されました。紡糸の際にガスを発生させる方法や特殊な紡糸ノズルを用いる方法で作られ、中空を作ることによって繊維は軽くなり、保温性、吸水性も増します。
中空繊維はポリエステルとナイロンを中心に生産され、異形断面を中空にした異形断面中空繊維も作られています。用途はスポーツウェアや肌着、毛布、布団わた、詰めわた、カーペットのパイル糸、コートなど幅広く、キュプラの中空繊維は医療の人工透析用に使われています。

80. 複合繊維
複合繊維のモデルは羊毛繊維になります。羊毛は2種類の化学的物質の異なる成分が張り合わさってクリンプ(捲縮)を生み出しています。これと同様の構造を複合繊維は持っており、成分の異なる2種類の原液を2つに区切られたノズルから同時に紡糸し、2つの成分が張り合わされた1本の繊維を作ります。複合繊維は短繊維でも長繊維でも作られ、前者をコンジュケートファイバー、後者をコンジュゲートヤーンと言います。極細繊維の製造にも活用されています。
アクリルの複合繊維はセーターなど、ナイロンのものはストッキングなど、ポリエステルのものは布団わたなどに用いられています。
 
81. 極細繊維
天然繊維の中で最も細い繊維は絹であり、その太さは約1デニール、これを超える細さを実現したのが極細繊維であり、マイクロファイバーとも言います。日本で開発され定義はありませんが、一般的に1デニール未満の繊維を極細繊維と呼び、さらに細い繊維も開発され、0.3デニール未満の繊維を超極細繊維、0.1デニール未満の繊維を超々極細繊維と呼んでいます。
ノズルから原液を直接押し出して固化させる直接紡糸法で極細繊維を得ることもできますが、これでは0.1dtex(デシテックス)程度の太さが限界であり、そのため複合繊維を紡糸してから引き伸ばし繊維特性を高めた後に極細繊維化する複合繊維法も採られています。
極細繊維はポリエステル長繊維を主体とし、その細さゆえのしなやかさ、織って表面積が拡大したときの吸着性を生かし、不織布によるスエード調の人工皮革にはじまり、クリーナー(眼鏡拭きなど)や高密度に製織した防水透湿織物(スポーツウェアなど)など幅広く使われています。
 
82. 新合繊
新合繊とは、天然繊維にはない風合いや感触、質感を備え、改良によって従来の合成繊維よりも優れた性能を持つ合成繊維になります。1980年代後半から日本で続々と誕生し、「新合繊」として広まりました。海外でも「shin-gosen」と呼ばれ、ポリエステル長繊維を主体に衣料用に開発され4つのタイプがあります。
 
83. ニューシルキー織物
絹のような光沢、触感、ドレープを持ちます。
 
84. 薄起毛調織物
ピーチスキン調とも言います。桃の皮のような触感を持ちます。
 
85. ニュー梳毛調加工糸織物
ウールライクですが、ウール以上の軽量性、保湿性、ソフト性などを持ちます。
 
86. ニューレーヨン調織物
かさ高性、反発性があり、さらりとした肌触りと涼感が得られる繊維です。
ニューシルキー織物は婦人服、ドレス、ブラウス、シャツなど、薄起毛調織物とニュー梳毛調加工糸織物はシャツ、カジュアルウェアなどに用いられますが、縫製が難しく注意を要します。これら薄地織物が中心用途とされる一方、ニット製品や不織布にも使用されています。
優れた性能を持たせるために、原糸の段階から仕上げに至るまで特有の技術を複合することによって作られています。例えば、高分子の改質技術、紡糸技術(極細繊維、異形断面繊維、中空繊維、複合繊維など)、糸加工技術(仮撚り法、空気噴射法、混繊糸など)、編織技術、不織布技術、高次加工技術(熱セット、起毛、剪毛、染色・仕上げ加工などの表面処理技術など)があります。

<繊維から糸へ>


87. 繊維から糸へ
繊維を束ねて糸に加工します。糸はその原料・組成や形態、太さ、撚りの有無、除去される繊維の分量によって分類することができます。ほかにストレッチヤーンや混繊糸、意匠糸、縫い糸、金銀糸など特殊な糸もあります。
 
