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惜しい が愛おしい

今朝、就業時刻前に私が調理室でサンプルを測定していると、後輩のひとりが入ってきて挨拶をしてくれた。そのあと『早いですね。』と言われたので、"うん、ありがとう!"と答えてしまった。すぐにズレた会話になっていることに気が付き、すぐさま"今のはありがとうじゃないね。"と言ってへらへらしていた。後輩は宙に浮くようなやわらかい言い方で『どういたしまして~』と言って去っていった。ズレた答えに合わせてくれてありがとう。けれど、なぜありがとうと言ってしまったのだろうか。とっさに出てきたもので、理由がわからなかった。サンプルを測定し終えた私は、それを持って2階の実験室へと向かう。階段を上る途中ではっと気が付いた。後輩の労いに対してのありがとうだ!!惜しい!あの場で言えていたら結構かっこよかった(?)のに!2階につく頃に、就業を示すチャイムがなった。愛おしいね、と相槌を打たれているかのようだった。

世の中には惜しいことがたくさんあると思う。『惜しい』以外を『完璧』とすると、完璧なんてことはほぼないので、ほとんどが『惜しい』に分類されることになる。そしてそれは『人間らしさ』なんて安易な言葉を使っていいのかわからないがその引き出しに入れられて、感想は『愛おしい』でまとめられると思う。
先週もあった。新人研修で来たフレッシュな後輩と、少しだけ世間話をしていた時のことだ。後輩が唐突に『関係ないんだけど関係ないんですけど』と言い間違いをしていた。すぐに続く言葉が丁寧になっている通り、すぐに気が付いて直していた。焦っているようにも見えた。私はもちろん初めの一言は聞こえなかったふりをし、焦っているように見えたことも見えなかったふりをした。惜しいな。私の好きな話題を振ってくれようとした瞬間だったので、余計に愛おしい。いと愛おしい。
もっと過去にもあった。なぜか毎回『意識調査』を『いきしちょうさ』と言ってしまう人がいた。非常に惜しい。先輩だったので笑わないように頑張ったが難しかった。間違いは人にかかわらず面白いものだからだ。そして何度も間違えてしまうところが特に、愛おしいポイントだ。
他にも、素晴らしいことを言っている人のマイクの質が悪いとか、花瓶ではなくコップに活けられているお花とか、カーディガンの真ん中に来るべきボタンが右にズレたまま写真に写っている人とか、挙げるとキリがない。ちょっとクスっとできて、愛おしいなと思うので、こちらに記しました。ちなみに私の夕ご飯のスープは少しぬるくて惜しかったです。さあ、愛おしき日々を引き続きどうぞ。5月16日。

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