無惨にも吊るされたブラジャーの気持ちを考える
すぐ近くに同じくらいの大きさのアパートが並ぶように建っている。
あちらの庭を挟んでいるものの部屋の中がのぞける距離なのだが、衝立だったり植木があって丸見えにはならない配慮がされている。
とはいえこちらの玄関側は向こうの建物のベランダ側で、外干ししている洗濯物は丸見えだ。
そこで衝撃的な光景を見てしまった。
ピンチでいろいろ吊るせるハンガーの一番外側、こちらから見える側にブラジャーが干されていた。
女性のみなさんは気を付けていると思うが、ブラジャーを干すときは形が崩れるのを防ぐため、アンダーバスト部分をピンチで挟んでさかさまにしたり、ホックの部分を両方ピンチに挟んだりするものだ。
しかし、そのブラジャーは片方のホック部分を一点だけピンチに挟まれ、でろーんと吊るされていた。
他の洗濯物よりも長さがあるため、飛び出て目立っていたし、なにより外から一番見える位置に干されているため、どうしても目がいってしまう。
細長い布地に、途中で丸いクレーターのようなたまり場が2か所ある、不思議な洗濯物。
色はもう覚えていないが、白かベージュか、ぼんやりした色で日常感溢れる感じだったと思う。
今自分も同じものを着けているのだが、初めて見るような感覚がした。
下着泥棒という言葉もあるが、あのブラジャーには色気は感じないし、欲しいとは思わない気がする。
その部屋で洗濯物が干されているのは何度か見かけたものはあるが、あのときほどあからさかにブラジャーが干してあるのは見たことがない。
たまたまブラジャーが外側に向いてしまっただけ、だと思う。
それを見たのは数か月前なのだが、いまだにたまに思い出す。
そのブラジャーはどんな気持ちだったのだろうか。
ちょっと可哀そうに見えたんだよなあ。
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