88. 原料・組成による分類
原料・組成では、綿糸、麻糸、毛糸、絹糸(生糸)、スフ糸(レーヨン紡績糸)、人絹糸(レーヨン糸、レーヨン長繊維糸)、キュプラ人絹糸(キュプラ長繊維糸)、アセテート糸(アセテート長繊維糸)、アクリル紡績糸、ポリエステル長紡績糸、ナイロン長繊維糸、ポリエステル長繊維糸などに分類されます。
 
89. 形態・加工方法による分類
繊維の形態とは、糸を構成する繊維の長さのことであり、短繊維を使った紡績糸、長繊維を使った長繊維糸とかさ高加工糸があります。
 
90. 紡績糸
短繊維(ステープル)を紡いで糸にする工程のことを紡績と言います。紡績によって作られた糸を紡績糸、または短繊維糸、スパン糸とも言います。
紡績の方法は繊維の種類によって異なる部分もありますが、「混打綿→梳綿→練篠→粗紡→精紡→仕上げ」が基本工程となり、その要点は以下の通りになります。
①細かなごみや所定の長さ以外の短繊維を取り除きながら、必要な太さ分の短繊維を平行に引き揃える
②揃えた短繊維の集合体を平行のまま少しずつずらして、細く長い状態にする
③その状態で撚りをかけていく
このような流れで、綿紡や麻紡、毛紡、絹紡など専業の紡績メーカーが、綿糸や麻糸(亜麻糸、苧麻糸)、羊毛糸(梳毛糸、紡毛糸)、獣毛糸、絹紡糸、絹紡紬糸、紬糸、スフ糸、合繊紡績糸(ポリエステル紡績糸、アクリル紡績糸など)、天然繊維と化学繊維のそれぞれの良さを生かした混紡糸など、様々な紡績糸を作っています。化学繊維は紡糸工程で所定の長さに切断して短繊維にします。紡績糸は短繊維であるため表面に細かな毛羽があり、これで作った生地は空気を含むため膨らみがあり、保温性のあるものになります。ただし、次に述べる長繊維糸よりも強度が弱いとされます。

<紡績糸の種類>

91. 綿糸
綿糸にはカード糸とコーマ糸があり、紡績工程の違いで分けられています。カード糸は綿花の短い繊維を除去し、繊維を平行に揃えるカーディング工程を経た糸のことです。そのうえでコーマ機(カーディングで取り除けなかった短繊維を除去し、さらに繊維を平行にする機械)を通したものがコーマ糸になります。カード糸よりも均整で光沢があり、高級な綿糸になります。高級綿糸はガスで表面の毛羽を焼き、繊維の光沢と丸みを与え(ガス焼き糸、ガス糸)、ローンやボイルなどの綿織物に用いられます。
 
92. 麻糸
衣料用の麻糸には苧麻糸(ラミー糸)と亜麻糸(リネン糸)があり、いずれも光沢と硬さがあり、吸水・速乾性に優れています。苧麻糸は亜麻糸よりも腰と張りがあり、服にすると絹のような光沢を放ちます。しかし、しわになりやすく、染まりにくいという欠点があります。
生産量は亜麻糸のほうが多く、純麻糸や混紡麻糸として使われます。スフやポリエステルなどとの混紡糸は、スフ糸、ポリエステル紡績糸などとして使用されています。
 
93. 羊毛糸
羊毛糸は梳毛糸と紡毛糸に分けられ、梳毛糸は繊維長が長い羊毛繊維を引き揃え、短い羊毛を梳り、紡績して作られます。糸の太さが均一で毛羽が少なく、表面が滑らかで光沢があります。サージやギャバジン、ポーラなど薄地から中肉の生地に多く使われます。
紡毛糸は、粗く短い羊毛繊維、紡績・製織で出た屑などを再生した繊維(再生毛)も使い、紡績して作られます。梳毛糸よりも繊維の平行度が低く、糸も太く毛羽も多いですが、柔らかく保温性があります。フラノ、ツイード、メルトンなどの厚地織物に使用されます。
 
