みずしまれい

”なんだかほっこりする物語” 忙しい毎日を送る方に、ぜひ読んでほしい。 日本児童文学誌…

みずしまれい

”なんだかほっこりする物語” 忙しい毎日を送る方に、ぜひ読んでほしい。 日本児童文学誌でも批評掲載あり、童話作家として活躍する母の「ねむっていた」エッセイ、童話を掲載しています。 ※地方新聞掲載 ※大手塾試験問題に掲載

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#001 カボチャ狂想曲

この「カボチャ狂想曲」は、日本児童文学者協会賞に推薦され批評を頂いた作品です。カボチャが大好きな母ちゃんとユウキのやり取りから、読み終わると優しい気持ちになります。(※筆者娘コメント)   カボチャ農園「おーい、終わったよー」 ユウキが大声で呼ぶと、校庭で遊んでいた大ちゃんとケンちゃんはあわてて走ってきた。 「早かったねー、もっとおそくなるかと思った」  背の高い大ちゃんがいうと、小がらなケンちゃんも続けた。 「くま先生は、おこりんぼだからな」  三人で校門を出て家に向

    • わらいじぞうさん

      あやかの家は のろし山のふもとに広がっている村の中ほどにある。 昔武将たちが戦いの合図にのろしを上げたという山は、頂上がとがっていて、遠くから見てもすぐわかる。 村はずれにのろし山の登り口があり、そのあたりは広く平らになっていて、はじっこにおじぞうさんが祭られている。おじぞうさんの周りには大きな木が何本か枝を広げていて、おじぞうさんを守っているように見える。 おじぞうさんはにっこり笑った品のいい顔をしていて、「わらいじぞうさん」と呼ばれ、お参りする人が絶えない。 いつも

      • ねえちゃん

        「ねえちゃんのバカ」 「なにいってるの。マミがいけないんでしょ」 ナナが大切にしていたリカちゃん人形を、妹のマミがかってに出して遊んでいたので、ひったくってとった。マミがお人形に無理に着せかえたので、お気に入りのピンクの洋服が、ほころび始めている。 「どうするの、べんしょうしてよ」  思わずどなりつけた。 「ワーン、ワーン」 マミはありったけの声で泣き出した。 「またけんかしてるのかい。どうしたんだい」 おばあちゃんが、子供部屋に入ってきた。 お母さんは仕事に出かけて

        • みどりの手袋

          明るい陽ざしの中で、病院の庭の桜が満開になり、チューリップも色とりどりに咲き乱れているのに、めぐみはぼんやり窓ぎわのベッドにねていた。 五年生の三月末 めぐみは自家中毒症の発作がおきて入院した。 それまでもたびたびおきたが、四年生の春、二週間入院して以来おさまっていたので、とてもショックだった。 ずっと食事が食べられなくて、学校へ行けなかった。 仲よしのミカやエリ子が何回も来てくれた。でも、新学期が始まって、みんな新しい教科書で勉強しているだろうなと思うと、一人だけとり

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        #001 カボチャ狂想曲

          ピンクのかさ

          ピンクのかさ  なおちゃんが赤いランドセルをしょった、あこがれの一年生になって、一ヵ月近く過ぎました。でも、なぜかこのごろ、朝いつもぐずぐずしています。集団登校の場所まで、お母さんに送ってもらい、一列で出発するまでお母さんにくっついています。 夜は夜で、「明日休みならいいなあ」と。 「困るわねえ、学校きらいなのかしら」お母さんは心配顔です。 なおちゃんは学校はきらいではないのですが、 となりに並んでいるケンちゃんがいやでした。きょうだっていいともいわないのに、「おい、かせ

          ピンクのかさ

          夕ぐれ症候群 

          夕ぐれ症候群って、知ってる? ぼくは初めてこのことばを聞いたとき、夕ぐれになると見える流星群のことかと思っちゃった。 ほんとはぜんぜんちがっていた。 夕ぐれになるとでてくる病気、それが夕ぐれ症候群だったのだ。   *     *     * ぼくの家にばあちゃんが引っこしてきたのは、三か月前 五月の連休にみんなで父さんの生まれた山の家に行ってとまり、ばあちゃんをつれてきたのだ。 ばあちゃんは今年八十三才になる。 五年前じいちゃんが亡くなってから、一人で山の村で畑をたが

          夕ぐれ症候群 

          ゆみちゃんが学校にきた

          夏休みが終わってまだー週間にしかならない五年ー組の教室 まだザワザワしていて、陽にやけた友だちがおしゃべりしたりふざけっこしている。 コツコツコツ。 足音がしてメガネをかけて、体の大きい川田先生が教室に入ってきた。 みんなさっと席にすわった。 ゆみの席だけポツンとあいている。 「ゆみは今日も休みだな。かおり、なにか聞いているか」 「いいえ、聞いていません」 かおりはギクッとして、反射的にいった。 ぐずぐずしていると、先生はどなるくせがあった。 ゆみは夏休みが終わって

          ゆみちゃんが学校にきた

          ナナミと桜の木 

          山のふもとの小さな駅に、大きな桜の木がありました。 おとなのひとかかえもある黒い幹は、枝を形よく回りじゅうにのばしてすっくと立っていました。 春になると枝いっぱいにみごとな花をつけ、駅に来た人は、うっとりとながめていきます。春の陽ざしが暖かい日でした。 「ママ、早くー」 五才のナナミは走ってくると、桜の木にかけよりました。 山から吹きおろす風で、花びらがヒラヒラとちり、ナナミは両手を広げて花びらをうけながら、体じゅうで笑っています。 桜の木はナナミが小さい手をのばすと、枝を

