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あの頃最強だった俺たちの青春賛歌~かぐや様は告らせたい ファーストキッスは終わらない~

人は羽化した状態で生まれてくる。子供のころは自由に飛び回れる超能力者だったが、辛すぎる現実をやり過ごすために、心の内に繭を作り、いろんな物を背負いこむうちに背中が曲がり、いずれは老いて惨めに這いつくばる芋虫となり、無念の内に死ぬ。
社会性と引き換えに、飛び方を忘れる哀れな生き物。それが人間だ。

さて、『かぐや様は告らせたい』は三期アニメ化された漫画原作アニメだが、最新シリーズが特別上映として映画館で放映された。文化祭でウルトラロマンチックな初キスを遂げた白銀とかぐやだったが、その時のかぐやのベロチューが原因で気まずくなっていたw
2人の行く末は・・・。

「なんだこいつら。はよ結婚しろ!」

「素人が。この付きつ離れつがいいんだろうが」

「千花ちゃんかわいいよ(藤原書記原理主義者)」

ニコニコで視聴していると多彩なコメントが流れる。全体的に好意的な意見が多いように思う。中には過去の自分を重ね合わせて、枕に顔をうずめている視聴者諸氏もいるようで、ある意味多くの人の共感を得ている。

作中に登場する大人たちが基本的にいい人ばかりで、視聴者の代わりに未熟な主人公たちを癒したり、背中を押してくれる(中にはからかって遊ぶ人もいるが)。どこか昔の自分に重ねて、感情移入しているように見え、いわば未来からの手紙といった形だ。

メインキャラの少年少女達もまた、クセがあるものの皆いい奴ばかりで本当に応援したくなる。純粋で、尊大で、何でもできると思っていて、でもそのくせ臆病で素直になれない。情熱と虚勢で爆発せんばかりにエネルギーを迸らせている。彼らのキャラクターは、あの頃最強だった俺たちの因子を受け継いで作られている。
筆者も高坊の時は誰よりも賢いと思ってたし、青い正義感を漲らせていた。しかし、世界は広いし深い。上には上がいて(下にはまた下がいるんだけど)、自分が大したことない人間なのだと日替わりで突きつけられると、攻めの姿勢は鳴りを潜め守勢に回らざるを得なくなる。どうかすると現状維持すら難しくなり、R.I.P.やがて年老いて死ぬ。
もしあの時ああしてたら・・・。そう思ったことがない人はいないだろう。まだ若い彼らの中に昔の自分を見るから、どの子たちも愛しいのだ。
また、視聴者の代弁者たる大人達を見て、今の自分を再定義し、昔の自分と重なる白銀達に向けられる叱咤激励で、古傷が癒されるのだ。

クライマックスに近づいて思い出したかのように恋愛頭脳戦が再開されるの草。初恋は実らないというが、そんな言葉は犬にでも食わせておけ。あの頃最強だった俺たちは、いや俺たちなら必ず成就する。虚勢を張り続け頂点に挑み続けた白銀、最強であるがゆえに孤高の存在になったかぐや。思えば似た者同士だ。無理をする白銀も、本当はダメダメな白銀も、厨二全開の白銀も、また、氷のように冷たい氷かぐやも、子供っぽいかぐやちゃんも、年頃の女の子のかわいい一面のJKかぐやも全部の全部が救われないといけないのだ。
もちろん、ラブコメギャグも健在で劇場で笑いをこらえるのに必死だったw!

2人の行く末がどうなるか、みんなも劇場で見届けよう!

氷かぐやとなまはげサンタ

P.S. 映画館の音響で聞く「おかわいいこと」最高でした。
OPは当然、永遠の大型新人アニソン歌手 鈴木雅之(パンフのインタビューで自認してて草)。今回はアダルトさは控えめで平成中期のトレンディドラマみたいなじゃっかん爽やかな曲になってて、そういうところでも時間の流れを意識させる。


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