94. 絹紡糸、絹紡紬糸、紬糸
絹紡糸は、生糸を作るときに出る屑繭などを精練して切断した短繊維を紡績して作られます。生糸と比べかさ高で柔らかな触感と光沢感があり、洋服地やニット製品に使われます。
絹紡糸を作るときに出る屑わたなどを原料として紡績したのが絹紡紬糸になります。綿のような素朴な風合いがあり、肉厚感のあるスーツ地、布団やインテリアなどに使われます。
紬糸は、糸を取り出せない屑繭を切り開いて精練し、真綿にして短い繊維を手で紬いだ糸のことです。和服の紬はこの紬糸を使った絹織物ですが、近年は先練りの絹糸で作った紬が使われます。
短い絹の繊維をつむぐ場合は「紬ぐ」、綿の繊維をつむぐ場合は「紡ぐ」と区別します。麻の繊維をつむぐことは「績む」と言います。いろいろな繊維を紡いで糸を作ることから、紡と績を組み合わせ「紡績」と言われます。そして、性質の異なる2種類以上の短繊維を混ぜ合わせて糸を作ることを「混紡」と呼びます。
 
95. スフ糸
スフはレーヨンのステープルファイバー(短繊維)の略称です。スフ糸はレーヨン短繊維を原料にした紡績糸であり、紡績糸は英語でスパン糸と言うことから、スフ糸はレーヨン紡績糸、スパンレーヨンとも呼ばれます。太さは30sが中心で、インテリアや産業資材向けの織物に使われることが多く、スフ糸で作った織物はスフ織物と言われます。
 
96. 合繊紡績糸、合繊混紡糸
合繊紡績糸は、衣料用には主にポリエステル短繊維とアクリル繊維が使われています。ポリエステルは綿やスフとの混紡が多く、アクリルは純糸の生産量が多いですが、羊毛をはじめ綿との混紡も行われています。
合繊混紡糸とは、2種類以上の異なる短繊維を紡績した糸のことで、それぞれの繊維の長所を組み合わせることで短所を補い、より品質や機能などを高めることを狙いとしています。
 
97. 長繊維糸、かさ高加工糸
長繊維(フィラメント)を使った糸には、引き揃え・撚りかけ(撚糸)による普通タイプの長繊維糸と、熱可塑性を利用した捲縮によるかさ高加工糸があります。長繊維糸は絹繊維を除いてすべて化学繊維から作られ、マルチフィラメントとモノフィラメントに大別されます。
 
98. モノフィラメント
モノフィラメントは、1本の単繊維(単糸)をそのまま糸にしたもので、つり糸やストッキング、手術用の縫合糸などに使用されます。
 
99. マルチフィラメント
マルチフィラメントは、数十本の単繊維(モノフィラメント)を撚り合わせた糸になります。
長繊維糸には、絹糸(生糸)、人絹糸(レーヨン糸、レーヨン長繊維糸)、キュプラ人絹糸(キュプラ長繊維糸)、アセテート人絹糸(アセテート長繊維糸)、合繊長繊維糸(ポリエステル長繊維糸、ナイロン長繊維糸など)があります。紡績糸からは膨らみのある生地ができるのに対して、長繊維糸は表面が滑らかで毛羽や斑
むら
が少なく、光沢のある均一な生地になります。
上記のような撚糸とは異なり、熱を与えながら撚りをかけ、固定(熱セット)した後、反対方向の撚りをかけて撚りを解く(解撚する)という方法も使われます。これにより糸に縮れ(クリンプ)を付与し、かさ高性や伸縮性を生みます。加工方法は様々ありますが、日本では「加熱→熱セット→解撚」を連続で行う仮撚り法がほとんどで、一部で熱セットなしに加工する空気噴射法が使われています。この加工は多くは合成繊維の長繊維に施され、できた糸はかさ高加工糸、テクスチャードヤーン、バルキーヤーンなどと言われます。とくに伸縮性のあるものをストレッチヤーンと呼びます。ストレッチヤーンには、糸自体に伸縮性があるポリウレタン長繊維糸もあり、これを芯にしてナイロン長繊維糸やかさ高加工糸などを巻き付けたカバードヤーンなどにも使われます。ナイロン長繊維に仮撚り法を施して作られた糸は、ウールのような感触になることからウーリーナイロンとも呼ばれます。

