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てぃくる 841 きれいごとでは生きていけない

確かに
美しい方がいいのでしょう

ちやほやするものが大勢いて
彼らに傅いてもらえるのがいいのでしょう

だけど
そんな風に美しい者は多くないわ

美しくない者は
その分たくましくないと生き抜けないの


美しくないわたしを訪う者がいて
彼らはわたしを平気で凌辱する

ひどい?
そうね

でも、そうされることで
わたしは生きていけるの

どんなに虐げられても
生きていけるの

◇ ◇ ◇


 あ、人間のことではありませんよ。

 アカメガシワ
 典型的な先駆樹種で、明るい空き地にいつの間にか生えてきます。近くに木がないのに……そういうケースがいっぱいあるんですよ。もちろん、誰かがタネを運んでくるから。運び屋は鳥です。

 画像の黒い種子。果肉がありません。こんな醜くてまずそうなものを食べる鳥がいるのかと驚いてしまうんですが、ちゃんと食べられているからこそ、あちこちから芽を出すわけで。

 鳥を惹きつけるのは、種子の表面を覆っている蝋質。蝋は油ですから、鳥にとっては栄養満点なんです。鳥が食べて蝋が消化されると、排出された種子が水を吸収して発芽しやすくなります。

 もっとも、ほとんどの種子はなかなか発芽条件の整った場所に辿り着けません。その場合、種子は土の中でじっと発芽できる機会が来るのを待つんです。埋土種子というんですけどね。

 アカメガシワは極陽樹で、明るくないと生育できません。暗い林内で芽を出すとすぐに枯れてしまいます。ですから、自分の頭上ある大きな木が伐採されたり、野火で焼けたりするまでじっと待つんです。チャンスが来れば、ここぞとばかりに一斉に芽吹きます。

 生きるための美醜があり、美醜があっても生きる。
 生物の世界はすごいなあと。見た目が最悪のアカメガシワの種子を見ながらしみじみ感心してみたり。


「くりもたね?」知って驚く子らの声

(2021-10-06)


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