【詩のようなもの6編】 雲のような言葉を
【雲のような言葉を】
僕の心 また淀む
ここは違うと気づくたび
テーブルの上が散らかって
行き違った亡霊と鉢合わせ
過ぎた春 寂しいと口に出して
本当はその逆なのをそっと思い
空へ向かって
合わせ鏡 近しい人が卑しく
優しい人が苦しく
惑い馴染むしたり顔
僕の心 また淀む
空洞化した滝の奥
誰にも気づかれないように
雲のような言葉を缶詰めにして逃げる
【万里一空】
晴れ晴れとした空へ
満たされない欲望は広がって
トライアンドエラー
「時間がない」しおらしく呟いて
空の青さに溺れかけて
報われない夜に怯えている
どこまでも続く青空に
不安より安息を得たいけど
遮二無二 駆けて転けて勇往邁進
頭の片隅で早く終われと願いつつ
否応なくまだひた走っていく
【地味染み】
言い訳じみた僕の言葉
何度同じ過ちを続けるのか
自分でも嫌になってる最中
プリン体になるにつれ
地味な生活に馴染み
冷めた笑いは言い訳隠し
察してほしいけど察してほしくない
育ち悪い仕草を指摘されて
何度同じ恥を掻いたか
自分から穴に隠れてる最中
逃げ場がない
言い訳が効かない
魔法の呪文は知らない
馴染みのある過去は消えて
僕はこの先どこに行くんだろう
【要加熱】
要加熱 そのコンビニ飯
要加熱 お互いの距離
要加熱 冷えた思い出話
次へ進もうよ それぞれの過程
積まれたままの本を読み始めるような
足りない栄養を欲する一行
つるりとした表情は味気ないまま
さらりと過ぎる飯時
要加熱 その冷凍品
要加熱 お互いの意見
要加熱 未来に囚われない現在
【ホラー映画】
深夜3時
布団の中は温かい宇宙
顔を出した先で目が合うぬいぐるみ
知らない 怖い 魔の時間
数メートル先のトイレ
何気ないドアの開閉音
耳が捉えて心臓の音は早くなる
内容は思い出せないのに
その日の外が雨だったことは
妙にくっきり覚えていて
今も未知の恐怖をくれている
あの日のホラー映画
【short story】
猥雑な言葉で羅列
陳腐なバッドエンド
今を満たすショートストーリー
流れ星より早く消える絵に描いた餅
誰も満たされないハッピーエンド
劣等感を武器に渡世
未知との一期一会
キンキラキンな世界観
脈絡なく繋がりを獲る冷笑に中指
カットバックして誤解を招く
環にならないショートストーリー
身近で遠い夢物語
最後まで読んでくれてありがとうございました。
水宮 青