100. 混繊糸
性質の異なる2種類以上の長繊維を混ぜ合わせて1本のフィラメント糸(長繊維糸)にしたものを混繊糸と言います。異なった種類の長繊維を混繊する場合と、同じ種類の異なった繊度のものや収縮性の違ったものを混繊する場合があります。収縮率の異なる繊維による糸を異収縮混繊糸、太さの異なる繊維による糸を異繊度混繊糸、組成の異なる繊維による糸を異繊維混繊糸などと言います。
 
101. 意匠糸
意匠糸は形状や色に装飾性・デザイン性を持たせた糸の総称で、飾り糸、ファンシーヤーンとも言います。作り方によって大きく次の2タイプがあります。
 
102. 撚糸タイプ
太さや長さ、色、収縮率などが異なる糸を撚り合わせて作ることから、意匠撚糸と呼ばれます。一般的には双糸で、意匠(飾り)撚糸機で作られ、芯にする糸を密に巻き付けて輪奈を生むループ系と、意図的に間隔を空けて節や玉(ネップ、ノップ)を生むノット系に大別されます。一般的な撚糸機で2色または3色の単糸を撚り合わせ、色の変化だけをつけたものに杢糸や霜降糸があります。
 
103. 紡績タイプ
単糸で作られる意匠糸で、紡績意匠糸とも呼ばれ、糸の太さを様々に変化させているのが特徴です。この意匠糸の代表であるスラブヤーンは糸の太さが徐々に変化していき、ネップヤーンはランダムに玉が付いたような糸形状になっています。
一般に意匠糸は生地の全面には使わず、普通糸の中に数本を差し込み、数十本おきに配置することが多く、主に婦人服に使われています。

104. 縫糸
縫糸は手縫糸とミシン糸に大別され、ミシン糸はさらに家庭用と工業用に分類されています。ミシン糸のほうが使用量は多く、その種類にもかつては綿糸や絹糸が多用されていたが、現在はポリエステル紡績糸やポリエステル長繊維糸、ナイロン長繊維糸が製造されています。家庭用ミシン糸は1巻500m以下、工業用ミシン糸は同500m以上が基準となっており、工業用は単糸3本を撚り合わせた三子が多く、オーバーロック糸など、双糸2本の撚り合わせも使われます。本縫は上糸と下糸を絡めながら縫っていくため、糸の滑りが良く強度も高まるよう、本縫用のミシン糸の上撚りはZ撚りで蝋引きされています。
 
105. 金銀糸
金銀糸は金糸や銀糸、ラメ糸などの総称で、メタリックヤーンとも呼ばれます。もともとの金銀糸は、和紙に金箔や銀箔を漆などで貼り付け、糸状に裁断したもので、京都府南部が主産地となります。近年はポリエステルやナイロンのフィルムにアルミを蒸着し、裁断したフィルム蒸着糸が量産されています。普通糸にこの金銀糸を巻き付けたものが多く、舞台衣装や帯地、着尺地、イブニングドレス、カーテン、表具などに使われます。
※ 蒸着:金属などを真空状態で蒸発させ、他の物質の表面に付着させること。
 
106. 撚り、番手
多様な繊維が開発されてきたましたが、繊維のみでは織編に耐えられる強度がなく、そのため繊維を集束して撚り合わせることで、目的とする強さを備えた糸にしていきます。撚ることによって繊維同士の摩擦力が増し、短繊維が糸方向に滑り抜けるのを防げ、糸の操作性が高まます。撚り合わせること、撚り合わせた糸のことを撚糸と言います。
 
107. 撚糸と無撚糸
撚りを加えることで糸自体に表情が生まれ、撚り合わせる繊維の種類や本数、撚りの強弱などによって生地にしたときの強度、風合いや肌触りなども違ってきます。生地の種類や性質、用途に応じて、例えばニット用は織物用よりも撚りを甘くし、織物用は経糸より緯糸の撚りを強くするなど加減が必要となります。
一方、撚りがかかっていない紡績糸のことを無撚糸と言います。糸を強くするのが撚糸であるのに対して、無撚糸は生地に柔らかな肌触りなどを生むために使われます。
いったん撚られた単糸に水溶性PVA(ポリビニルアルコール)長繊維糸を撚り合わせた双糸にします。単糸が撚られていた方向とは反対に撚り合わせることで、2本の糸が撚られた双糸ができると同時に、もともとの単糸の撚りが戻り、撚りがない状態になります。この双糸で生地を作った後に熱湯でPVAを溶かすと、撚りのない糸だけの生地になります。無撚糸タオルはその代表例です。肌触りが良く吸水性に優れますが、毛羽が落ちやすく、取り扱いには注意を要します。
 
