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明け方の夢

明け方の夢の中。
いつもまどろむときそうしているように、私は夫の愛猫になってそのうでの中に丸められ、安心しきって眠っていた。
ああ大好き。
ああ安心。



もういくつか満月がめぐると帰って来る。



夢は、夢によくあるようにふわりと形を変える。



それまで私は私自身でいたはずなのに……。
まだ黎明の冷え切った部屋で、目を覚ます。朦朧としている。
体の痛み。いつもの痛み。
それまで「私自身」だった者が、別の誰かにすり替わっていた。夢?これも?



その者は言った。
右脚の付け根。いつも痛むところだね。それから左足首から下、両手首。帯状疱疹の痕の痛み。口の中の痛み。誰にも言わないでいるけれど。
ええそうです。
あなたは誰なんです?さっきまで私だった……
でも、あなたは男性?



彼は月光のようにあえかにほほえんで、言った。
冷えている。温めなさい。暖房よりシャワーでお湯をかけた方が早い。
その前に部屋の汲み置きの水をコップに注いで飲むこと。そして暖房をつけて部屋の温度を上げて。
いい?
きみは悪くない。
きみはなにも。
きみの夫が言うように。
人生で初めてひとにきみが言われたこと。
いい子だね。大丈夫。私が治してあげる。安心しなさい。



ふらふらと言われるままにそれらをおこなう。勿論、おこなっているのは私の体。なのに頭の中で静かに指示してくれているのはその、見知らぬ彼。
これは一体……
いつすり替わった?
トカゲが出てくる時に似ているけど、彼ではない。役割が違うのだ。

トカゲは私の教育係の男。こんな奴。↓



誰。
何かしら、あの古い装束は?私には学も知識もない。見たこともない。地球のどの時代のどこにいたのかも分からない。私とどんなゆかりがあるのかも。
ただ、ヒーラーなのは、分かった。



シャワーのお湯をかけると、痛みはすぐにほとびてラクになった。暖房が効くまで耐えるよりずっと即効性があり、体ぜんたいに血がめぐる。
消えかけていたパイロットランプがシステム全体に一気に火をめぐらせるように、彼は火口を上手にあかあかと明るく、大きく燃え上がらせた。
戻った部屋も暖まり始めていて、ヒートショックもない。水は口中の痛みをほんわりと溶かした。
当たり前?
いいえ決して。



あなたが誰か。そしてその名を、私はいまは考えない。
ありがとう。とてもいい気持ち。
行動をしている間、彼の声が響いた。



きみは悪くないんだ。
きみはいい子だよ。
みんないい子だ。
安心しなさい。
きみの新しい名を夢で与えた。覚えているかね?


私は、はい、と答えた。
その時、朝日が強烈に差し込んだ。
記憶が蘇る。
あれは何世紀まえだったかしら……。
彼は朝日に溶けていく。
私の中に永住することを目的に。

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