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【詩のようなもの6編】 へへやか


【へへやか】

へへやかへへやか
歳月人を待たず
今日僕は変わる

親しみなかったもの
食わず嫌いだったもの
いつの間にやら日常の一部

木の上 塀の上 君の上
もふもふ渡り歩く猫のように
木陰と日向 春愁秋思

へへやかへへやか
歳月人を待たず
明日は明日の風が吹くらしい

【静かな朝】

なんの色も模様もない
解けた糸になったよ
今日は無垢に近い静かな朝

しがらみを引き受けて得た幸福
今の自分には合わないから
冷たい水よりぬるいお湯で顔洗い
冷めた朝食より温かいご飯を食べる

外に出て向かうのは
いつもと違う人の少ない駅
静かな朝に合う見知らぬ車窓

【扼腕】

思い通りにいかないのが常
俺たちの日常

節を折り続けて幾年
痕が残る扼腕

まだ諦めきれない夢
今日も国道沿いで見る夜景

化けの皮は剥がされても
消去されない棘と轍
楽になる為の切歯扼腕
落書きだらけの街に消えてゆく

【スイッチオン】

笑い方も泣き方も難しい
モノクロの景色に落ち着いている
変わらないテンション

口数が減った
消えるモチベーション
スイッチオフの合図
どこに逃げよう

曖昧模糊の日常
温いコーヒー欲して
溜まるフラストレーション
明日は何しよう

コップ一杯
ノートの一ページ
失ったエネルギーを少しずつ蓄え
時間を掛けてスイッチオン

【デート前】

少し先の連休に向け
洒落込んで重ね着

書店から映画館へ
遅めの昼食はナポリタン
目移りするウィンドーショッピング
夕方にようやく取れた予約先へ

買い忘れた日用品探して
帰路についた後で
ちょっとした一期一会
ふくらはぎが張る頃には遅めの晩飯

少し先の連休に向け
予行演習は準備万端

新しいバッグの中
最初に入るのはささやかな期待

【それでしか】

絞るように自分を知り得て
少ない取り柄を大事にしながら
それでしか生きれない自分を満たす

どうしようもなく泣きながら
みっともなく笑われて
それでしか生きれないと七転八起

誰の為に生きてるの?
そう訊かれても分からないけど
ほんの少し人の役に立つこと
それでしか生きられない今の自分