108. 撚りの方向と撚り合わせ
撚りをかける方向には、右撚りと左撚りがあります。右撚りは、繊維の下端を押さえて上端を時計回りにひねる方法で、S撚りとも言います。長繊維糸に多く使われ、左撚りは下端を押さえて上端を反時計回りにひねる方法で、Z撚りとも言い、紡績糸に多くございます。
紡績された1本の糸を単糸、長繊維を1本または2本以上引き揃えて撚りをかけた糸を双糸、3本を合わせた糸を三子、4本は四子などと言います。
単糸を撚り合わせて双糸や三子糸にするときの撚りを下撚り、下撚りした糸を2本以上合わせて1本の糸にするときの撚りを上撚りと呼びます。日本ではZ撚りの単糸が多く、双糸にするときには単糸の撚りとは反対方向のS撚りにします。これを順撚り、諸撚りと言います。単糸の撚りと同じ方向に撚ることを逆撚りと呼びます。
撚り合わせ方の名称は次のようになる。
・片撚り……1本から2本以上の糸を引き揃え、撚り合わせて1本の糸にすること
・諸撚り……甘撚りの片撚り糸を2本以上引き揃え、片撚りと反対方向の撚りをかけること
・駒撚り……強撚の片撚り糸を2本以上引き揃え、片撚りと反対方向の撚りをかけること
・壁撚り……片撚りの太繊度糸と無撚りの細繊度糸を引き揃え、片撚りと反対方向の撚りをかけること
・飾撚糸……壁撚りの組み合わせでループなどを作ること
 
109. 撚り数
糸は撚りの回数によって呼び分けられています。1m当たりの撚り回数で示すと、次のようになります。
・無撚糸……1m当たりの撚り回数がごく少数(主に長繊維糸用)
・甘撚り糸……300回以下の弱撚糸(思いに長繊維糸用、ニット糸用、織物の緯糸用)
・並撚り糸……300~1000回程度の糸(主に紡績糸用、織物の経糸用)
・強撚糸……1000~3000回程度の糸(ジョーゼット、デシン用など)
ただし、撚り数は糸の組成によって表示方法が異なるので注意が必要です。綿糸は1inch(2.54cm)間、毛糸は10cm間、長繊維糸は1m間の撚り数で表されることが多く、また同じ撚り数でも糸の太さによって撚りの効果は変わり、太い糸では強撚に、細い糸では甘撚りになります。そのため、糸の太さに関係なく撚りの効果を撚り係数として確認する計算式があります。例えば綿糸の撚り係数は、甘撚りが3.4、並撚りが4.0、強撚が5.0~5.4程度となっています。一般に撚り係数が増えると糸が締まって硬くなり、保温性は低下します。ジョーゼットなどの強撚糸織物は撚り係数の多い強撚糸を用いて、表面にシボを与えています。
 
110. 糸の太さの単位
糸は太さ(繊維径、繊度と言う)によっても分類できます。その表示方法として、恒重式番手法と恒長式番手法があります。
 
111. 恒重式番手法
紡績した糸の太さは「番手」で示されます。糸の組成によって綿番手、毛番手、麻番手に分けられ、それぞれに基準の重さが設定され、その重さのときの標準の長さに対して何倍の長さかで糸の太さを表します。糸の重さを基準とするので恒重式番手法と言います。番手は太番手、中番手、細番手に分類され、数値が小さいほど太く、大きいほど細くなります。
 
112. 綿番手
綿糸、スフ糸、絹紡糸、綿紡績方式で作られた合繊紡績糸(ポリエステル紡績糸など)に用いられ、英式番手とも言われます。基準の重さは1ポンド(453.6g)、標準の長さは840ヤード(768.1m)、これを1番手とします。その糸が1ポンドになるときに840ヤードの何倍の長さになるかを算出し、2倍であれば2番手とします。綿番手の太番手は20番手以下、中番手は30~50番手、細番手は60番手以上。標準は40番手になります。
番手は「s」で示され、20番手単糸であれば「20s」、20番手双糸であれば「20/2s」、20番手2本引き揃えであれば「20//2s」とします。
 
