理想的な目的がない状況は人間を劣化させる

前に以下の記事を書いた。

ざっと内容をまとめると日本は生きることに余裕がある社会、
つまりは物質的に恵まれた社会を築き上げたが故に、
精神的な生きづらさを生み出し続ける悪循環にはまったというお話。

日本に限らず大抵の国や社会は物質的な豊かさを追い求める、
人間社会の歴史の大半は豊かさを求める歴史と言って良いでしょう。

生きることに余裕がない大多数の人間が生き残るため、
集団としてあることを選んだ。

集団として生きていく過程で生産力を底上げする革命がいくつも起こり、
徐々に集団が拡大し社会と呼ばれる規模となり物質的な豊かさは上がる。

豊かになる度により良い豊かさを求め何かしらの目的を定め、
そこに向かって邁進してきた。

ようは、物質的な豊かさとは人間にとっての理想だったのです。

しかし現代の日本のような先進国において、
物質的な豊かさは飽和したと言っていい。

ほとんど労力をかけずとも生きるだけならそんなに苦労はない、
ある程度働けばお金を得られてちょっとスーパーに行けば食べ物が買えて、
衣、住も贅沢を言わなければ手に入れることができる。

人間的な生を得るということはもはや特別なことではなくなった、
誰もが当たり前に得られる権利であると錯覚するほどに、
当たり前のものとして日本社会に浸透した。

物質的なものに人間は理想を見出すことが難しくなった、
そしてそれが人間を劣化させる一因であると個人的には思う。

理想、叶うかどうかわからない大きな目的に向かっているうちは、
それに集中し労力を注ぎ試行錯誤しながら進んでいける。

だけど、そういう理想的な目的を持てないと思考は分散する、
先に話したように生きることそれ自体には余裕がある現代の場合、
余裕が故に生まれる思考力は際限なく様々なものに向かっていく。

分散した思考は1つの何かに集中することを阻害する、
そうなれば当然ながら何かを成せる可能性が下がる。

生きることに余裕があるからと中途半端で投げ出しやすくもあるでしょう。

そうして時間や労力を消費してだけど外への思考には余裕があるために、
自分にはないものを持っている誰かと比較しては新たな不満、
精神的な虚構を生み出しては生きづらさや抑圧を感じ取る。

結果、延々と外の世界に対して不平不満を募らせるだけの人間、
あるものに対する敬意や感謝を蔑ろにないものだけをねだる、
人間と言うよりは獣に近いあり方へと劣化していく。

皮肉なことですが人間は物質的な豊かさを得たがために、
精神的な余裕を失っていくという状況になりやすいのだと思う。

例えば起業など1からビジネスを構築し豊かさを追い求める場合、
創業初期は人格者で一生懸命働き大変だけど充実した毎日を送る。

なのに成功して余裕ができてくるとそういった良い面が薄れていく、
物質的には満たされてるはずなのに精神的には満たされず、
周囲にも悪影響を与え始めたりするということがあります。

そういったケースの本質は先に少し話したように、
理想的な目的を見出だせないからだと考える。

物質的な豊かさというのはわかりやすいものだった、
イメージしやすく理想として規定することも容易だった。

人間として文化的な生活を送ること、起業で成功し多くのお金を得ること、
イメージしやすく結果もわかりやすく具体的な方針も立てやすい。

ですが、それが満たされれば必然として人間としてのあり方、
もっと広く社会のあり方、世界のあり方など。

精神的な理想のあり方を目指すという方向性にシフトする、
するは良いけど精神、あり方というのは極めて曖昧で、
規定しづらく目指すことが難しいものだった。

故に、結局はわかりやすい物質的な豊かさを大抵は目指すはめになり、
だけど先に話したように生きるという豊かさはすでに達成したが故に。

他人と比べてどこまで豊かになれるかという際限のない比較の世界で、
他人を抑圧し抑圧されることを繰り返しながら満たされることなく、
精神的な苦しみと生きづらさにまみれた人生を歩むことが多くなる。

余裕を失い思考は堕落し人間は劣化していくのではないかと思う。

なので、個人にしろ社会や国としてにしろ目指すに足る目的を定める、
それも叶うかどうかわからない理想を見出すのは大事に思うのです。

それは他の全てをないがしろにするということではない、
理想ばかり追い求めてもそれはそれで疲弊し余裕を失う。

時には休んだり寄り道したり欲を満たすのも良い、
ただ活力が満ち立ち上がった時に目指すべきだと思える、
1つの軸を形作ることができるのであれば。

後悔のない人生を送れる、人間としてより良いあり方ができる、
その助けになるのではと思うのです。


では、今回はここまでです。
ありがとうございました。

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