その感情は、わたし自身ではないのだから。そんな事より、舟を漕ごう。
「感情は、私自身ではない」「感情は、ただの反応」
その事を腑に落とすだけで、悩んでるだけの時間がぐっと減って、目の前にある事に素直に取り組めるようになる。
そのことを最近、実生活でしみじみ体感している。
*
これはきっと、年を取ったせいもあるのだろうな。
若いころは「嫌いな気持ち」「許せない気持ち」を抱いたまま、相手と折り合いをつける事は負けだと思っていた。
例えば、失礼な態度を取る同僚と挨拶をする事。
ムッとした気持ちを隠さない部下に、仕事の指導をする事。
なんで私が下手に出て、にこやかに相手してやらなくちゃいけないねん!
なんだよその不貞腐れた態度は!
ちくしょう、私だってそういう態度取りたいわ!
だけど私が同じように失礼な態度取ったら、周りの人や上司は私の事を大人気ないって責めるんでしょ。おかしいよ不公平だよ。
*
ああだけど、仕事だから感情を押し殺さなくちゃいけない。
大人にならなきゃ。
どんな相手も許せる、もっと心の広い人にならなきゃ。
じゃなきゃ、認めてされない。
じゃなきゃ、評価してもらえない。
だからもっと心を整えなきゃ。
こんな苦しい気持ちを感じない私にならなくちゃ。
*
そんな風に必死に、自分を変えよう、嫌な気持ちを抱いてしまう自分の感性を変えようってあがいていた頃が、たぶん一番苦しかった。
まあそりゃそうだ。自分自身を否定して、なかった事にしようとしてるんだから。
感情なんて、ただの感情なのだ。生まれてきていく、泡のようなものなのだ。
人なんだから。反発されてムッとするのも、挨拶が返ってこなくて不愉快になるのも、そんなの当たり前の事じゃんね。そんな風に反応する自分自身を変える必要なんて、もしかしたら無いのかもしれないよ。
そんな事より、「今、何をするのか」に目を向けた方がいい。
ムッとした気持ちも不愉快な気持ちも、別に消す必要なんてない。
その感情は感情として、やるべき事に集中すればいいんじゃない?
例えば職場なら、私は相手と仲良しこよしに来てる訳じゃない。
会社という組織の中で与えられた役割を果たして、事業がスムーズに進む手助けをする事、その対価としてお給料をもらう事。それが目的。
だったら仕事がスムーズに進むために、今、何をするべきか。何を言うべきか。そこだけを見て、そこだけに心を注げばいいんだ。
そんな風に視点が切り替えられるようになったら、職場の人間関係が苦しくなくなった。
相変わらず失礼な上司とか、微妙に仲良くなれない女子は存在している。
でも、それはそれ。
私は私のやるべきことをやる。そして貰ったお給料で、休日には娘と漫喫にしけこんだり、推しへ貢いでみたりする。
そしたらどういう訳か今までの何倍も日々が充実し出した。
真剣に自分の心を変えようと頑張っていた頃の苦しさが、嘘みたいだ。
やっぱり私は感情に目を向け過ぎていたのかもしれない。
感情は生きている限り生まれ続けるものなんだから、「なんでこんな気持ちになっちゃうの!」なんてジャッジするものじゃないのだ。
* *
とはいえ、それは感情を蔑ろにしていいって事ではない。
喜びにしろ、嫌悪にしろ、悲しみにしろ、怒りにしろ、
「大切にしているもの」「自分らしい価値観」が無ければ、感情は動かない。自分を責めたいという気持ちだって、「自分を愛したい」という切なる願いがあるからこそ生まれてくる。
だから、感情が動いた時に目を注ぐのは「その感情をどうするか」じゃなくて、「私は何を大切にしたいか」の方なのだ。
そして「大切にするとはどんな行動なのか」を考えて実行してみる。これが、感情に囚われずに感情を大切にして生きる方法だと思う。
例えば子育てであるならば、愛せない自分を責めて苦しむのではなく、
「苦しくなるくらい子供のことが愛おしいのだ」と知る。
例えば夫婦や恋人であるのなら
相手の無理解に怒る気持ちをどう解消するかではなく、
「そんな風に怒ってしまうほど相手と関係を築きたいのだ、相手と育みあいたいと願っているのだ」と知る。
そしたら、
子供のために今私が出来る小さな事はなんだろう、と考えられる。
相手と育みあうために私が出来る事はなんだろう、と想像できる。
それはご飯をつくることかもしれない。何も言わずに一緒にテレビをいる事かもしれない。
今は怒ってて冷静に話せないけど寂しかった、と伝えることかもしれない。お互いにちょっとだけ距離を置いて、クールダウンする事かもしれない。
選択肢は無限にあるけれど、感情をどうにかするための選択肢ではなくて、自分の願いのための選択へと、目を向けられるようになるのだ。
* * *
だからね。
もう、どうにもならない気持ちをどうにかしようとするのはやめて
そう感じてしまう自分を諦めよう。どうしたって、これが私なんだから。
そして、
今、できる事へと目を向けよう。
今、できる小さな行動をひとつ、選んで実行してみよう。
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