#9 日本の母と話したら、問題発言も笑えた
先日、固定電話同士の国際電話で、ひさしぶりに日本の母と話した。
「〇〇さんが認知になったやと・・・」なんていう身の回りの話をひとしきり聞いた後、テレビのニュースの話になった。
そう。その日はあの震災から10年経った日だった。その報道を見て、一緒に黙とうを捧げたと話す母・・・
そこで、ニュースといえば、英国王室とメーガン妃のことはどんなふうに母の目に映っているのかと振ってみた。
「ようしらん」
そりゃそうだ。うちの母はゴシップには興味がない。ミズカはそんなものに興味があるのかと訊かれ、「だって心が動くんだ」と答えた。
心動きすぎで、連日、Noteに投稿している始末だ。
王室にもセレブにも全然興味はなくても、人種差別がウソでも思い込みでもないことがわかるから、感情移入をせずにはいられないのだ。
日本に住んだ35歳までの私は、基本的に日本人として日本人の中に居たので、「人種差別」というものは映画の中で黒人が白人の奴隷であったり、ナチスのユダヤ人虐殺みたいなコンセプトしかなかったかもしれない。
「正直、英国人の夫と暮らした日本での7年間、人種差別で失礼なことをされたということがない」~もしもこの一行を読んで、不審に思われた方はどのくらいいるだろう?英国人と聞いて、黒人?と考えてみる人は日本にどのくらいいるだろう?
不思議なことだ、あきらかに違う人種のマイノリティでありながら迫害的な差別を受けなかったなんて・・・でも不思議ではないのだ・・・なぜならば夫が白人だからだ。簡単なことである。
ある日のこんなことを憶えている。
実家の母が、お友達から言われて憤慨していた。それは、
「よかったと思わん?ミズカちゃんの選んだ人が黒人じゃなくて」の一言だ。
母は小さな体で黒人の人たち全体のために怒っていた(笑)
私は思う。母もまた夫が黒人じゃなかったことに内心ホッともしていただろうと。なぜならこんなことを口にする人がいるのが現実だからだ・・・
時は流れた。あれから四半世紀たって、何かが変わったかと言えば、なにも変わっていないように見える・・・
母にあの時のことを「憶えとる?」と訊いたら、
「なーんも憶えとらん」だと。
その代わり、私がすっかり忘れていたことを憶えていて驚いた。
私には学生時代に仲良くしていただいてた先生がいて、卒業後も一緒に飲みに行ったりする仲だった。その初老の先生が、私が20代半ばでイギリスに留学することを報告すると、
「黒いこども産んで連れて帰ってくんなよ」と冗談で言ったというのだ。
言われてきょとんとしたくらい私は憶えていなかったが、母は『あんな偉い先生でもそんなことを言うのか』とショックだったというのだ。
若い頃の潔白さとはすごいものだと思う。相手の好ましくない言動に自分は染まらないから大丈夫、という大胆さがある。今ならそれを聞いただけで、なぜそのようなことをいう元教師の相手をして飲んだりしていたのか、ちょっとゾッとする(笑)
それより、母の忘れていたエピソードを私が憶えていて、私の忘れていた会話を母が憶えていようとは・・・
私達はふたり分のボケかかった頭を合わせてちょうどなんとかなっているのかもしれない。
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