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川上未映子『春のこわいもの』読了

「春のこわいもの」といえば、私にとっては花粉なのだが、川上未映子がそんな平凡な発想をするわけがない。読み始めて「春のこわいもの」はコロナを指すのに気づいた。まだなくなったわけでもないのに、人間は悪いことはすぐに忘れてしまうのだろうか。ただ、コロナの恐さは物語の背景にすぎなかった。

寒い冬から春になり、日差しは暖かくなるのに、冬に冷え切った心だけは全然暖まってくれない。冷たい心は冷たい感情しか呼び起こさない。しかも、そんな感情が自分を支配していることは本人も知っている。これほどこわいことはない。始めはこわさがわからなかったが、後半3作品を読んで、そんなことをふと思った。

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