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【詩のようなもの6編】 失恋


【失恋】

明日終わる人生を探して
今日始まる恋の匂いが依ってくる

消えてゆく それが当たり前
それを分かっていても発する光
ただ眩しく それが美しい

後の雁が先になる それが当たり前
それを分かっていれば消えない光
ただ儚く それが美しい

繰り返す営み 何気ない記憶
恥ずかしさと誇らしさが混濁

明日始まる人生を探して
昨日過ぎた恋の匂いは路傍の光へ

【リバーブ】

跳ね返る心の音
粒立って 色を纏って
感情を会得しながら
君の心へ

ずっと先でシナプスを介して
弾けるように 繋がるように
残響に灯が灯るように

歓喜の声 子供の声
もっと遠くへ伸びるように
刻を刻み氷解を希求

跳ね返る心の音
粒立って 色を纏って
感情を会得しながら
僕の心へ

【五風十雨】

脳天気な僕
積み重ねていく無価値の努力
後で誰かが奇貨に変えると過信して
濡れた後の道をスケッチ

相変わらず健気な当世風
覆水盆に返らずだと分かっている
だからこそ今日の雨は
悪貨を洗い良貨が湧くように
是々非々 今日も言葉を探し
5日目の風に乗りながら空中浮遊
10日目の雨に濡れながら無我夢中

今日は朝から穏やかな天気で1日が始まる

【擦れ掠れ】

長年使ってた仕事道具も随分摩耗
ところどころの擦れ傷
もう唯一無二

生まれた時からのこの瞳
日々の疲れに掠れる景色
まだ遮二無二

廃れていくのは避けられない時代
垢は擦るほど出る
掠れ声の叫びも擦り切れて消耗
粗は探すほど出る

何が大事か見え続けなきゃ
擦った揉んだで終わる水掛け論に
瞳を凝らし続ける日々

【情けと仇】

旅は道連れ、世は情け
人生最後までそうありたいけど
情けが仇になった時こそ
一番に優しさを欲する

浅学非才の僕の場合
情に絆されては馬鹿を見るけど
仇桜が明日も咲き続けるならそれでいい

明けても暮れても
くだらない日々の中で
人こそ鏡だと思える間は
今の自分でもいいと思いたい

死んだ後で花を添えてもらえるように

【幾千】

変わる為に読んだ幾千の小説
時代の匂いとその名残りが
心地良かったり恐ろしかったり

慣れる為に観た幾千の映画
幾人の人生とその営みが
素晴らしかったりつまらなかったり

街の風が吹けばどこが儲かるのか
幾千の物語を知っても未来は分からず
欲望に従いまた恋を探すところから
自分が動き始める

性懲りも無く歩く恋の闇路
幾千の思い出が光になるまで
泣いて笑って歩き続ける