第３話　へんてこりん

ぼくとおもいでどろぼう

第３話　へんてこりん

ぼくはひとりで旅にでた　たったひとりで旅にでた
ワクワクしちゃう大冒険っ
とにかく、ぼくはつきすすむ　前へ、前へとつきすすむ

今日もぼくらはつきすすむ
前へ前へとつきすすんでいたら、へんてこなものに出逢った

へんなやつだった
ひとでもないのに話すし、ものでもないから動く
でも、ひとじゃないんだ

そのへんてこりんは、やっぱり話す

「おいらは、おもいでどろぼうだ」

へぇ、とぼく

昔のぼくは、ぼくをひっぱる
後ろへ、後ろへとひっぱってくる

少し、ぼくは、少し、昔のぼくがうざったい

「おいらは、ひとから、おもいでをぬすむんだ」

やっぱりへんてこりんだ
お金とか、食べものじゃなくて、おもいでをぬすむんだから

へんなやつだ、へんてこりんだ

でも、ちょっとおもしろそうだ

「なあ、キミ、ちょっといっしょに歩こうよ」

へんてこりんは、ぼくに手を差しだしてきた
ぼくはへんてこりんの手をにぎり、前へすすもうとした

おおん　おおん

泣く声がする

ぼくとへんてこりんは、後ろをふりかえった
でも、へんてこりんは、すぐにぼくを前へとひっぱる

昔のぼくが泣いている

おおん　おおん

前へとすすみたい、へんてこりんとすすみたい

でも、ぼくは止まった
昔のぼくが泣いているんだ

おおん　おおん

「おいていかないでおくれ」
と、昔のぼくは泣く

ぼくはへんてこりんの手をはなして、後ろに戻った

昔のぼくの頭をぽんぽんとなでる

へんてこりんのところに戻ろうとしたら、
もう、そこにはいなかった

ぼくは昔のぼくにポケットに入っているアメをあげた
泣き止んだ昔のぼくはうれしそうだ

ぼくはかんがえる

あのとき、いっしょに行っていたら
へんてこりんといっしょに行っていたら
どんな旅になっていただろう？

いっしょに行ってみたかったな

あれ？？なんだっけ？
へんてこりんの名前、、、

忘れちゃったや
また今度、あえたらまた聞こう

ぼくたちは、また歩きはじめる
手をつないで歩きはじめる

そして、いつもみたいにうたうんだ

ぼくはひとりで旅にでた　たったひとりで旅にでた
ワクワクしちゃう大冒険っ
とにかく、ぼくはつきすすむ　前へ、前へとつきすすむ

昔のぼくの手は、今までよりも、少し重くかんじた

ぼくとおもいでどろぼう
第３話　へんてこりん