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Jesus

色のない旗を掲げ 言葉のないプラカードを持つ
剥き出しの胃袋 やせた指でなぞりながら
家のない子供たちは 先のない未来を急ぐ

聖なる土地を巡り 聖なる争いは続く
聖なる殺しの 狼煙が上がる
滴り落ちる水の色は いつか紅に染まり
砂の河を流れ落ちて 油の海に注ぎ込む

Jesus, Jesus お前の娘たちは
Jesus, Jesus 今も救いを求めてる

目と目を合わせ 歯と歯を合わせ
舌と舌とを からませ合った
指と指を もつれ合わせ 体を合わせ
それでも心は どこまでも すれ違ってく

Jesus, Jesus お前の息子たちは
Jesus, Jesus 今も彷徨い続けてる

何を十字架に架け 何を置き去りにした?
誰が誰を裁き 誰が許すの?

色のない旗を掲げ 言葉のないプラカードを持つ
悪魔も天使も神様もいらない
死ぬ時ぐらいは 裸で殺してくれ

Jesus, Jesus お前の娘たちは
Jesus, Jesus 今も救いを求め
Jesus, Jesus お前の息子たちは
Jesus, Jesus 今も彷徨い続けてる

*1990年8月、イラク軍がクウェートに侵攻し全土を占領下におきました。前年の1989年11月には東西冷戦の象徴であったベルリンの壁が崩壊し、多くの人々が平和な世界の到来を信じた矢先の出来事でした。冷戦の終結は米ソの二大国によって保たれていた世界のパワーバランスを不安定化させ、地域紛争の頻発を招いたのです。

湾岸戦争の舞台となった中東地域は、古くからの宗教の発祥の地でもあります。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教と、現代の世界にも大きな影響を及ぼし続けている一神教は、全てこの地域から生まれました。人を幸せにするために生まれたはずの宗教が、逆に人を争わせ、殺し合いをさせているという矛盾。そのやるせなさが、この歌になりました。

この歌は友人の矢谷トモヨシくんとの共作です。ピースボート地球一周クルーズに一緒に乗船していた僕らは、1991年1月の多国籍軍の武力介入が始まった時、インド洋の海上にいました。空母が近くを航行し、戦闘機が頭上を飛び交い、戦争を肌で感じた瞬間でした。日本に帰国してから、僕が詞を書き、矢谷くんが曲をつけて、この歌ができあがりました。

あれから30年以上経ちますが、中東を巡る状況は改善するどころか、更に悪化しているのが現状です。僕は特に宗教を信じてはいないのですが、それでも初詣や墓参りには行くし、クリスマスも楽しみます。宗教が社会や文化に及ぼした多大な貢献も、それなりに理解しているつもりです。それでもやはり、何かが間違っているというやるせなさは消えないのです。

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