短期的な刺激による反応と長期的な視座による意志

X(旧ツイッター)などで結婚相手選びの基準についての議論をよく見る。

その中に美女と結婚すると不幸になるといった趣旨のポストがあって、
そこから派生して様々な意見等が寄せられ喧々囂々しているのを見た。

個人的に興味深いなと思ったのでここでは思考、脳の機能的な視点から、
このことについて少し考えたことをまとめてみたいと思う。

まず結論から言うなら、あながち間違いではないなということ。

これは美女、男性が女性を選ぶ際のことばかりではなくその逆、
女性が美男を選んで結婚する際の基準においても同じことが言える。

と言うのも、まず美人とか美男に惹かれる心理って、
ストレートに言えばようは性欲なわけですよね。

異性として、恋愛関係などの相手として魅力的だということを、
外見というわかりやすい要素から瞬間的に性欲的に判断している。

で、この性欲って何かと言えばつまり自分がある刺激、
この場合は外見という刺激を受けた時に好意的な解釈を示す、
無意識の衝動的、反応的な思考傾向なわけです。

外見に惹かれて一目惚れとかが物語のようなロマンチックなものである、
運命の出会いみたいなものであることは極めて少ない。

大体は脳の無意識的な思考傾向による反応であることが普通でしょう。

そして、ここからが重要なのですがこの無意識的な反応というのは、
基本的に良いも悪いも極めて短期的なもの、刹那的なものである。

端的に言えばあらゆる刺激はその性質に関係なく慣れるものです。

「美人は3日で飽きる、ブスは3日で慣れる」。

このようなフレーズが昔からありますけど、
これはわりと本質を突いた言葉であると思う。

美人、ブスという個人的で無意識的な刺激に対する反応としての基準は、
最初がどれだけ魅力的でより良く感じても逆に悪く感じても、
ある程度同じ時間、空間を共にすれば大抵はいずれ慣れます。

例えばあるAさんが外見から美人と感じる基準を持っている相手と、
逆にブスと感じる基準を持つ相手と何かしらの理由から、
ある程度の期間を一緒に過ごさなければならなかったとする。

仮にこの基準から受ける刺激とそれによる反応を数値化できたとして、
前者は10の良い反応、後者は-10の気分を害する反応を生むとしましょう。

ファーストコンタクトではそれぞれの外見からそのような反応を生む、
ですが時間が経つにつれて前者も後者も生み出す反応がゼロに近づく。

美人と思う相手を見てもそこまで良い気持ちを生み出すことはなくなるし、
逆にブスと思う相手を見てもあまり気分を害さなくなっていくのです。

実際には外見以外に色々な刺激を受けるのでこんなにわかりやすくない、
外見以外の要素がさらに悪反応を引き起こして相乗効果により、
さらに悪い方向に反応が強化されるようなこともその逆もあり得る。

ただ、仮に外見という刺激だけを見ればという前提ではありますが、
こんな感じで無意識は刺激に慣れていく性質があるということです。

そのため結婚という長期的な関係を構築する際の基準として、
無意識的な反応である顔の美醜、ストレートに性欲は、
そもそも脳の機能的に幸不幸に大きく寄与する要素ではない。

そのように言えるだろうと考える。

結婚の場合、大事なのは長期的に一緒に同じ人生を歩んでいくうえで、
直面する未知の状況等を互いに力を合わせて乗り越えていけるか否か。

未来に向けて同じ視座で物事を見られるかが最も大きな要素だと考える、
そしてそれは瞬間的、短期的な刺激による反応を示す無意識ではなく、
意識的な思考、知恵や意志で物事を乗り越えようとする能力による。

それは美醜などの外見はもちろん他にも年収や経歴など、
一目で相手を惹きつける瞬間的な刺激を喚起する要素では、
推し量るのが難しい要素なのだと考えます。

外見にしろ年収にしろ経歴にしろ常に一定ではない。

どんな人も老いれば少なからず性欲的な美しさは失われていく、
年収も瞬間の数値よりはその稼ぎを維持できるかが重要であるし、
立派な経歴も執着により時や状況に応じた柔軟な対応を妨げれば害になる。

瞬間に固執する人間は常に変化する現実に対応しきれない。

長期的に別々の個人が人生というそれなりに長い期間の共にする中で、
その時々、様々な環境や状況に対応し続けていくためには、
常にある程度の理想、方向性を定めて今を乗り越えていく意志。

先に話したように同じ視座で物事を見て同じ場所へ向けて進んでいける、
そのための意識的な側面による強さ、能力がある程度は必要であると思う。

そういう要素を度外視し瞬間的な刺激で結婚、ある程度期間を共にすれば、
どこかで未来への視座の違い等により齟齬や軋轢が生まれていき、
関係が大きく悪化していく可能性は極めて高いと考えられるでしょう。

ようは、結婚における不幸は瞬間的な無意識的傾向に惑わされ、
長期的な関係構築に有用な能力の見定めを誤ることで生まれる。

そういう意味で美人と、あるいは美男と結婚すれば不幸になる、
性欲という無意識の瞬間的な基準を元に選択することで見誤り、
不幸になる可能性を高めるとある程度は言えると思うのです。

そして、これは結婚に限らずあらゆる物事において重要なこと。

無意識による瞬間的、短期的な刺激による基準と、
意識による長期的な視座からの基準をきちんと別けて考え、
今自分が決断しようとしている物事に必要なのはどちらか。

きちんと把握し見定めることが大事だと考える。

あらゆる不幸、物事の歯車がかみ合わないような状況が生まれるのは、
この基準の見定めを行わないことによって。

あるいは見定められても無意識的な基準を意識的に乗り越えられない、
または意識的な基準に固執しすぎて無意識をないがしろにすることが原因。

何をするにもこのことはきちんと意識したうえで、
どんな基準で選択、決断するかが大事だと。

そのように思ったというお話です。


では、今回はここまでです。
ありがとうございました。

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