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【詩のようなもの6編】 グラフィティー


【グラフィティー】

人のいない街 増えるラクガキ
どこまでもイタチごっこ

靄に覆われて 異臭に覆われて
怒りに任せたグラフィティー 陰に写る

退っ引きならない 一匹狼
去る青春 増える瞬き 垂れるインク

荒野を歩き続けるように
古い吊り橋を渡るように

好奇心と懸念を塗り手繰る
今 この瞬間を写すグラフィティー 

僕のノートに刻み込む
廃れた蒼い匂い

【ダクト】

空気を運ぶように
詩を書いてみるよ

熱を探すように
街を歩くよ

自分の中のモヤモヤした
言語化できない違和感を
吐き出せるように

錆びかけて鈍くなる
使われていないダクトに
ならないように

身体の酸素 循環を意識して
息をしてみるよ

知らない言葉 意味を知って
詩を書いてみるよ

【カタツムリ】

小さな伸び縮み
雨の季節 永い時間

渦巻く殻の中
陽を避けるように
敵を避けるように
己の身を守りながら

じっとり べったり
溺れないように 命の限り

恋の矢を射てるその日まで
小さな伸び縮み 雨に打たれて

【玉砕】

壊れる音がした

痛みも恐れもないまま

誰も彼も離れていった

脅かされた秩序に無関心のまま

空を覆う無知蒙昧 陰を増やす目笑

冷たい手の感触だけが残っていた 

【もどかしい夏前】

暑いなー。
寝苦しいなー。
背中を這う熱気に嫌気が漂い
嫌な汗が額を辿る

恥ずかしいなー。
逃げたいなー。

食った歳に似合わない心持ち
同世代の貞操観に妬みを含む

日暮れ時が延びるにつれて
熱に浮かされて 欲に負けて
言葉に出来ず いやらしさ蔓延り
何となく自分の居場所
分からないまま

なんだかなー。
もどかしいなー。

一夏を謳歌するように
一期一会が入り乱れている
そんな気がする 晴れた空

【日にち薬】

双葉が芽吹く頃
小さな傷を増やしている

若木と呼べる頃
大きな傷を作っている

そこから先々 刻々と
抱えた傷が幹を太くするか
小枝のように別れるか
一進一退 悲喜交々

永い時間 渡るように
短い時間 足掻くように
陽と陰を廻り続けていく

老樹と呼ばれる頃
小さな双葉の添え木になる

陰にいて陽を知らない
誰かの日にち薬になるように


最後まで読んでくれてありがとうございました。
ジメジメした日とムシムシした日が続くので体調崩さないようにしたいですね。

水宮 青



過去の詩のようなものです▽