てぃくる 846 あなたの子よっ!
目の前に突然現れた女の口から「この子はあなたの子よっ! 認知して!」などと言われようものなら、世の中のほとんどの男性は立ち尽くしてしまうだろう。そういう事態に陥る覚えがあろうとなかろうとだ。
俺には一切身に覚えがないし、そもそも目の前の女を知らない。小柄な髪の短い女だが、確かに腕に赤子を抱いている。その赤子が、呼び名通りにひどく赤い。
「……」
俺がずっと黙っているのが気に障ったのだろう。女はきりきりとまなじりを吊り上げた。だが俺は女の目を見ず、赤子の整った顔と頬