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M-1グランプリ2019概評①

やーおもしろかった。M-1グランプリ2019。

昨日はほぼ丸々M-1を軸に行動してました。午前中仕事して、14:00から敗者復活戦だからそれまでにお昼済ませて、18:30から本戦だからそれまでに夕飯準備して、みたいな。完全に振り回されてる。奥さんもろとも振り回されてる。でも今回はしっかりそれに値するクオリティーの大会でした。神回。敗者復活戦から本戦、なんならそのあとのテレビ千鳥まで含めて神回でした。なぜ含めた。

というわけで前回の宣言どおり、今大会に出場した全組の感想を書いてみたいと思います。

いちおうしがないながらも元芸人という立場ですが、自分のことはがっつり棚に上げて書いております。現役時代は万年二回戦止まりでした。

そして大前提としてすべての芸人さんを尊敬しておりますので、そこはどうぞご了承ください。

あともちろん盛大なネタバレを含みます。まだ観てない方はいますぐお戻りください。

それではまいります。とても長くなりますが、それでもよければお付き合いください。


1)カミナリ

なんとまさかの敗者復活戦からです。

あるあるゲームでお風呂あるあるを言い合う。序盤は共感できないあるあるの連続から、だんだんまなぶくんの家族の実情が見えてくる、的なネタ。

一回ひととおり流れを見せてから「そういえば◯◯だな!」「いやそれよりも◯◯だったな!」「そもそも◯◯だな!」と戻りながら伏線を回収していくカミナリの黄金パターン。名探偵たくみ。

不利な一番手にもかかわらず完全に自分たちの空気をつくったのはさすが。出順が違えば結果も変わったかも。

ハイライト:おめえの家族水周りにしかいねえな


2)囲碁将棋

ウォシュレットの話を聞いたら完全に「ウォシュレットのケツ」になった文田。「ラーメンの口みたいに言うな」と言う根建だが文田は「梅干しのこめかみ」「ネギの首」「打たせ湯のケツ」と重ねていく。

「◯◯の××」で取っていくシステムはなかなか良かっただけに、昭和感やサイコ感のような無駄にキャラをブレさせる小ボケが少し残念だったかも。しゃべくりの割に会話やトーンに緩急がなく押しの一手だったのも惜しい。

ハイライト:スーパー銭湯の話してたら鍵の手首になってるわ


3)天竺鼠

医者のコント漫才。とは言うものの川原さんがボケまくって瀬下さんが振り回される、いつもの天竺鼠の荒唐無稽漫才。

野爆くっきーさんのシュール部分を抽出して煮詰めたような「大当たりか大はずれしかない」みたいな、お笑い界屈指の孤高のシュール・川原さん。今回はそれが大当たり。飛び出しで先にセンターマイクについて片方の靴を脱いでマイクの上手に置き、瀬下さんが板付くなり履いて放った「場所取っといたで」というファーストパンチからがっつり掴まれたまま4分間を終えた印象。

ハイライト:ボケ終わったから先上がらせてもらうわ


4)和牛

不動産屋のコント漫才。水田が川西に物件を紹介していくがことごとくだれか住んでいる物件。最終的に間取りよりもだれか住んでいるか住んでいないのかに価値観が変わっていく。

3年連続準優勝で毎年進化した新しい漫才を見せてくれる和牛。今回もコント中の舞台の奥行きの使い方だったり川西の感情の自然なクレッシェンド感だったり後半のWボケ感だったり、和牛らしい技巧派な漫才だった。

ただその「和牛らしさ」のせいか、最近は良くも悪くもうまくまとまりすぎてしまったような気がする。さらにシュールの限りを尽くした天竺鼠のあととあって余計に上品すぎる印象を受けた。

ハイライト:おれもガチガチに固まってるやんか


5)ラランド

有名芸能人になったニシダにめんどくさい小学生のさーやが街でからむ。

今回唯一のアマチュアコンビながら、さーやのキャラも強くニシダのツッコミもいい具合に力が抜けていてとても見やすい。ただめんどくさい小学生の大喜利の羅列になってしまったのでもう少し展開があればよかったかも。今後に期待。ナベプロあたりに拾われてほしい。

