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不安について内省する

 僕は、仕事をする上で失敗やうまくいかない経験をたくさんしてきましたし、今もしています。そうした時に、とても不安になります。なぜ、不安になるのか。ここから内省を始めたいと思います。

「なぜ不安になるのか」

 失敗やうまくいかないことによって、仕事の成果に影響を与えることが考えられます。そうすることで、自分の仕事によってその成果がよい結果をうまない状態になる。そうなることが不安である。では、なぜよい結果を生まないことが不安になるのか。それは、その仕事をする上での職場や関係者から「仕事ができない人」「心配な人」など、自分に対する信用や評価を落としてしまうのではないか、ということ。そして、その自分に対する社会的な信用や評価はそのまま社会的な自分という存在の価値を表すため、自分の存在を否定し、無価値なものである思ってしまうという、自己の存在価値の危機が訪れてしまう。この自己の存在価値の危機こそが不安の根源なのではないかと考えました。

「自己の存在価値を自尊感情から考える」

 自己の存在に価値を感じる一つの指標として、自己肯定感や自己効力感など様々あるなかで、ここでは自尊感情に着目します。古くはウィリアム・ジェームスから始まる自己の認識についての概念であり、「自尊感情(セルフエスティーム)=成功÷望み」という、自尊感情は成功の関数であるという認識がつくられたそうです。しかし、日本いのちの教育学会・会長である近藤卓さんは、自尊感情を二つの種類に分けてとらえています。一つは、基本的自尊感情であり、もう一つは社会的自尊感情です。「基本的自尊感情は、成功や優越とは無関係。いわばあるがままの自分自身を受け入れ、自分をかけがえのない存在として丸ごとそのまま認める感情」であり、「社会的自尊感情は、うまくいったりほめられたりすると高まるが、失敗したり叱られたりすると途端にしぼんでしまう」感情として説明されています(近藤卓『子どもの自尊感情をどう育てるか そばセットで自尊感情を測る』)。この二つの自尊感情をもとに4つのパターンが示されています。

 ・SBタイプ 自尊感情の2つの部分がバランスよく形成されている。
 ・sBタイプ 社会的自尊感情が育っていない:のんびり屋、マイペース
 ・sbタイプ 自尊感情の2つの部分が両方とも育っていない:孤独、自信がない
 ・Sbタイプ 社会的自尊感情が肥大化している:頑張り屋の良い子、不安を抱えている

 この中で、一番危険なタイプであるとされているのが、Sbタイプです。なぜかというと、他者からの評価による不安定な社会的自尊感情ばかりが多きなっているので、否定的な評価によって一気にしぼんでしまうというのです。元々周りからの声に過剰に努力しているケースもあるのでしょう。社会の声を自身の内なる声と同化させ、社会の声に応えることで満足を得てきたとも考えられます。しかし、そうした社会の声に応えられなくなってしまったら、残されるのは小さな基本的自尊感情だけとなってしまいます。

「基本的自尊感情に気づく」

 社会的な評価によって上下する社会的自尊感情は、仕事上における評価だけが自己の価値を表すと思っている状態であるとも言えます。よって、仕事上の成果がそのまま自己の価値となり、社会的自尊感情の上下によって不安を感じてしまうのでしょう。社会的自尊感情が悪いわけではなく、それだけになってしまっている自分が問題なのだと思います。社会的な評価によって作られた自分を吹き飛ばして、あとに残る自分はどんな自分ですか?小説を読むのが好きな自分、笑顔がすてきな自分、庭いじりが好きな自分、そんな自分がちゃんといるのではないでしょうか。僕にも「家族が大好きな自分」がいました。社会で働く者として、社会的自尊感情を完全に無視することは難しいと思います。ですが、基本的自尊感情に気付き、その基本的自尊感情を大切にしていくことで、相対的に社会的自尊感情の占める割合を小さくすることはできると思います。つまり、「仕事だけ人間」から、「仕事や家族や他にも好きなことがある人間」へと広げていくことが必要なのだと思います。不安について内省することで、不安と上手にお付き合いする心構えを考えることができました。

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