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最高のがん治療 専門家が本気で書いたやさしい本

医療データ分析、がん治療、新薬開発の研究者……最先端の専門家3人が書いた『最高のがん治療』。著者のおひとり、大須賀覚先生にご恵投いただき、拝読しました。すごく分かりやすくて一気に読めた!
すこしだけ専門的な言葉や難しいグラフもありますが、正直そこを飛ばしても大事なところはしっかりおさえられます。本当にオススメ。

津川友介さん・勝俣範之さん・大須賀覚さんが著者となった「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった 最高のがん治療」。〝最高の〟というタイトルには専門家から批判もあったそうです
医療には不確実性といって〝絶対〟がありません。そのときベストだと考えられる治療を選んでも、重篤な副作用が起きてしまうかもしれない。

だからお医者さんは「絶対に治りますよ」とか「最高の治療ですよ!」という言葉を使いません。でも、あえてこのタイトルを選んだのは、患者さん目線を大切にしたから。大須賀先生はnoteでこう振り返っています。

気付いたのは、医療者と患者さんが持つ”言葉のギャップ”です。医療者が良いと思うタイトルというのは、患者さんにはものすごく弱く感じて、効果のない治療に思えてしまうという事実です。
患者さんが興味を持って、手に取るのは「最高」「最良」「治る」のような強いタイトルの医療本ばかりでした。「科学的に確率が高い」とか、「エビデンスレベルが高い」とかいう言葉ではない。

確かにわたしたちが知りたいのは、がんが「治る」「一番いい」治療法です。だから「がんが治る○○」「○○を食べろ」「がんは○○せよ」といった分かりやすいシンプルな本に飛びついてしまう気持ちは本当によく分かります。「最高のがん治療」はさっそくAmazonで1位になりましたが、ランキングのほかの本を見ると………(無言)

『最高のがん治療』の中でも紹介されているように、実はベストの治療って「標準治療」なんですよね。日本ではそれが保険診療で比較的安く受けられるため、「最高の治療が安いなんて変だな」「高いお金を払わないといけない治療があるはずだ」と思ってしまう……。
(わたしも初めて「標準治療」という言葉を聞いた時には、「ふ~ん〝並〟の治療なのかな。〝先進医療〟の方がなんかすごそう…」と感じたのをおぼえています)

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この本の中では、なぜ「標準治療」が最高の治療なのか、「標準治療」にどんながん治療があるのか、治験や先進医療・代替医療についてもイチから解きほぐしてくれています。

さらに、日本ではまだまだ「何もできなくなってからかかるもの」という誤解の多い「緩和ケア」についても説明されています。早めに緩和ケアを取り入れることで、抗がん剤を減らしたり生存期間を延ばしたりすることが分かっています。

第三章〝食事やサプリでがんは治るのか〟は必読です。一覧表もついているので、健康食品を買うか、食事を変えるべきか悩んでいるがんの方がいたら、このページを見せれば情報の整理ができるかも。

また、がんがなぜ出来るのかを解説してくれているのも「やさしいなぁ~」と感じました。きっと患者さんが「自分の過去の行いが悪かったからがんになったのでないか」と自分を責めてしまうから、この章を書いてくれたんだろうなぁ。
ここ最近、社会の「健康管理は自己責任」という風潮を個人的にビシバシ感じていたので、がんが出来るのは「偶発的要因」がほとんどという記述にホッとしました。

そして、「『トンデモ医療』はどうやって見分けるのか」の章も、すごく参考になります。自分はしっかり調べているから大丈夫、と思い込むのは危険です。医療を取材した経験のあるわたしだって、自分ががんになったら冷静になれず、SNSのフィルターバブルで何度もトンデモ情報にふれるうちに、「もしかしたら本当かも」と思ってしまうかもしれません…。

〝保険が効かず高額な治療法は危険〟〝「免疫力アップ」という言葉にだまされるな〟〝個人の経験がほかの人にも有効とは限らない〟といった気をつけるべきトンデモポイントは、がんに関わらず医療・健康情報を読むときは胸にとめておきたいです。

とにかくオススメ!と言いたくて長々と書きました。Amazonで予約した分もそろそろ届くのですが、こちらは親に送ろうと思います。
わたしも父が肺がんになったとき、「医療取材の経験があるから、どこに正しい情報があるかは知っているけど、それでも迷うし不安になるなぁ」と感じていました。これからは「あの単語の定義…どうだったっけ」と悩んだら『最高のがん治療』を開こうと思います。(この本がすごいのは、末尾に索引もついているところ!自分の病気のところだけサッと読みたい、という人にもやさしいな~)

そして大量の出典もついてます。その量をみて「この本を多忙な先生方が書き上げるのは本当に大変だったろうな…」とクラクラしました。本当に尊敬します。がんを不安に思う患者さんや家族、多くの人に届きますように!

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