ハイライト:下腹部にちょうちょ足しといて


6)マヂカルラブリー

こどもが痛くないように注射を打ちたい野田クリスタルとこども役の村上。が、初手から「オイ、こっち見ろ」と痛い注射を打ち続ける野田クリスタル。

基本的に「痛い注射を打つ」というひとつのボケを繰り返すだけの漫才。マヂラブらしさといえばそれまでだが、野田クリスタルのキャラで押し切るも村上のトーン高めのツッコミが一辺倒で息がつまる漫才ではあった。

ハイライト:そのズッ友です


7)ミキ

「とびら開けて」を歌いたい亜生と、曲を知らないのに付き合わされる昴生。

「うるさい」と言われがちの昴生のツッコミだが、個人的には緩急のつけ方がひじょうに達者だと思っている。どちらかといえば亜生のボケが弱いのが気になっていたが、回を重ねるごとに亜生もだんだんボケとして機能していて嬉しい。

漫才師として着実に成長しながら兄弟喧嘩感も残っていてとてもいい。

ハイライト:俺の中に王子がいない


8)くらげ

女心がわからない杉と、わからないながらも相談に乗る渡辺。「わかんねえけど」と言う割に長々と芯食ったアドバイスをしていく。

芸歴一年目、テレビ初出演とは思えない堂々とした立ち振る舞いのしゃべくり漫才。とはいえシステムがわかったあとのやりとりが観てる側の想像を超えてこなかったのは一年目らしさか。今後に期待。

ハイライト:おまえ二重だな


9)四千頭身

教師になって生徒をしかりたい都築。叱られる生徒の後藤・石橋の役名が「浜田、松本」や「内村、南原」など大御所芸人を連想させると思いきや、「矢部、入江」「加藤、松尾」「淳、亮」などトラブルを起こした芸能人の苗字になっていく。

四千頭身の漫才わりとすきだったけど、今回に限っては全然ハマらなかった。ただ先輩芸人の名前を並べるだけならまだしも、トラブルを起こした先輩をイジってゆるスベりしてしまった。あれはいただけない。事務所から怒られるレベルな気がする。もっとおもしろいのを知ってるだけにとても残念。検索ちゃんでやったネタのほうが100倍よかった。

ハイライト:木梨か後藤かで石橋の重みが変わってくる


10)東京ホテイソン

英語がわからないショーゴに「This is a pen.くらいわかるだろ」と単語ごとに「Thisがこれ、isがは、a penがペン」と意味を教えるたける。ショーゴに言わせてみると「is is is this this is this this」で「わわわこれこれわこれこれ」になる。

出始めたころからすきだったたけるの神楽風ツッコミ。以前はどうしてもツッコミに頼りがちだったが最近はショーゴのボケ単体でも成立するレベルになってバランスがよくなってきた。観客から拍手が湧くほどショーアップされている笑いやすい漫才だった。

ハイライト:お客様に人間の出口を見せるな


11)錦鯉

オリジナルの数え歌をつくってきた長谷川さん。「これを聴けば長谷川のことがわかる」という長谷川さんの数え歌にひとつずつツッコむ渡辺さん。

初見だと長谷川さんのいかつい見た目とのギャップに処理が追いつかないくらいのアホキャラが今日も絶好調。渡辺さんのやさしい穏やかなツッコミも冴えていた。台本だけ見るとよくある歌ネタにもなりかねないが、お二人のキャラで唯一無二のものになっている。が、やはりオリジナルソングに1行ずつツッコむ手法はやり尽くされた感がある。

ハイライト:8つ やましいことがある


12)セルライトスパ

ディズニーで働きたい大須賀。肥後を面接官にディズニー採用面接のコント漫才。

大須賀の愛嬌ある中に毒気のあるキャラが巧みに使われていた。「小ゲロを吐いても飲み込める」「ありがとうが言えない」の伏線の使い方、マリオの被せなど段落ごとに見るとおもしろいが、ラランド同様に採用面接だと展開が生まれないのでどうしても一対一の大喜利問答になってしまうのが残念。

ハイライト:いま振り返ると、トータルキツかったです


13)ダイタク 

コンビニの接客を見せたい大と、客役に乗り気でない拓。拓はハーゲンダッツを大に食べられたと疑っていて不機嫌。大は立て替えた2000円を返してもらってないと拓に怒る。なんとかコンビニ設定に戻るも随所にお互いハーゲンダッツと2000円を匂わしていく。

