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カラーになった「戦争」 記憶の解凍で自分ごとになる

当時広島の高校生だった庭田杏珠さんと、東大の渡邉英徳さんの「記憶の解凍」プロジェクトが、『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』の1冊にまとまった。

白黒写真を、AIと、当時を経験した人たちの証言や資料などをもとに、手作業で彩色してカラー化するのが「記憶の解凍」プロジェクト。

渡邉先生が以前、Twitterでシェアしたカラーのきのこ雲の写真を見たとき、今までよりも「これは本当にあったことなんだ」と強く感じて目が離せなくなった。

プロジェクトのうち350枚がおさめられた1冊は、分厚くてずっしり重い。戦前から戦後にかけて、写真が時系列で並んでいる。

いま広島平和記念資料館のあるところは「中島地区」といって、もとは「繁華街」だった。そこで暮らしていた家族の当たり前の日常生活が、だんだんときな臭くなっていき、炎上する戦艦の写真、空襲で焼け野原になった風景写真へと変わっていく……。

刺さった写真に付箋を貼っていたら付箋の意味がなくなってしまった……。

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改めての歴史の勉強にもなる。インパクトがあったのは白黒の真珠湾攻撃の写真。

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カラー化すると、その「衝撃」にページをめくる手が止まる。

この夏は、戦後75年を迎える。庭田さんは巻末に寄せた文でこう書いている。

今は、直接証言を聞けるとても貴重なときです。(中略)「もう誰にも同じ思いをさせてはならない」と平和を希求する戦争体験者の崇高な想いを、戦後75周年の節目の年、そしてCOVID-19のパンデミック下で本書を通し、発信する意味を考えます。

私たちの平和な日常が疫病によって突然奪われてしまった今の状況と重ね合わせることで、戦争は遠い過去の出来事ではなく、これからの私たちにも十分に起こりえるものだということを、より自分ごととして想像してもらえる時だと感じます。

お花見しながら、スイカをほおばりながら、カメラの前でほほえむ家族。戦前の人たちも、今年の初めごろのわたしと同じように「この日常が当たり前のように続くんだ」と感じていただろうと思う。

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グサリときたのは、1945年5月26日、鹿児島の万世飛行場で撮られた子犬を抱いて喜ぶ特攻隊員たちの写真だった。悪天候のため次の日に出撃し、戦死したそうだ。

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戦時体制強化で立てられた札「パーマネントのお方は通行をご遠慮ください」という写真も……。同じようなことがコロナで起きていないか……と考えさせられた。

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ぜひ多くの人に手にとってほしい本。

そしてコロナが落ち着いたら、この1冊を持って、また広島や長崎、各地を訪れてみたいと思う。

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