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[月記]24年7月 徘徊

夜道を歩いているとパジャマ姿のおじいさんとすれ違った。私は考えた。
徘徊だろうか?
そして瞬時に、徘徊でない可能性について逡巡する。

通行人に新しいパジャマを見せている

夜、人通りの少ない場所を選ぶとは考えられない。

パジャマパーティに行く途中である

普通は家に着いてから着替えるし、そもそも普通のおじいさんはパジャマパーティに参加しない。

この街を自宅の庭だと思っている

この街は俺の庭だ、お前の庭じゃねぇ!

パジャマでおじゃま

パパッパ パッパッパ (ジャマジャマ)
パパッパ パッパッパ (ジャマジャマ)
パパッパ パッパッパ (ジャマ ジャマ ジャマ ジャ)

パジャマのような服である

パジャマの定義が「寝るときに着ている服」であるならば屋外で着るそれはパジャマではないが、パジャマの定義は「寝るとき用の服」であるため、屋外で着るそれはパジャマということになる。

パジャマのようでない服である

おじいさんはいたって普通の服を着ているが、私の目にはそのように見えていないだけなのかもしれない。私の頭がおかしくて、実は私こそがこの街を徘徊しているパジャマ姿のおじいさんなのかもしれない……。
そして目の前のおじいさんに見える彼は実は壮年期の男性である。彼は目の前のおじいさんを見てこう考えるだろう。
徘徊だろうか?
そして瞬時に、徘徊でない可能性について逡巡する。

通行人に新しいパジャマを見せている

夜、人通りの少ない場所を選ぶとは考えられない。

パジャマパーティに行く途中である

普通は家に着いてから着替えるし、そもそも普通のおじいさんはパジャマパーティに参加しない。

この街を自宅の庭だと思っている

この街は俺の庭だ、お前の庭じゃねぇ!

パジャマでおじゃま

パパッパ パッパッパ (ジャマジャマ)
パパッパ パッパッパ (ジャマジャマ)
パパッパ パッパッパ (ジャマ ジャマ ジャマ ジャ)

パジャマのような服である

パジャマの定義が「寝るときに着ている服」であるならば屋外で着るそれはパジャマではないが、パジャマの定義は「寝るとき用の服」であるため、屋外で着るそれはパジャマということになる。

パジャマのようでない服である

おじいさんはいたって普通の服を着ているが、私の目にはそのように見えていないだけなのかもしれない。私の頭がおかしくて、実は私こそがこの街を徘徊しているパジャマ姿のおじいさんなのかもしれない……。

はい、そうです!


順当に考えて徘徊の可能性が高いため、私は警察に通報することにした。
携帯を取り出して110を押す。すぐに応答がある。
「事件ですか? 事故ですか?」
「事件……ですかね? パジャマで徘徊されているご老人がいます」
「どこですか?」
「〇〇です。近くには〇〇があります」
「その方はすぐ近くにおられますか?」
逡巡するのに数分を要したため、おじいさんはずっと遠くにいて砂粒のようになっていた。私は正直に答える。
「遠くの方へ歩いていかれました。今は背中が少しだけ見えます、〇〇駅の方にいます」
「どんな格好でしたか?」
「上下が白いパジャマで、ポリ袋を持っていて……」
そこからしばらく質問攻めにあう。おじいさんの姿に関する詳細を覚えていない部分がいくつかあり、自分がいかに観察力に乏しいか思い知らされる。一通りの質問が終わり、最後に警察の方はこんな提案をしてきた。
「おじいさんが見つかったらお電話を差し上げることもできますが、どうしましょうか?」
「いいえ、結構です」
「そうですか。この度は通報ありがとうございました。それでは」
電話が切れる。私はしばらく息をするのも忘れてじっと液晶を見つめた。警察からの最後の提案が、あまりにも恐ろしいものに感じられたからだ。

おじいさんの消息を電話で確認すると決めた場合は「警察から電話がかかってきたか?」があまりにも重要になってしまう。その答えが「はい」なら安心できるが「いいえ」である限りは漠然とした恐怖と焦燥がずっと続くことだろう。

──はいかいいえか、徘徊はいかい or いえか。
ワンダーな択一、無事回避。