一卵性双生児を活かした双子ならではの設定は見事。コント漫才に兄弟喧嘩のメタ設定を追加した劇中劇漫才は高い演技力が必要だがそこもクリアしていた。

兄弟喧嘩に寄りすぎて終始喧嘩口調のままでメリハリが微妙だったのと、サゲがめちゃくちゃ弱かったのが惜しかった。

ハイライト:お前が使ってる駅の前でおれが一人で抽象的なダンス踊るぞ


14)ロングコートダディ

海老の天ぷらがすきな堂前は、海老の天ぷらは自分のことをどう思っているのか気になる。そこで兎は天ぷらと合コンすることを提案する。エビ天、キス天、かき揚げ、天つゆ、はじかみを兎が演じ、合コンが進んでいく。

設定の振りの時点でシュール過ぎて(大丈夫か…?)と不安になるが、コントに入ると天ぷら×合コンのナンセンスな世界観が逆にわかりやすくなる不思議な漫才だった。不条理な設定なのになぜか画が想像できてしまう。落語でいうと「あたま山」。観ていて痛快だった。

コントのサゲは弱かったものの、「いや俺海老の天ぷら以外でも揚げ物いろいろ食べるから意味ないねんもうええわ」という史上最長の締めツッコミフレーズに心を鷲掴みにされた。最後まで仕掛ける貪欲さは評価したい。

ハイライト:ウホホホっすよね


15)アインシュタイン

将来する予定のクルージングデートを見せたい稲田のコントに女性役で付き合う河井。

最大の武器である稲田の見た目を押し付け過ぎずに自然に盛り込む構成はさすが。稲田の顔面に負けないキャラの多彩さも河井の抜くツッコミ・張るツッコミの緩急も技が光っていた。待ち合わせ→クルージング→乾杯→食料調達→イルカと展開も多く飽きさせない流れではあったが、やや詰め込み過ぎたせいかひと段落がそれぞれ短くなってしまった。どれかをメインにしてガッツリ取るパートを設ければよりよかった気がする。

ハイライト:アレルギー出てるよそれたぶん


16)トム・ブラウン

安くてうめーグミを4種類集めて合体させて安めぐみさんをつくりたいみちおと、それを興味津々に見守る布川。…だと思うんですが形容あってるのかなこれで。

前回大会であまりにもセンセーショナルな爪痕を残したトム・ブラウン。今年はなにをやってくるんだ!?とドキドキしてたら基本的に去年と同じだった。ドキドキして損した。

ただシステムはまったく一緒だったものの、去年より確実にパワーアップはしていた。というかカロリー消費量がすごい。完全な無酸素運動。おそらく計算通りであろうみちおの咳も最高のタイミングだった。

去年もそうだったが、これだけ意味がわからないシステムを漫才として成立させられるのはまぎれもなく二人の腕でもあるし、実は繊細なネタ構成に裏付けられたものである。「なにも考えずに笑える」ってほんとすごい。

ハイライト:これで一人ですよー!!


総評

ファイナリスト経験者やテレビで活躍するコンビも多く、ひじょうに豪華なラインナップの敗者復活戦でした。

どの組もここまで残ったのには納得できる実力者で甲乙つけがたく、この中で1組しか復活しないのはもったいないと思うほど。

ただ16組見終わったいま、これだけは言えます。

トム・ブラウンが最後でよかった。


最初は(トム・ブラウンがトリ…???)と心配でしたが、よくよく考えたらあのあと絶対でたくねえ。途中に出てきていたらと思うとゾッとしますね…

出場者のみなさんお疲れ様でした!


↓みづの採点ランキング↓

天竺鼠 95
ロングコートダディ 94
アインシュタイン 93
トム・ブラウン 92
和牛 91
カミナリ 90
ミキ 89
錦鯉 88
セルライトスパ 87
東京ホテイソン 86
ラランド 85
マヂカルラブリー 84
囲碁将棋 83
ダイタク 82
くらげ 81
四千頭身 80


ほんとはこのまま本戦も書こうと思いましたが、あまりにも長くなってしまったので分けまーす!また次回!

②へつづく

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