          ナナミと桜の木 

          花友 - はなとも

          あおいが小学校に行く途中に、広い庭に色とりどりの春の花が咲き乱れて、おばあちゃんの回りに、楽しそうに人が集まっている家がある。 お年よりだけでなく、子どもや若い人までいてにぎやかだ。 赤や黄色、ピンクの花々に、花好きのあおいは見とれてしまう。 4年生のあおいは、この町に引っ越したばかりでまだ友だちがいない。 クラスの中はグループになっていて入りにくい。 でもあの家のおばあちゃんは、いつも花と友だちに囲まれて楽しそうだ。 どうしてなんだろう。 今日学校では、初めて自由参加の

          花友 - はなとも

          一本の桜の木

                           川岸に一本の桜に木がすっくと立っていました。 大きくて枝ぶりのいい桜の木は、お花見の季節になると、町中の人たちが見に来る場所でした。 桜の木の回りは、広場になっていて、家族や仲間でごちそうを広げて食べる人たちや、若いカップルや子供たちでにぎやかでした。 春になったばかりのある日、風は少しつめたいけれど、天気がよくて雪がすっかりとけたので、子供たちがボール遊びをしています。 「それ、いくよ」 「オッケー、まかしといて」  今まで外で遊べ

          一本の桜の木

          死を見つめた一週間

          華やかに装った、九十人近い若い同僚たちが見つめる中、私は保健師会の送別会の壇上にいた。市の保健師として、同じく定年退職する二人の保健師と一緒だった。     全員に注目されて、緊張して花束をもらい、挨拶を促され話し始めた。意外に落ち着いて声が出て、ほっとした。 「長い間、皆さんには本当にお世話になりました。最初の二十年間は、地区担当の保健師として地域を回り、その後一年間、県の保健所に実務研修に行き、市保健所の立ち上げに関わりました」   そのときだった。あの出来事が一瞬

          死を見つめた一週間

          夕日のコキア

          「来週の月曜日は、図画工作の時間があるね。                             いいねえ、ゆりちゃんは絵が上手だから」 土曜日の学校の帰りに、仲良しのまきちゃんがいった。 「そんなに上手じゃないよ。去年は、たまたま運がよかっただけ」 ゆりはそういいながら、5年生だった、去年のことを思い出していた。 何を描こうか、ずっと考えても決まらなくて、早くしないと授業時間が終わっちゃうとあせったなあ。 そして、雨の日の校門で、色とりどりのカサを持った生徒たちが、友

          夕日のコキア

          もらえなかった、チョコレート

          「さあ、これで終わりにしましょう。おつかれさま」 「おそくまでごくろうさん」  地区の育成会の役員のおばさん、おじさんたちが、声をかけてきた。 もうあたりはうす暗くなりかけている。  6年生女子と、育成会の役員さんで、公園の花壇の秋の草花を片付けをすることが話し合いで決まった。  秋の日曜日の午後、6年生女子のまみたち6人は、大人たちが刈った枯れたコスモスや百日草の花を、一生けんめいしばって束にした。 みんなで公園のすみに運ぶと、束は小山のようになった。 役員さん達が、明日

          もらえなかった、チョコレート

          ハートの実

          マミは学校帰りに、生垣にからまった、かれたつるに茶色の袋があるのを見つけた。 仲良しのエリが袋をやぶいた。 「わあ白黒のタネが入ってる。植えてみよう」 エリは保育園から一緒で、三年担任のヒロミ先生は、仲良しさんとよんでいる。マミの家のうら庭はお母さんの野菜畑。二人ですみっこに植えて水をあげた。もうひからびたタネで、そのまま忘れていた。 しばらくして、マミがうら庭に出てみると、ポツンと緑の小さな芽が出ている。マミはあわてて近所のエリの家に走って行った。 「わあ、ホントに芽

          ジャンプシュート!!

          監督が話し始めた「では次に名前を呼ぶのが来週の試合にでる者だ。いいか。小沢ヒロ・・・大川タクヤ以上5人。補欠は村沢マサ、青木ジュン、・・・北島ユウキ以上7人だ。わかったな」 監督の太い声が体育館にひびいた。 ぼくは突然胸に重い物をつめこまれたようで体が動かなくなった。 ぼくが同じクラスのタクヤとバスケット教室にはいって6ヶ月たつ。 週に三回、となりの小学校まで練習に行っている。 教室には四~六年生まで40人くらいいて、六年生のぼくはこのごろやっと試合に出られるようになった。

          ジャンプシュート!!

          デザート食べたい! 

          「いただきまーす」給食当番の声で,三年一組では、みんながいっせいに食べ始めた。 「あーあ、今日もだめだ」 アユミは並んだ給食のお皿を見て、ため息をついた。アユミのきらいなピーマンがたっぷり入った、野菜と肉のいため物だった。 そしてデザートのスイカ。今日は真っ赤で、一切れが特に大きい。 大好きなスイカは見るからにあまく、おいしそうでよだれが出そうだ。 となりの席のアキラは、モクモクとおいしそうに食べている。 クラスで一番大きくて太っているせいか、何でもよく食べる。 パンだけを

          デザート食べたい!