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結婚式、夫婦でドリップバッグをつくった意味

2022年3月21日、わたしたちは結婚式を挙げた。結婚に夢を抱いたことはなく、結婚式も「まぁ、やれるものならやっておきたいですねぇ」くらいのテンションだったわたしは、ウェディングプランナーである夫におんぶに抱っこで準備を進めることになった。ちなみに夫はブライダル業界に転職ホヤホヤなので、自分の結婚式どころじゃなかったと思う。頼りっぱなしでごめんなさい。

わたしたちには、結婚を決めたときにつくった夫婦規範というものがあって、結婚式でもそこに掲げたことを表現できたらなと思っていた。たとえば、「2人で作品をつくる」とか「縁をたいせつにする」とか。それにプラス、わたし自身結婚式において一番の、というか唯一の優先事項だった「親にとって幸せな思い出をつくる」を実現する結婚式にしようと決めた。

結果、基本はオーソドックスで伝統的な形式にしつつ、いくつかわたしたちならではのポイントをつくることができた(主に夫のアイデアによって)。

  • 亡くなった祖父母の写真に向かって、夫婦の誓いをオリジナルの言葉でたてる

  • 義父にBGMの選曲をお任せする(父には式前夜に思い出の曲をギターで弾いてもらった)

  • 列席者みんなで絵を完成させて、結婚証明とする

  • お見送りギフトを夫とわたしで創作する

この記事では、お見送りギフトとして2人でつくったドリップバッグの話をしたい。なお、せっかくの夫婦の誓いは、わたしのゲラ発動によって夫がほぼ一人で読み切った。

笑って読めないわたし

はじめての共同作業はドリップバッグづくりで

「お見送りギフトはみずきが焙煎したコーヒー豆がいいんじゃない?」

昔から好きだったコーヒーに対しての愛着が急深化して、昨年末から豆を自家焙煎するようになった。そんなわたしをすごく嬉しそうに応援してくれている夫が、提案してくれた。

ワイ「オミオクリギフト……?」

列席者が披露宴の会場を出るときに新郎新婦から手渡すプチギフトのことを、そう呼ぶらしい。そうか、アレも何を渡すか決めるのか。友人の結婚式に参列することウン10回。自分ごとになってはじめて、あああの時のアレも、友人たちが一生懸命考えたり決めたりしていたんだなと知る。結婚式って決めなきゃいけないことが多いんですねぇ。

もちろんお見送りギフトはなきゃいけないものでもないんだけど、自分で焙煎した豆をたいせつな人たちに渡せるのはいいなと思った。コーヒー豆は産地や焙煎の仕方によって風味が変わるから、みんなにこんな気持ちになってもらえたらいいなという想いをのせるのにうってつけだし。夫は写真を撮るのが好きなので、パッケージに夫が撮った写真を貼ることにした。

コーヒー用のパッケージ周りを販売しているNICONOSさんで、さっそくいくつかのサンプルを仕入れて、どんなかたちにするのか検討した。そして、コーヒー粉がたっぷりめに入り、且つ抽出中にフィルターがコーヒーに浸りにくい横長のドリップバッグフィルターと、クラフト紙の三方平袋をたくさん買った。

パッケージに貼る夫の写真のサイズも、試しにいくつかのパターン印刷して貼って2人で検討した。そのためにプリンタも買った。今後も使う予定があるから買ったものではあるけど、結構な出費にマネフォを見ながらひく日々。

パッケージの準備は前もって進められるけれど、中身のコーヒー豆は鮮度が大事なので直前まで作業ができずもどかしかった。焙煎して、挽いて、計量して、詰めて、シーラーで封をして……と工程を確認しながらスケジュール帳と睨めっこ。もし焙煎に失敗したら詰むので、本番と同じ豆で何度か練習した。

準備の甲斐あって、前日までにすべてのギフトが完成した。
(何の豆にしたかは最後に書いたよ!)

挽いた豆を詰めていく
完成したドリップバッグ

結婚式で2人は向き合うのをやめて同じ方向を向く

夫がこの間結婚式を振り返りながら、ちょっといいことを言っていた。

「結婚式は、それまでお互いに向き合っていた2人がはじめて同じ方向を向くときなのかもね」

同じ方向を向くわれわれ?

