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死の影や不在を感じさせるボルタンスキー展

9月2日までのボルタンスキー展に滑り込んできた。(会期終了間際に「うわ!もう終わる!」って慌てるクセをなんとかしたい。始まった時には覚えてるのになぁ…反省)

でも、空いてる夜の時間を狙ったのがよかったのか、混雑はそれほどでもなかった。
作品のタイトルやキャプションは全く置いてなくって、会場で配られるタブロイド新聞を手に、作品を鑑賞していくスタイル。

まず最初の「咳する男」の映像作品で、こっちまで苦しくなる……かぶりものをした男が、ただただ咳き込み、血を吐くという……ボルタンスキーの最初期の作品らしい。「舐める男」も「うぅっ」となった。笑

でもギャラリートークがすごく面白くて、参加してよかった~

父がロシア系ユダヤ人。ナチスのパリ占領が終わった直後、1944年に生まれたボルタンスキー。母はコルシカ生まれで、ボルタンスキーの父とは偽装離婚。父は占領中、アパルトマンの地下で暮らしていたそう。
ホロコーストを意識した作品ももちろんあるし有名だけど、もっと「普遍的な死」を考えたいと、「スイス人の死」という作品を制作したそう。

・ボルタンスキーは自分のアトリエに監視カメラ3台をつけて、ギャンブルで儲けたタスマニアの富豪に作品として売ってる。タスマニアの美術館MONAで見られる。

・歳をとったので、最近は「物質」として作品を残さない。雪山で風鈴が揺れている「アニミタス(白)」も10時間にわたる映像。

豊島(香川)でも見た「心臓音」のインスタレーションもあった(ミニサイズだったけど)。今ここにいない作家の心臓音にあわせて光る電球。不思議だーーー

初めて知ったんだけど豊島のアーカイブではお金を払えば自分の心臓音が残せるそう。自分の肉体がなくなっても、音だけが残ってるってどんな感じなんだろう。声が残るのとはまた違う感じがする。

ボルタンスキーの作品からは「死の影」が濃く感じられた。東京展のために寄せられた「幽霊の廊下」からも。
でも最近はさらに超越してて、「伝説」を残そうとしてるらしい。パタゴニアで撮った、ラッパのオブジェで鯨とコミュニケーションを取る試みを撮った映像作品「ミステリオス」(トップ画像)もそう。「へんなフランス人がいたな〜」と覚えていてほしいんだって。

わたしが好きだったのは↑の「黄金の海」。目を細めると金色の水面が波打ってるみたい。これはエマージェンシーシートが敷き詰められている。

トリエンナーレの作品の一部として観るのもいいけど、こんな風に展覧会としてまとまっているのもいいなぁ。ボルタンスキーが「この展覧会自体が作品」と言っていたのも頷ける。
また別の場所で見たら別の感じ方をするんだろうなぁ。

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