ご放置グルメ

いい肉の日に言いにくいが、たらの鍋を作った。ここで起こる問題がある。ようこそ、鍋ミステリーの世界へ…


ここの所、鍋づいている。某プチっとするやつとか某キューブを好きだったミスター既製品・T兄の留守である今、私は昆布でダシを取るようになった。


運動不足で中年な今、しょっぱい鍋を体も必要としないし、多分東北でそれこそご当地グルメの濃い味の鍋とうまい酒でもやれば、不肖私の腎臓はすぐ絶叫するだろう。


既製品のなべ素は、かなりしょっぱい。
昆布でとろとろダシを取る。水から入れてー♪材料を放り込みー♪


その間のんびりコント見たり本読んだり少し踊ったりしてればいい。
お断りしておくが私のダンスは、かっこよくはないらしい。それっぽく動こうとただ暴れてるようなものらしく、T兄に言わせれば「タコ踊り」だそうだ。


で、タコが暴れてる間に鍋はいい感じに。
フアフアのお豆腐とあぶらげ。ぷりぷりキノコ。ほこほこじゃがいも。しっとりタラの切り身。


うまいうまいと食べ終えて、口のまわりを舐めたりし。でもここから鍋の悲劇、鍋ミザリーが始まるのだ。


晩ごはん時である。たっぷり残った鍋の中で繰り広げられたであろう数々のケミストリにより、鍋はうまさ倍増。昆布だと、うまみがだんだん、どんどん増してくる。これこそが、ご放置グルメたるゆえんである。


だけど、少し、いらないな、と思ってはいる。バターや牛乳など落として味変、うまいうまいとこれまた食べる。


一度にたくさん食べられなくなってそれこそ猫みたいにちょび残ししたりするようになったこのワガママさんは、やっぱりまた残してしまう。


油も肉も入っていない、水墨画のように淡い鍋。日はまた昇るが、腹もすぐ空く。


夜半。
キッチンへフラリと現れて、鍋のふたを取り、味をみてみる。


この、えも言われぬコク。極上のダシ。まろやかな風味。うまさは今まさに頂上。


なのに。もう食べたくない。もう飽きたんだ。
これは、放置していたのに日増しに美しくなってゆく古女房を見るような心持ち、と言ったらいいか。


君はどんどんうまくなるね。でも、もう、君を愛してないのかもしれない。飽きちゃって。


ああ、これぞ鍋ミザリー。


で、明日の朝食べるのが嫌なので全部食い切っちゃったよごちそうさまもう寝よ、というお話でした。いや、美味しかった。今週はおでんでもまた同じミザリーを味わいたく思います、師走だし。


※食い切っちゃったんで今回写真なし。

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