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大企業の採用担当をしているときに出会った、ある先生の話。

以前勤めていた会社で、採用・人事を担当していた。
転職後も就労に関する仕事を続けているが、
年度替わりの時期に思い出すある先生の話。

その先生は工業高校で長く進路指導を担当されている。
就職希望の生徒と企業の橋渡しを行う役割だ。

「高卒就職」にあなたはどんなイメージを持つだろうか?

私は少しネガティブなイメージを持っていた。
高卒で就職するって、
家計的にしんどいのかなとか、
勉強が一定水準以下しかできないのかなとか。
今思い返すと恥ずかしいくらい、
うがった見方をしていた。

大学全入時代という言葉に、
良くない勘違いをしていたと思う。
大学に行くのが当たり前ではなく、
18の春はいろんな形のスタートがある。
こうあるべきと、
世の中を狭く見てしまう事はとても危険だ。

そのように価値観を大きく揺さぶられたのは、
その先生の進路指導に対する考え方だった。

先生が生徒さんの就職先を考えるときに、
最も大切にされていたのは、
『大学に行くよりも価値ある4年間を過ごすことができ、
 将来の出世も十分に期待できる企業であること。』
技術の基礎は学校でしっかり教えていく。
まずは技術屋としてスタートし、
その先に立派な社会人になって行ける環境が
その会社にあるか。

いつお会いしても、その軸はぶれることがなく、
当たり前の如く常に真摯であられた。

それをいつも真面目一辺倒に語るのではなく、
話し方に茶目っ気もある方だった。
年度末のご挨拶に伺うと、
「来年も担当します。
 進路やめさしてくれないんですよ。」
と冗談まじりにお話されるのが定番になっていた。

ひとしきり笑いながらお話し、
帰り道にすっと襟を正す思いがした。

進学先はやりたいことを基準に選ぶけれど、
その先でどんな先生に出会えるか。
それが人生を変えると言っても過言ではないだろう。
私は生徒としてその先生に出会わなかったけれど、
職業人生に携わる仕事をする上で、
忘れられない人だ。

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