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ティーは飲み物(千原こはぎ)

こんにちは、千原こはぎです。
水たまりとシトロン4巡目です。
さて、4巡目のテーマは、いろいろと協議を重ねた結果、「本棚にある、タイトルに飲み物が出てくる本」ということになりました。謎テーマです。

本棚を見渡して、その背表紙に飲み物を探しましたが、これが意外とないものです。
さちさんによると、「カレーは飲み物」「生卵も飲み物(ロッキーが飲んでたから)」「雨は飲めるから飲み物でOK」ということでしたが、わたしは飲まないのでそれらは無しということで、探しに探して見つけた一冊がこちら。

『アリスのティーパーティ』 ドーマウス協会/桑原茂夫 著(河出文庫)

「ティー」が出てきているので立派な「タイトル飲み物本」ということでいいでしょう。

昭和61年に初版が発行されたこちらの本は、いうなれば「アリスの国へのガイドブック」──『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』という不可思議で難解でナンセンスな物語の解説書という一冊です。わたしが持っているのは平成2年発行の第七版です。おそらく高校生くらいの頃、毎週近所の古本屋をチェックするのが日課になっていて、そのなかで奇跡的に発見し手に入れたのだと記憶しています。
アリスの著者であるルイス・キャロルはオクスフォード大学の数学教授で、そのせいかアリスの物語にもたくさんの言葉遊びやパズル的仕掛けが施されています。英語がからっきしのわたしは、この一冊を読むまでその魅力の半分も理解していなかったことに気づいた──という、わたしにとっては衝撃の一冊です。

久々に本棚から取り出してぱらぱらと眺めていたら、ふとアリスにまつわる過去の記憶が蘇りました。

12歳の春、わたしは突然大病を患ってしまい、みんなと一緒に中学に進学することもできずに長期入院していました。退院しても行動は制限され、運動どころか朝礼や掃除すら禁止された学校生活を送っていました。体作りにいちばん大事な時期に運動が禁止されていたため、体も弱くよく学校も休んでいました。
高校には進学しましたが休みがちだったため、とうとう3年生の卒業間近、出席日数の面で単位が危ういと、ジョン・レノン似の英語教師に呼び出されました。

「おまえは授業態度はいいし、提出物もテストも悪くない。出席日数だけが足りない。今度なんでもいいから洋画を持ってこい。視聴覚室で一本まるまる英語音声で字幕なしで観ろ。そしたら単位をやる。」

……えっ……神か……?Σ(゚Д゚)

ジョンから差してくる後光に目を細めつつ、そのとき持っていったのが、ディズニー版の「ふしぎの国のアリス」でした。何度も何度も繰り返し観て、すでにセリフは完璧にインプットされていました。
視聴覚室でひとり、楽しくアリスを鑑賞して、わたしは無事に英語の単位をいただいたのでした。ありがとうジョン。あのときのご恩は一生忘れません……(-人-)

そんなわたしの人生を救った(?)アリス。不可思議さ、難解さ、わけのわからないナンセンスが、今も変わらず大好きな物語です。

今回ご紹介した一冊は、そんなアリスの物語を面白おかしく、そしていたって真面目に解説してくれているので(とくに英語の慣用句や言葉遊びの解説は翻訳された物語を読むだけでは知り得ないことなので)、興味のある方はぜひ読んでみてください。

泣きすぎたわたしの海から逃げだしてきみを忘れるコーカス・レース

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