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フェスで観たいアーティストが被った時、どうするか

つい先日、今年のサマーソニックのタイムテーブルが発表された。
しかしながら、これを見た私は早々に頭を抱えることとなる。

1日目の東京公演において、OneRepublic(以下ワンリパと表記)とNothing But Thieves(以下NBT)の演奏時間が完全に重なっていることがわかったからだ。

しかもメッセとマリン。両方共をフルで観ることは不可能。

ワンリパはトリ3つ前で、NBTはトリ4つ前のスロット。そのためある程度NBTを観てからマリンスタジアムに移動して、ワンリパを観る想定を当初はしていた。
どちらも私にとってはお目当てのアクト。まさか、ここまで重なるとは思いもしなかった。

一方で、事前予測では絶対に重なると思っていた準トリの星野源とBelle & Sebastian。被りはさほどでも無く、両方観ることもできそうだ。
いずれもManeskinの開始時刻と終了時刻が想定よりも早いゆえに起きた現象なのだが…いやー、困った。本当に困った。


私が初めて夏フェスに参加してから10数年の月日が流れたが、フェスにおいてこういう悩ましい思いに駆られるのは初めてではない。
こういう「フェスあるある」な場面において、私が考える視点や行動をまとめてみた。


①片方は諦めて単独公演に行き、片方はフェスで観る

遡ること2019年のサマソニ東京1日目。
準トリのThe 1975とSnow Patrol(以下スノパト)の出演時間がある程度予想していたとはいえ、重なった。

前者はマリンスタジアムで後者は幕張メッセ。参加されたことのある方はお分かりいただけると思うが、この2箇所を人混みの中で移動することを考慮すれば、両方をフルで観ることは難しい。

この時私が取った戦略は次の通り。

  • サマソニでは前半をスノパト→マリンに移動してスタートから1975(ただし前方ブロックは諦める)

  • スノパトは後日の単独公演(ヘッダー参照)で堪能する


スノパトの来日公演のチケットは一ファンの責務として早々に確保したが、内心では迷いもあった。実に13年ぶりの来日が、何故バンドではなく敢えてのアコースティック編成なのか。そんな思いがずっと拭えなかったからだ。
ただ、そんな中発表されたタイムテーブルを見た私は、迷いながらも単独公演のチケットを確保した過去の自分に対して、軽くガッツポーズをしたのだった。

私はサマソニ当日にスノパトのバンドTシャツを着ておきながら、早々に彼らのステージから離脱し、The 1975のライブを最初から最後まで観たのだった。

②その時の旬のアーティストを優先する

The 1975の2019年当時の最新作だった"A Brief Inquiry into Online Relationships"。
このアルバムは年間ベストに選ぶメディアも続出し、日本国内での反響もかなりのものだったと記憶している。

The 1975をフルセットで観ることを選択したこの時の判断は、今でも正しかったと思っている。
彼らの曲は、基本的にはメロディアスで親しみやすい。一方でこの日のライブは、きっちり仕事をこなすリズム隊とは裏腹にヴォーカルは酒を煽りながら歌い、終いにはステージにぶっ倒れて半ば強制的に演奏時間が終わるという、何とも危なっかしいものだった。
現場の目撃者になってしまったような、そわそわした気分を抱えたまま観たマリンステージ大トリのB'zは、記憶があまりないのが正直なところである。

若気の至り、当日のモード、色々と要因はあったのだろう。しかし確実に言えることがあるとするなら、今彼らがライブをしたとしてもきっとこうはならない。だからこそ、価値があるのだ。

バンドに勢いがある、その時期を逃さずに観る。極東の島国であるここ日本においては、このハードルが異常に高い。十年近く来日が実現しないこともザラだ。だからこそ、機会があるなら逃さない手はないのである。

例えば前述のスノパトについて、私は2006年2月に来日公演を観ている。場所は代官山UNIT(今となっては考えられないキャパだ)。
このタイミングは代表作"Eyes Open"のリリース直近であり、"Chasing Cars"のブレイク前夜。またとない絶好のタイミングだった。