思えば準備の間中、列席してくれる人たちがどう思うかばかりを2人で話し合ってきた。お互いへの思いやりが起点じゃないからこそ、ぶつかることもあった。これまで育ててくれた両親祖父母、長い時間を一緒に過ごした妹弟、いつも見守ってくれた親戚、楽しい時間をくれる友人。たいせつな人たちとどんな瞬間を共有するかを、2人で一生懸命話し合った。

こうして当日みんなに渡すことができたドリップバッグも、2人で同じ方向を向きながらつくったんだなと思う。結婚式のことを思い出しながら、家でゆっくり飲んでくれていたら嬉しいな。

余談だけれど、「ずっと列席者のことを考えていたから」と、結婚式の翌日に2人だけでのお祝いの時間をサプライズでつくってくれていた夫は、神かなにかだと思う。たしかに結婚式を終えて、ようやくまたお互いを向き合えた感覚があって、なんだか絆が深くなったようだった。

結婚式翌日のサプライズお祝い

「このご時世」の結婚式を目指す同志たちへ

「このご時世」に式を挙げられるだけでも本当に幸運なことだった。誰だって感染の可能性がある状況。もし両親やわたしたちの誰かがそうなったら日程を再調整して、みんなに連絡して、引き出物は……と考えを巡らせたところで、ちょっと絶望した。気力を維持する自信がない。じつは夫の妹さんが濃厚接触者になり欠席となってしまい本当に本当に残念だったのだけど(ビデオ通話で束の間参加してくれた!)、無事開催できたことにはほっとしている。

わたしたちは両家顔合わせの食事会を2度延期した。1度目はわたしたち本人が感染して入院し、やっぱり時期的に怖いねと少し先の日程で再調整。2度目は夫が前夜にぎっくり腰になり、急遽の再リスケをした。

結婚式もスムーズにはいかないんじゃないかと、ずっと不安が付き纏っていた。もし中止や延期になっても心がダメージをくらわないように、ずっと万が一を考えていた。だけど、いざ本当に延期かもとなるとかなりこたえたので、「このご時世」のカップルは前を向いているだけで偉いと思う。

わたしたちの小さな創作や気づきが、そんながんばる誰かの参考になれば嬉しいです。

選んだコーヒー豆は2種類

最後にちょっとコアだけど、焙煎したコーヒー豆の話を。コーヒー好きの方はぜひ。

ドリップバッグは一人一袋ずつ渡し、パートナーと一緒に列席してくださった方には違う種類の豆を渡すことにした。エチオピア イルガチェフェはミディアムローストで、グアテマラ アンティグアはハイローストで焙煎した。

エチオピア イルガチェフェ

エチオピアでも最高峰のイルガチェフェは、マスカットのようなレモンのようなフルーティーさがあって、目の前がパッと明るくなるようなイメージだった。瑞々しくてお祝いの場にぴったり。エチオピアはコーヒー発祥の地だから、新しい家族のはじまりの日に手渡す意味がある。ドリップバッグをつくることになった瞬間に、イルガチェフェにしようと決めていた。

エチオピア イルガチェフェ
標高:約1,900m
精製:ウォッシュド
焙煎:ミディアムロースト

グアテマラ アンティグア

エチオピア イルガチェフェはかなりさわやかな豆なので、もう一種類は酸味が多少苦手な人でも好んでもらいやすい豆にしようと思い、昔から好きなグアテマラ アンティグアに決めた。いくら酸味とは逆の……と言ってもどっしりしすぎたコーヒーは、今回の結婚式のイメージとは違っていたから。酸味はあるけど、甘やかだからそこまで嫌われないんじゃないかなというバランスのいいコーヒー豆。さらに焙煎度もイルガチェフェよりやや深めにしたので、より穏やかになったと思う。

グアテマラ アンティグア
標高:約1,600m
精製:ウォッシュド
焙煎:ハイロースト


※会場は横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ。もしリスケになっても大丈夫だよと全面支えてくださる姿勢が心強かった。ありがとうございました!!

横浜シェラトンのロビー階段

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