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『三つ編み』を読み終えて爽快な気持ちになった快晴の朝

必要に迫られ、ひさしぶりに通勤して働いたらめちゃくちゃヘトヘトになった。週3~4日でランニングして体力はそんなに落ちてないはずなのに、気疲れなんだろうか。

帰ってお風呂入ってごはん食べてハイボール飲んだら、急に猛烈な眠気に襲われ、すぐベッドへ。たぶん22時前。案の定、未明に目覚めてなかなか再び寝つけなかったので、GW中にkindleで買った『三つ編み』(レティシア・コロンバニ/早川書房)を読み始めた

……ら、面白くて、続きが気になって気になってやめられなくなり、夜が明ける前に読みきってしまった。素晴らしい本だった…!早く読めばよかった。

編まれる3人の女性のストーリー

物語には、3人の女性が登場する。

インドの村でカーストの外の「不可触民」として生まれたスミタ。母がしてきたのと同様に、村の人々の排泄物を回収する日々を送る。でも、自分の娘ラリータには同じことをさせたくないと願う。

イタリアのシチリアで、毛髪加工業を営む家に生まれたジュリア。父が事故に遭ってしまい、保守的な社会・母たちのプレッシャーを感じながら、家業をどうするか考えあぐねる。

カナダ・モントリオールのエリート弁護士、サラは、3人の子を育てるシングルマザー。男性のシッターに子育てを任せつつ、出世欲にまみれた弁護士たちがひしめく事務所で、誰にも隙を見せずに〝完璧〟に日常をこなす。

「女だから」の生きづらさ

境遇も年代もそれぞれ全く違う3人だけど、「女に生まれたから」の生きづらさを背負っているのは、同じ。

でも、そんな「女だから」に、それぞれのやり方でNOと宣言して、しがらみを断ち切っていく3人。心からエールを送りたくなる。

そして3人の人生が、ほんとうに「三つ編み」のようにラストに向かって編まれていく。希望のある結末も含めて、すごく素敵なお話だった。

ここ↓から試し読みできるので、ぜひ!

夫や兄弟の罪を償うために強姦されたり、女の子だからと生まれてすぐ命を奪われたり。200万人の女性が殺されるというインドの現状は目を覆いたくなるほどだった。なぜ女ってだけでこんな目に遭わなきゃいけないの? でも、読みながら「日本はどうだろうか」って思いがずっと片隅に残っていた。

ジェンダーギャップ指数で、日本は121位(2019年)。『三つ編み』が出版された当時、最新の2018年の110位よりも後退した。なかでも「政治」分野が厳しく、144位だった。

『三つ編み』巻末のフランス在住ライター・高崎順子さんの解説には、こんなふうに書いてあった。

日本で『三つ編み』が描かれたとしたら、この分野(政治参画)を取り上げるのは必然だろう。主人公の女性はどんな属性をもち、どんな闘いを生きることになるのか。彼女と連携する男性はどんな人物だろう。彼女ら彼らの物語は、日本社会で、どのように受け止められるだろうか

日本社会でどう受け止められるか。そこがわたしもとても気になっている。

そして、高崎さんがレティシア・コロンバニさんにインタビューしたハフポの記事がとてもステキだった。少し長いけど引用します。

「女性の登場人物は、豊かで自由な精神を持ち、自立している姿で描きました」「彼女たちと一緒に物語を動かす男性陣もそう。明るく前向きに、女性と手を携える人物が欲しかった」
「女性の自由と解放の物語を、強い女と悪い男の対立にしたくなかったんです」
私にとってフェミニズムとは、アンフェアな性差別のある社会に異を唱えること。それを行う人がフェミニストであり、男性か女性かどうかは関係ない。性差別のない社会を作るために、男女が対立する必要はありませんから

「フェミニズム」は男と女を対立させるものではない。広辞苑にも「性差別からの解放と両性の平等とを目指す思想・運動」とある。しかし社会を見ると、両性の平等を願う人が全員、自分を「フェミニスト」とは明言しない現実もある。
かくいう私自身も、男女両性が公平に生きる社会を願いつつ、「私はフェミニストです」と自己紹介することはこれまでなかった。「フェミニズム」を正しく理解している自信がないことに加え、この言葉に対する世間の理解や反応があまりに多様で、自分が「そうだ」と名乗った結果を引き受けきれないと、感じてきた。

コロンバニのように、自分をフェミニストと明確に捉える人は、どんな考え方をしているのだろうーーそれは『三つ編み』を読んだ直後に浮かんだ、率直な疑問でもあった。
尋ねて返って来た反応は、ごくシンプルなものだった。「人間を愛していれば、自然にフェミニストになる」と。
「人類の半分は女性ですから、その半数が痛めつけられている事実から目を逸らし、その状況を放置して、『人間が好き』なんて言えるはずもないでしょう? 女性を憎みながら人間を愛する、そんなことは誰にも不可能なんです」

性別にかかわらず、生きやすい世の中に変えていきたい、って願うわたしも、確かに「フェミニズム」って言いづらいなぁと感じていた。だから、レティシアさんの「フェミニズムとは、アンフェアな性差別のある社会に異を唱えること」という言葉に励まされる。

そんなわけで、『三つ編み』、性別にかかわらず読んでほしいなぁ。

なんだか晴れ晴れとした気持ちになって、スマホを閉じて初夏の空気がさわやかな朝の川沿いを歩いた。陽を浴びると、じんわりと汗ばむぐらいの季節になってきた。水面に朝日が反射してまぶしい。さて、わたしもがんばろっと。

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