他にも、"Neon Bible"リリース後に、今は無きStudio Coastで観たArcade Fire(ヴォーカルWinの一連の性加害問題の一件以降、彼らの音楽を以前のようには聴けなくなってしまったが)や、以前記事にしたことのある2008年サマソニ深夜枠のLady Gagaも、今でも印象深いライブとして強く私の心に残っている。

今売れているアーティストには必ず理由がある。ライブは、それをダイレクトに体感できる貴重な現場の一つだ。
これを過去の体験から学んでいるからこそ、私はその時に売り出し中の勢いがあるアーティストのステージには、出来る限り足を運ぶようにしているのだと思う。

③初めて観るアーティストを優先する

私はフェスにおいては特に、一度も見たことのないアーティストを優先して観るようにしている。

2019年のフジロック、2日目。
この日のグリーンステージ大トリはSia、ホワイトステージのトリがDeath Cab For Cutie(以下DCFC)。そして案の定、両者の演奏時間は重なっていた。

"Chandelier"の大ヒットで知られるSiaは、私が女性SSW好きという事実を抜きにしても、間違いなくこの年のフジロックで外せない出演アーティストの一人だった。

一方のDCFCは、UKロック好きを公言する私が新作を必ずチェックする数少ないUSバンドの一つであり、良心とも言える存在。サマソニで過去に2回(2008, 2012年)ライブを観た外、単独公演にも足を運んでいる。

もし私が現地観戦組だったなら、どちらを観るか非常に頭を悩ませたことだろう。この年はライブ配信でフジロックを楽しむことにしたものの、それでもどちらをリアルタイム視聴するか最後まで悩んでいた。

結果、選んだのはSiaであった。
なぜか。理由はシンプルで、これまでに彼女のライブを観たことがなかったからだ。

好きな同じアーティストのライブをリピートし続ければ、きっとハズレはないし、確実に満足感を得られる。
けれど、何となく先の展開が読めてしまう(締めはこの曲とか、この場面では必ず弾き語りコーナーがあるとか)。たまには、新しい刺激が欲しいと思うのだ。

そんな刺激を得る場として、多くのアーティストが一堂に会するフェスはうってつけだ。興味はあるけど観たことがない、そんなアーティストがいる場合は優先的にマイタイムテーブルに組み込むように心がけている。


Siaはライブにおいても顔出しは一切ない。MCもない。広々としたステージで踊るダンサーの躍動感とは対照的に、まるで舞台装置の一部かのように微動だにしない。ただ、歌声の熱量と強度だけで観客を圧倒していた。月並みな表現だが、凄いものを観た。
こういうショック療法に近い体験は、自分から新しい人や物や事に接しない限りはそうそう出来ないよなと、心から思う。

なお、Siaのフジロック配信に釘付けになりながら涙を流す私を見て、同居の夫は若干(いや、かなり)引いていたらしいが、この際気にしないことにする。

今年のサマソニで私が取る戦略は…

以上、①〜③の視点から今年のサマソニにおいて、ワンリパとNBTのどちらを観るかを改めて考えてみる。

①ワンリパは単独公演の開催が決まっているが、チケットの一般発売日にトライするもあえなく撃沈。NBTと被ることを予想しておらず、先行でチケットを確保しなかった私の判断ミス。従って今回は単独公演の存在は排して考える。

②旬のアーティストかどうか。ワンリパは新作がリリースされたばかりだが、"Counting Stars"がヒットしたあの時の飛ぶ鳥を落とす程の勢いは落ち着いている印象。対するNBTは最新作が彼らにとって初の全英1位。勢いはこちらの方があるはず。

③今までに観たことがあるかないか。これはNBTに1票。ワンリパはサマソニで1回、単独公演で1回の計2回既に観ている。

以上を総合的に考えると、現状の当日の動き方としては、スタート時間はメッセでNBTを観る、ということになると思う。
そのまま最後まで観るか、それとも途中でマリンスタジアムに移動してワンリパを観るのか。それはその時にならないと分からない。
しかし後者に備えて、ワンリパとNBT、いずれの最新作も予習だけはしておきたいと思う。

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