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突然変異⑤ 脱塩基による突然変異

自然に発生する突然変異の三つ目の事例は,脱塩基反応です.

DNAの骨格であるデオキシリボースと塩基を繋いでいるN-グリコシド結合が活性酸素により開裂することで、塩基が消失する脱塩基反応が起こります。

脱塩基反応


アデニン(A)やグアニン(G)の欠損である脱プリン部位(apurinic site)や,チミン(T)やシトシン(C)の欠損である脱ピリミジン部位 (apyrimidinic site) の発生は日常的に起こっており,ヒトでは1日あたり1万~2万か所にも及ぶと推定されています(https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1568786420301142?via%3Dihub).

これらの塩基欠損部位(AP site)を修復する仕組みはいくつか知られていますが,その一方で修復される前にDNAポリメラーゼが来ると,DNA複製は一旦停止しますが,最終的には適当な塩基を入れて進行することが知られており,アデニン(A)が挿入されやすいと報告されています
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/39/12/39_12_786/_pdf/-char/ja)。

アデニン(A)が欠損した部位にアデニン(A)が挿入されるのは問題ありませんが,それ以外の塩基が欠損した部位にアデニン(A)が挿入されると,突然変異が生じます.

このようにして生じた遺伝子の突然変異が,タンパク質の機能や効率の変化を引き起こし,外部環境の変化に適応した変異が生き残る(子孫をより多く残す)ことで,生物は進化していくと考えられています.ダーウィンフィンチ(鳥)やオオシモフリエダシャク(蝶)の環境適応は,よく取り上げられる例なので,興味のある方はぜひ調べてみてください.今回の突然変異のお話はここまでにしたいと思います。


次回から運動装置「べん毛」について書いていきます.

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