113. 毛番手
梳毛糸、紡毛糸、毛紡績方式で作られた合繊紡績糸(アクリル紡績糸など)に用いられ、メートル番手とも言います。1番手とする基準の重さは1000g、標準の長さは1000m、毛番手の太番手は36番手以下、細番手は72番手以上、中番手はその中間を指します。
表示方法は、綿番手との混同を避けるため、「s」を付けない。48番手単糸であれば「1/48」、48番手双糸であれば「2/48」、48番手2本引き揃えであれば「2//48」とします。
 
114. 麻番手
麻糸、麻紡績方式で作られた合繊紡績糸に用います。1番手とする基準の重さは1ポンド(453.6g)、標準の長さは300ヤード(274.3m)となり、太番手は亜麻糸が40番手以下、苧麻糸が25番手以下、細番手はともに100番手以上となり、亜麻糸は最高で180番手になります。
表示記号は「s」が使われ、20番手単糸であれば「20s」、20番手双糸であれば「20/2s」、20番手2本引き揃えであれば「20×2s」とします。
 
115. 恒長式番手法
化学繊維の短繊維、長繊維、長繊維糸、生糸に用いる番手法で、綿や毛の短繊維に使うこともあります。単位は生糸にはデニール(記号:d)、化学繊維にはテックス(記号:tex)を用います。基準の長さが設定され、その長さの糸の重さが標準の重さの何倍かで糸の太さを表します。
 
116. デニール
1dは長さ9000mで1gになる糸の太さを表します。その糸が9000mのときに何gになるかでデニール数は決まります。つまり、数値が大きいほど、糸は太くなります。表示は、27デニール単糸であれば「27d」、27デニール双糸であれば「27d×2」、27デニール2本引き揃えであれば「27d//2」とします。単位表示のdは、「D」「中」と記すこともあります。
かつては化学繊維にもデニールが使われていたが、1999年にテックスに切り替えられました。
 
117. テックス
主に化学繊維の短繊維、長繊維、長繊維糸に用います。長さ1000mで1gの糸の太さを1texとする。2倍あれば2texと表示します。ただ、テックスは既存のデニール(9000mで1g)よりもかなり小さな数値になり、糸の太さをイメージしづらかったことから、化学繊維業界では1texの10分の1(10000mで1g)に相当するデシテックス(dtex)を用いています。
デシテックスの表示は、120デシテックス単糸であれば「120dtex」、120デシテックス双糸であれば「120dtex×2」、120デシテックス2本引き揃えであれば「120dtex//2」となります。
 
118. 番手、デニール、テックスの換算
糸の太さは以上の5つの単位で表されます。しかしその数値のままでは、異なる種類の糸の太さを比較しづらく、それぞれの単位に換算する計算式の一覧がございます。

<以上、ファッション衣料の原料と繊維になります>
 

「お疲れさまでした・・・ありがとうございます。」

私の生活スタイルも、2019年のコロナ禍から一変しましたが、
残りの人生を歩む目的が定まったことに感激しております。
 
目的地があるということが
生きていく支えにもなっております。
 
私は、ASEANの若者と接する時間が多くございました。
間違いなく、日本の友人より多いです。
 
彼らと共に生きるには
今までの価値観を変えていく必要があると感じていました。
ミャンマーでの滞在で、目指すものがハッキリしました。
 
ふと、日本の若者が海外で活躍するには
そんな思考も大切かなぁ〜とも感じております。
 
ファッション産業も、いろんな可能性があると思いますが
私は、従来のモノ創り発想に戻る気はありません。
 
そんな誓いの中、現実を受け止め・・・
私は前を向きます。
 
次回は、生地の知識についてご案内します。
どうぞ よろしくお願いいたします。
ファッションクリエイター株式会社 水谷勝範


Webからファッションを創る、それが私たちのプロジェクトです。服作りとはいえ、私たちが大切にしていることは、お互い共存し成長できる社会になることです。皆さまとの出会いを愉しみにしております。水谷勝範