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ポストコロナ時代を支えるリーガルテックは?

私は、MNTSQというリーガルテックベンチャーで、パラリーガルをやっています。すでに多くのメディアで話題になっていることですが、ポストコロナ時代の働き方は、リーガルテックにとって追い風だなということを私も感じます。

そこで、ポストコロナ時代の企業活動にとって特に重要となるリーガルテックサービスについて、リーガルテック企業に身を置くいちパラリーガルとして少し考えてみました(私が所属する会社としての意見ではありません)。

電子契約システム

人との接触、移動が制限されるポストコロナ時代では、もはや必須といえるのが電子契約、電子署名です。法律上、契約とは当事者間の意思表示の合致によって成立し、必ずしも書面の作成を必要とするものではありませんが、後に文書の真正が争われた場合に備え、契約締結の際には、契約書を作成し、署名押印するのが慣行となっています。

しかし、緊急事態宣言下でも契約書に判を押すためだけに出社しなくてはならないという企業からの指摘に端を発し、政府は契約書に押印しなくとも契約の効力に影響しないことや、文書の真正を証明する他の方法等を挙げたガイドラインを示し、押印が必須でないことを強調しました。

また、今回の件で、緊急事態における企業の事業継続計画「BCP」※への注目も高まると考えられますが、自然災害が生じた場合などの事業継続を考えたときにも、契約業務を滞らせないためには紙の書面で契約書を作成するのは合理的でなく、電子契約は急速に広まると思います。

契約書管理システム

現状では、紙の契約書をPDF化してファイルサーバーに格納するだけといった企業も多いかと思いますが、電子契約を導入すると、締結された契約書をそのまま効率的に管理したいというニーズが高まります。特に、国税関係書類の電子データによる保存を定めた電子帳簿保存法の適用を受けるためには、検索性の確保が要件となっているため(電帳法施工規則第3条1項5号参照)、高い検索性を備えたシステムであることも必要となるでしょう。

また、従来であれば、対面で行っていたナレッジやノウハウの共有がリモート環境では難しくなるため、既存の契約やその交渉過程を一元管理し、データベース化することで、その中にあるナレッジに誰もがアクセスできる基盤を構築することも重要です。

MNTSQでは、契約書をデータベース化して企業ごとのナレッジを「見える化」できるプロダクトを開発中で(2020年6月現在数社と実証実験中)、ポストコロナ時代の働き方にフィットするのではないかと思います。

法律書サブスクリプションサービス

リーガルリサーチでは、インターネット上の情報を利用することももちろんありますが、確実に信用できる情報を収集したい場合には、書籍や専門雑誌を当たる必要があります。会社に書庫があればこれを利用したり、所蔵にないものは国会図書館などを利用するのですが、移動が制限されるポストコロナ時代ではこれも難しくなるため、電子書籍の重要性が高まります。

また、法律や裁判実務は日々変化する性質のもので、法律書もそれに対応して更新し続けるので、最新の情報を得るためには関連書籍を買いなおす頻度が高い分野です。これには、定額でいろいろな電子書籍の閲覧が可能なサブスクリプションサービスが有効でしょう。書籍サブスクリプションサービスは月額の使用料が比較的安く、その使い勝手は、取り扱い書籍の数や、UIの質によって大きく左右されるので、数社比べてみてから導入するのもよいかもしれません。


以上、ポストコロナ時代の働き方という視点から、リーガルテックが及ぼす効果・影響を(自社の紹介も交えながら)綴ってみました。感染症の流行という思いがけないきっかけによって加速する働き方改革の波にのって、法務の新しい仕事の仕組みが構築されるのではと考えています。


※ 事業継続計画「BCP」とはBusiness Continuity Planの略で、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと。

BCPの策定は、東日本大震災を機に注目されるようになり、国は2020年までに大企業のBCP策定率が100%、中小企業では50%に到達することを目標として掲げています。




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